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駒姫・慎次 決戦の日

悲劇の運命に翻弄される駒姫様へ、神様がくれたひと時の幸せは

最初で最後の令和の切ない恋だった

新暦:令和7年8月22日 旧歴:文禄4年7月20日


私は今、駒凛様として、高校生として令和の世界を生きています

この世界で言う青春を謳歌しています

自由、友達、恋、家族、海、高校

私だけ、こんなにも幸せであってよろしいのでしょうか?

神様、いつまで私はこの世界にいれるのですか


今日は、昼から夏休み最後の剣道部の練習です

練習の後は慎と澪、慶の4人でカラオケに行く予定です

私は、歌を歌えるか朝からドキドキしています


この日、元の世界では恐ろしい出来事が起きようとしています

浮かれている私が、知る由もありません


□□□□□□□□ 慎次 □□□□□□□□□□


この日も誰よりも早く起きて、剣を振った

はやる気持ちを抑えたかった

ここに来て頭に浮かぶのは『駒凛の「ば~か」と微笑む笑顔』だ

俺は無意識に死を覚悟したのかもしれない


大部屋で、みな起きて武装を始めたようだ

俺も当世具足とうせいぐそくを身に着けた

箱根とは異なり、完全な戦支度だ。これから合戦に向かう

三百 対 四十五

この世界が俺が知る歴史とは違う歴史を進むならば、

この状況は絶望的だ


だが、撤退や奇襲を考えない

最上武士は正面から戦おうとしている

駒姫様を守り切るとみな信じている


俺が三成であれば、最上武士を敵にはしたくない

いざ、戦場へ出立だ!


その時、物見の斥候に出ておられた官兵衛殿が戻って来られ

志村様に報告された

「三成軍、水口に集結中!その数、およそ五百」

「五百だと・・・

 おのれ!長束様は見て見ぬふりか

 豊臣家支配地域ゆえ、我らは袋の鼠ということか」


「集結地は山と野洲川に挟まれ、逃げ場はございません

 恐れながら、迂回いたしましょう」

「無駄じゃ。我らの動きは筒抜けじゃ。もはや正面突破あるのみ」


水口岡山城の主は、豊臣家の重臣 長束正家だ。我らはここまでか・・・


鬼の形相の志村様が叫ばれた

「よいか!駒姫様だけは必ず、お守り通せ!

 最後の一人となっても戦え!」

生き抜いて役目を果たせと言われた志村様が激しい怒りを露わにされた

志村様は死を覚悟されたと思った


我らは駒姫様を守り切れず、死ぬ

これが神様が俺に課した運命なら、俺は神を斬る

天国だろうが、地獄だろうがどこに堕ちようが

そんなことはどうでもいい

大切な人に手を出すなら、神であっても俺は斬る


その時、駒姫様が出て来られた

駒姫様は小袖に袴を着て鉢巻と襷を巻かれ、懐刀を持たれていた

駒姫様も覚悟されていると思った

侍女たちも鉢巻と襷を巻き、薙刀を持っていた

臨戦態勢だ


これが駒姫様を見るのは最後かもしれない

俺は駒姫様を目に焼き付けた


輿に乗られようとした駒姫様に志村様が声を掛けられた

「駒姫様、三成も武士の端くれ

 さすがに戦場で女人に手を掛けるとは思えません

 我らが死すとも駒姫様は、生きてくだされ」

「よいか、侍女の方々。駒姫様のお命、そなたらに託す

 何があっても諦めるでないぞ」


それを聞いていた武士(つわもの)は、みな笑顔だった

みなの顔を確認された志村様が言った

「では、みなのもの!参るぞ

 義は我らにあり!

 生きるために戦え!死して護り通せ!

 最上の名を、天下に轟かせよ!」

「おぉぉぉ!」


その時、鳥が飛び立つ音が聞こえ、獣の走り去る足音が聞こえた

我らの死の覚悟の気迫が伝わったのであろう


我らは決戦の地へと向けて、怯むことなく歩みを進めた

木々が生茂り日が差さず、カラスが鳴く、不気味な山道を進み

視界が開け、野洲川が見えた時、先頭を歩く武士が叫んだ

「あれは三成の旗印じゃ!」


大一大万大吉だいいちだいまんだいきち』が靡いている

それでも我らは歩みを止めない

我らは、三成軍と対峙した


だが、五百には見えない。少ない!

その時、後方に三成軍およそ二百が現れた

謀られた。我らは挟まれた。もう、逃げ場はない

さらに、野洲川の茂み、木々の中に潜んでいた鉄砲隊と弓隊が現れた

囲まれた・・・万事休すだ


「われは、石田 三成が家臣 島 左近なり、主の命により、

 姦賊・豊臣 秀次が側室・駒姫の身柄を預かる!

 降伏せよ!さすれば、そなたらの命は保証しよう」


「われは、最上 義光が家臣 志村 光安

 天下に轟く猛将、島 左近殿ともあろうお方が落ちぶれたものですな」


志村様の表情が険しくなり、煮え滾った怒りが言葉となった

「島 左近!お主の魂に『義』はあるのか!」


島 左近は静かに言った

「承知した。ならば武士らしく刃を交えよう。最上武士あっぱれなり!」


島 左近は突き上げた采配を振り下ろした

すると鉄砲部隊、弓隊が後退した

島 左近は武士らしく、刀で雌雄を決するつもりだ!


島 左近は采配を突き上げ「いざ!安寧の世のためじゃ」

采配は我らを指した「懸かれー!」

「おぉぉぉ!」


「最上武士!死すとも『義』に生きよ!懸かれー!」

「おぉぉぉ!」


その時、馬の(いなな)きが響き、後方の三成軍が大きく左右に裂け、

地を揺るがすような怒号と共に、新たな部隊が姿を現した

旗印は『葵の御紋』、徳川様の軍だ!


