第9話本題
タニヤマ:「今日めっちゃおもろいことあってん。」
ソトナカ:「そうなん。」
タ:「いや~それがさ、バイト先の居酒屋で…」
ソ:「レベルで言ったらどんくらいおもろいん?」
タ:「中世でいったら奴隷の反乱が起こるレベルかな。そんでバイト先の居酒屋でおばさんが注文してきたんやけど...」
ソ:「おばさんってどんくらいのおばさん?」
タ:「2008年くらいのときの柴田理恵かな。そのおばさんが注文したのが...」
ソ:「注文ってタブレットじゃないん?」
タ:「…うちの店舗はまだIT革命来てないから。そんでおばさんが注文したのが...」
ソ:「そのIT革命は最初に例えとして出した奴隷の反乱にかけてるん?」
タ:「本題に入らせぇ!!どんだけ遠回りさせる気やねん!会話のテンポ遅すぎて永遠に足踏みしとるわ!」
ソ:「IT革命が来ない店舗みたいにな。」
タ:「やかましいわ。」
ソ:「まあ悪かったって。でも、お前が話すおもろいことって8割がおもろないやん。」
タ:「そんなことはないわ!2割5分はおもろいわ!」
ソ:「5%上乗せされたところで。」
タ:「とにかく今回のはマジでおもろいから!絶対最後まで聞いて損しないから!」
ソ:「じゃあいいよ。邪魔しないから、話してみ。」
タ:「オッケー。まあ、さっき言った通りおばさんが来店して注文したんやけど、うずらの卵の串焼き15本くれって言ってきたわけよ。ほんで大急ぎで提供したんやけど、めっちゃ食べるの遅いんよなそのおばさん。んで、ちらっと見たら、そのおばさん自分のカバンに子犬隠しててな。犬にこっそりうずら卵食べさせてたわけよ。」
ソ:「...。」
タ:「......ほんでその犬がよくよく見たらドーベルマンでさぁ。」
ソ:「子犬って言うてたやんけ。」
タ:「いや、小さめのドーベルマンだったというか。」
ソ:「明らかな噓は流石に冷めるわ。盛るなら話の本筋じゃない部分で盛らな。」
タ:「いや、あまりにうけんかったから不安になって...。」
ソ:「んーなんていうか話の素材としてはおもろいのに、べしゃりが下手すぎて台無しになってる感があるんよな。子供に松坂牛調理させるみたいな。」
タ:「...。」
ソ:「フリに対してのオチが弱いというか。そもそもマクラなしでいきなり話し始めるからこっちが置いてけぼりになってしまう感もあるし。」
タ:「...。」
ソ:「まがいなりにも、関西生まれの人間がおもろいことあったって言うからには、ハードル上がってることを自覚して話し始めな。」
タ:「…か。」
ソ:「え?」
タ:「じゃあ、おもろい話の手本を見せてもらおうか...!」
ソ:「まあいいけど。」
タ:「おもんなかったら内臓1つ没収やからな。」
ソ:「中世並みに罰が重いんよ。」
タ:「いいから。ほれ。」
ソ:「はいはい。じゃあお前の話をそのまんまする感じでええやろ?」
タ:「おう。
ソ:「よし。…えー居酒屋ってのは、不思議な場所でしてね。普段しゃべらないような人が、急に雄弁になる。『俺はね、昔ワルだったんだよ』って言ってるおじさんの目が、すでにウルウルしてる。グラスより涙の方が先に空になるってんだから、こっちはたまったもんじゃないですよ。で、こないだなんか、隣の席でサラリーマン風の三人組が飲んでましてね。一人が酔っぱらって、『俺の夢は社長になることだぁ!』って言い出したんですよ。
そしたら隣の同僚がすかさず、『まずは課長になってから言え』って。正論だけど、酔っぱらいには効かない。で、もう一人が『まぁまぁ、乾杯しよう!夢に!』って言って、勢いよくグラスを掲げたら…思いっきり天井の照明にぶつかって、グラス割れちゃいましてね。『夢、砕け散る』ってのはこういうことかと。…えーと、ごめんなんの話だっけ?」
タ:「本題に入れぇ!!」