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縄印学園高等科(ミヤズの依頼)

 朝になると正門前からスタートする。

 校門から入るとすぐにタオの姿が見えた。


タオ

「おはよう!

 昨日はみんな無事で本当に良かった。」


「そうだね。」


 色々なバトルがあってそうでもないかもしれないが、

 タオに余計な気遣いをさせる必要もないだろう。


タオ

「うん! 色んなことが起きて大変だけど、

 大鳳吼くんならきっと大丈夫だよ。

 じゃ、また後でね。」


 タオは校舎に入っていったようだ。

 近くにいる男子生徒2人にも声掛け。


男子生徒A

「友達の友達が見たらしいんだけど、

 小さな人間みたいなのが空飛んでたって。」


男子生徒B

「嘘くせー。

 友達の友達って時点で嘘くせーわー。」


 小さな人間みたいな……?

 アマノザコがこっちに来るわけないし、

 ピクシーでも迷い込んできたんだろうか?


 続いて女生徒3人組。


女子生徒

「イジメかぁ……

 学校も大人もアテになんないし……

 録音とか、証拠集めて

 自衛するしかないよね。」


 3人いるのに会話は1人分だった。

 学校内でイジメがあるような話だが、

 少なくともタオ、ユヅル、ミヤズ、イチロウの

 4人はイジメを受けていた雰囲気は無い。

 フラグっぽい台詞だけど、

 今のところ何も思い付かないな。


 校舎に入ろうとすると、

 『数学は宇宙の真理』と書かれた

 セミナーの広告ポスターが貼られているのが

 目に入る。

 大鳳吼は、とりあえず気にせず校舎に入った。


 ロッカー付近にいる男女に声掛け。


女子生徒

「陸上部1年の子、先週から行方が……

 寮にも帰っていないみたい。」


男子生徒

「単なる家出だったら良いんだけどね。

 あー、それも良くはないか。」


 行方不明に良い理由など何も無い気がする。

 またあの魔獣が出没しているんだろうか。


 壁際にいる男子生徒に声掛け。


男子生徒

「おはよう、僕の朝は

 紙パックのコーヒー牛乳で始まるのさ。」


 そういえば紙コップで飲む自販機って、

 学校では見かけない気がする。

 紙パックや缶と比べて安いから、

 学生相手にはベストだと思うんだけどね。


 その近くで、女子生徒のイジメの様子が見えた。

 2人で1人の女子生徒に何か言ってるようだ。

 その後イジメていた2人が去っていく。


イジメてた女子生徒A

「ホント、生意気。」


イジメてた女子生徒B

「でも、あの人を見下すような態度が

 いつ崩れるのか……楽しみだね。」


 イジメてた女子生徒の精神は

 既に人として崩れてるな……

 幽鬼ガキの方がマシだ。


 樹島サホリ

 Sahori Itsukishima


サホリ

「……もうイヤ……

 どうして私があんな目にあわないといけないの?

 あんな連中、いなくなっちゃえばいいのに!」


 サホリが吐く様に呟いていると、

 何処からか太い声が聞こえてくる。


謎の声

「力が欲しいか?」


サホリ

「えっ?

 誰?」


 サホリにしか聞こえていない声のようだ。

 どこから聞こえているのか周囲を見渡すと、

 遠目で見ていた吼の存在に気付く。


サホリ

「あ……」


 サホリは吼に見られていたのに気付くや、

 足早にその場を離れていった。


 他の生徒は黒髪なのにサホリだけ茶髪。

 少々キツめな目つきはイジメの影響だろう。

 それでもかなりの美女だと思う。

 イジメの要因は今は分からないが、

 謎の声の事もあるし、今後何らかの

 イベントが起きるのは確定のようだ。


 気を取り直して、

 西側の通路にいる男子生徒に声掛け。


男子生徒

「女子のラクロス部で

 えげつないイジメがあった話。

 その子、部活は辞めたみたいだけど、

 イジメは続いてんのかな?

 怖いねー。」


 うんホント怖い。

 部活を辞めたというのは、

 何か要因がありそうだ。


 少し進むとミヤズがいた。


ミヤズ

「あ、先輩……

 昨日のこと、お兄ちゃんから聞きました。

 あのあとタオ先輩が戻ってきたので、

 一緒に帰ったんですが……

 いろいろと兄を手伝ってくれたみたいで、

 ありがとうございました。

 そういえば先輩、今日の放課後って、

 お時間あったりしますか?」


「今でもいいよ。」


ミヤズ

「その、ちょっと先輩の

 お力を借りたいことがあって……

 この前タオ先輩が話していた

 夢の話、覚えてますか?