『ドーン』『ドーン』と数十発もの発砲音が鳴り響き、

「やめよ!やめよ!戦いをやめよ!

 道を空けよ! 阻む者は容赦せぬ! 徳川 家康が家臣、井伊直政!

 主の命にて、都の警備に参る!

 謀反疑いの豊臣 秀次様の(もと)へ向かう駒姫様を都へ召し連れて行く!」


井伊様を先頭に、赤備えの軍は真っすぐ三成軍の前へと進んだ

「あの赤備え…あれが噂に聞く、甲斐武田の流れを継ぐ井伊の軍勢か!」

明らかに、三成軍は怯んでいた


井伊様が我らの横を通り過ぎようとした時、

「間に合い申した、ご安心されよ」

と言われ、島 左近と対峙した


後方の三成軍は隊形を整えなおし、鉄砲隊、弓隊も再び、臨戦態勢だ


「井伊殿、ご退かれあれ!駒姫の処遇は我らの役目!

 徳川様には及ばぬことと存ずる!」

「ほう、秀次様は未だ疑義の段階であると聞く

 それにしては、随分と物々しいお出迎えではないか

 秀次様に並々ならぬ恨みでもおありか?」


「引かぬと申されるか! 井伊殿。

 徳川様もご謀反の疑いありとなりますぞ

 ざっと見てもそちらは百、我ら五百の兵が取り囲んでおりまする

 勝ち目など、毛頭ございませぬぞ」

「あまい!


その時、突然、乾いた銃声がした『ドーン』

俺の体は勝手に動き、輿の盾となった

だが、倒れこんだのは親父殿だった。血を流しすでに息をしていない

親父殿は何も言わずに逝ってしまった。俺の代わりに駒姫様を守るために


「ぬおおおおおおお!!」

俺は雄叫びをあげ、刀を抜き、発砲した者に斬り掛かろうとした

だが、数人に羽交い絞めにされ動けない


島 左近、井伊様、志村様が同時に叫ばれた

「控えよー!」


俺は女性に初めてぶたれた

澪殿だ

「喜兵衛殿の『死』をあなたは無駄にするおつもりですか!」

俺の手から刀がこぼれ落ち、俺は初めて人前で号泣した

輿の中からは、駒姫様のすすり泣かれる声が聞こえた


井伊様が静かに言われた

「左近殿、あなたのご命令ですか」

「いや・・・」

石田 三成は島 左近殿すら欺き、駒姫殺害を命じた兵を紛れ込ませていた

「発砲した者を捕らえよ!」


「左近殿は仕える主を見誤れたようでござるな」

「無礼な!主は主!もはや、お互い引けぬようですな

 これが最後だ!井伊殿、引かれよ!」


「引かれるのは、左近殿。あなただ!あなたほどのお方が気付かれぬか!」

「何!」


「見られよ!」


井伊様が刀を抜き、

天に向かって振りかざした刀に夏の強い日差しが反射した時、

山の奥深い木々の中、対岸の茂みの中から猛々しい雄叫びが上がり、

刀と刀で打ち鳴らす甲高い金属音が響き渡り、

打ち鳴らされる太鼓が聞こえきた

二、三百、いやこの雄叫びはもっとだ


「我が主君は『義』のお方。多くの方々に慕われておりまする

 甲賀、伊賀の者どもも、今や我らの味方。逃げ道はござらん

 家康様は、駒姫様襲撃の件、徳川の仕業に見せかけ、秀次様と対立させ、

 共倒れを謀ったお主らの企みであると、全てお見通しでございまするぞ

 それでもなお、あえて黙しておられるのだ

 さあ、左近殿!いかがなされる!」


状況を改めて確認した左近殿が言われた

「さすが、赤鬼と恐れられた井伊殿

 我らの負けじゃ。次に、戦場で相まみえる時が楽しみでござる

 井伊殿、志村殿、機会でもあれば、酒でも酌み交わそうぞ」


「みなのもの!引くぞ!」


危機は去った。駒姫様はご無事だ。俺も生きている

だが、親父殿は逝った

三成への憎しみが俺の心を破壊しそうな勢いで増大していた


我らは、井伊様に守られながら、京に向かうことになった

これで駒姫様を無事に京へお連れすることができる

史実通りであれば、駒姫様を待っているのは過酷な運命

だが、俺のお役目は果たされることになる

その後、俺は元の世界に帰るのだろうか


いや、三成は俺から慶三郎、親父殿を奪った

史実通り、駒姫様を殺すならば、俺は三成、秀吉を許さない

俺は望んでこの世界に残って、恨みを晴らす

それまでは帰れない。すまない駒凛


この日は、予定していた宿ではなく、

井伊様のお計らいで同じ宿に泊まらせていただいた

その時、侍女の方々は誰かを探していた

「澪殿を見掛けませんでしたか?」


この日、澪殿が姿を消した・・・


□□□□□□□□□ 駒姫 □□□□□□□□□□


私は、剣道部の練習の後、慎たちとカラオケに行きました

慶からは「よかった~、駒凛にも欠点があったんだな。音痴!」

と揶揄されましたが、

楽しい時間です。もう、戦乱の時代の姫の顔ではありません

令和の女子高生の表情です


私が歌っている時、『ドーン!』と乾いた音が聞こえた気がしました

笑顔で私は歌っているはずです


なぜか、涙が堰を切ったように私の瞳から流れ落ちて来ました

慎、澪、そして慶も心配して声を掛けて来ました


元の世界で何かがあった・・・

この作品は実話に基いたフィクションです

ストーリーの展開上、実際の旧暦と新暦とは一致しません

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