 あれを聞いて思い出したのですが、

 私も小さい頃、不思議な夢を見てました。

 異国の王子様が私を迎えに来る、

 少しだけ恥ずかしい夢……です。

 あ、でも、さすがに白馬じゃなくて、

 空飛ぶ月の舟に、王子様は乗ってました。

 その頃好きだった、歌のアニメの影響かな?

 それに、あの夢を見た日は決まって、

 いつもより少し体調が良かったり……

 そんな話を思い出してからというもの、

 なんだかあの王子様が頭から離れなくて……

 それで、思ったんです。

 あの夢はただの夢じゃなくて、

 正夢とか予知夢みたいなものじゃないかって。

 なにか、私にとって、

 大切なことを知らせるような……

 でも、私そういうの詳しくないから、

 よくわからなくて……

 たしか、うちの学校には

 オカルト部……みたいなものがありましたよね。

 もし、そこの部員さんと知り合いだったら、

 話を聞いてみてもらえないでしょうか。」


!クリア時期制限のあるクエスト

 一部のクエストは受注・達成できる時間に

 制限があります。

 メインストーリーが特定の時期まで進むと、

 こうしたクエストは達成できなくなるため、

 優先的に進めることを推奨します。

 このようなクエストは受注の際に

 警告メッセージが出ます。

 本クエストはクリアできる時期に制限があります。

 早めに解決することを推奨します。


!クエスト

 「王子様について知りたい」

 を受注しますか?


「はい。」


!クエスト

 「王子様について知りたい」

 を受注しました。


ミヤズ

「わあ、ありがとうございます!

 ただ、私よく体調を崩してしまって、

 学校をしばらくお休みすることもあるので……

 なにかわかったときは、

 早めに教えてくれると安心……です。

 頼みを聞いてもらったうえに

 申し訳ないんですけど……

 どうかよろしくお願いします。」


 さて、そんな都合の良い存在がいないか、

 近くにいる女子生徒に声掛け。


女子生徒

「え、オカルト研の私になにか用?

 月の船に乗った王子サマ?

 んー、そういう系は私の専門外かなー。

 でも、ウチの部員で神話とか

 おとぎ話に詳しいヤツならいるわよ。

 放課後によく2階で見かけるから、

 行ってみたらどうかしら。」


 ピンポイントでオカ研の生徒に当たったが

 放課後か……

 ミヤズも最初放課後って言ってたし、

 一旦教室に入ってしまった方がいいのかな。

 南側の通路の女子高生にも声掛け。


女子生徒

「朝練キツかったぁ。

 でも、もうすぐ試合だし……

 相手は、顧問がメダリストの強豪校……

 いい勝負くらいはしたいよねぇ。」


 まぁ無理しない程度に頑張って。

 その先は行けないようなので、

 戻って西の通路を進むと

 イチロウから声が掛かる。


イチロウ

「よう、大鳳吼、おはよう!

 やっと日常に帰ってきたって感じ?

 実はあのあと、ベテルに残って

 悪魔召喚プログラムってやつの

 レクチャーを受けたんだ。

 どうやらオレって筋が良いらしくて

 ベテルの人たち、驚いてたよ!

 これからはオレも悪魔と戦えるぜ!

 悪魔から人を守る……

 これは正しいことだよな?

 だからオレは迷わずに行動できるんだ。

 呼び止めて悪かったな!

 じゃあな!」


 イチロウもユヅルみたいになるという事は、

 ユヅルやヨーコみたいにゲスト参加する

 可能性があるんだろう。

 なるべく良い仲魔を用意してもらえよ。


 階段下にいる男子生徒に声掛け。


男子生徒

「大鳳先輩、おはようっす。

 この学校、1年の教室は最上階……

 毎日なん往復もツラいっす。

 先輩は3年だから、教室2階ですよね。

 しかも3-Aだから階段上がってすぐ。

 いいなぁ~教室近くて。」


 初めて3年生だって分かったよ……

 ついでに場所も教えてくれてありがとう。


 階段を上がり、

 踊り場にいる男子生徒に声掛け。


男子生徒A

「……どう?

 高輪のお化けトンネルの動画、出てる?」


男子生徒B

「いやー、ないね。

 太宰イチロウのヤツ、また嘘ついたな。」


男子生徒A

「自分でやるって言ったのにな。

 中途半端なヤツだし、いつものことか。」


男子生徒B

「それより電車がまた遅れてるってさ。

 ……まぁ、放課後までには戻るだろ。」


 あの状況で動画アップは無理だろうな。

 仮にアップできてもベテルの連中に

 動画削除されそうだ。

 それにしても気になるのは電車。

 また品川駅で何かが起こるフラグかも。


 階段を上がった2階にいる男子生徒に声掛け。


男子生徒

「ジョーインってさ、全国からのスカウトで

 来たのが多い高校だけどさ……

 隣のクラスの、太宰……イチロウだっけ?

 あんなアホも推薦だったし基準がわからん。」


 学校にしろ会社にしろ、

 推薦時に受ける面接なんて皆猫かぶり状態。

 そこから個人の本質を見抜くには、

 残念ながら面接官の腕によるところが大きい。

 面接試験でどういった質問をすれば良いか、

 面接官は是非ググッてもらいたいものだ。


 少し東側の通路を歩くとサホリの姿が見えた。


サホリ

「どうして……

 どうして私がこんなメに……

 私が何をしたって言うの?

 ハッ!?

 ……誰、あなたは?

 私に、何か用?

 私はあなたに用なんてないから、

 一人にしておいて……」


 こっちはこっちで何かイベントきそう。

 悪魔って人の心の弱みにつけ込むの

 大好きだからなー。

 まぁ、もしそうなったら対応するしかない

 んだろうけど。


 教室に入って席につく。

 少しすると、先生がヨーコを連れて

 教室に入ってきた。


生徒(たぶん今日の日直)

「起立!

 よろしくお願いします!」


 座りなおすとさっそくご紹介。


先生

「えー、突然だが、

 このクラスに転校生が来ることになった。

 尋峯ヨーコさんだ。」


 尋峯ヨーコ

 Yoko Hiromine


ヨーコ

「尋峯ヨーコです。

 よろしくお願いします。」


 ヨーコはそう言って軽くお辞儀する。


先生

「今日からこのクラスの一員だ。

 みんな、何かあったら助けてあげてくれ。」


 ヨーコは吼に向かって、右目でウィンク。

 周囲に感づかれそうな行為は控えてくれ……


 その後、授業が終わり放課後の場面。

 時刻は16時05分になった。


先生

「では、今日はこれまで。」


 生徒全員が立ち上がる。


生徒

「起立!

 ありがとうございました!」


 吼が席に座ると、ヨーコが吼に近付く。


ヨーコ

「あなたに協力しろという指示で、

 すぐ転入することになったの。」


 お目付役も兼ねている可能性は高いだろう。

 だが、それでも仲間には違いない。


「これからよろしく。」


 『ベテルが怖い』と思うかは微妙だ。

 大天使アブディエルは警戒心むきだしだが、

 仕切っている越水総理は協力的。

 ましてユヅルもヨーコもいる以上、

 必要以上に怖がる事もあるまい。


ヨーコ

「こちらこそ。

 あなたとアオガミには期待しているわ。

 私も、私が持つ力を

 あなたと共に役立てるつもりよ。

 せっかくだから、一緒に下校したいところだけど、

 転校の手続きで先生に呼ばれているから……

 それじゃ、またね。」


 そう言って、軽く左手を振って去っていった。

 吼は、教室を出る前に生徒たちに声掛け。


 まずは目の前にいた女子高生。


女子生徒

「あれ?

 尋峯さん、もう帰っちゃった?

 一緒に帰ろうと思ったんだけど……

 ……あ、先生に呼ばれてるのか。

 それじゃ仕方ないね!」


 次は教室の扉付近にいる男女。


女子生徒

「転校生の尋峯さん、クールで格好いいよね!

 憧れちゃうな~。」


男子生徒

「う~ん……

 俺はタオちゃん派かな~?」


女子生徒

「派って何よ!

 私はどうなるのよ!」


 私は……モブ派か?


 次は窓際の前の席あたりにいる男子生徒。


男子生徒

「なぁ、さっき親しげに話してたけどさ、

 大鳳って尋峯さんの知り合い?

 磯野上さんといい、尋峯さんといい、

 羨ましいぞ!」


 はた目から見ればそう思って当然か。

 ベテル絡みの知り合いと捉えると、

 素直に喜べない気がする。


 最後に教壇付近にいる男子生徒。


男子生徒

「隣のクラスの有名人って聞いて、

 どっちを思い浮かべる?

 学園一の秀才の方?

 それとも、ざんねんな方?

 ざんねんな方はやけにご機嫌だったな。

 動画がバズったか?

 いやいや、ありえないだろあの出来で。」


 あれ?

 今朝の男子生徒2人の話では

 動画アップはされていなかった。

 あの後にアップされたんだろうか?


 教室からすぐ廊下に出ると、タオがいた。


タオ

「あ、吼くん。

 あのさ……

 ちょっと相談したいことがあるんだけど、

 いいかな?」


「いいけど。」


 ……どんな理由で『面倒だな』を選ぶんだ?


ヨーコ

「ありがとう!

 でも学校ではちょっと話せないから、

 夜に寮の屋上に来てくれる?

 お願いね!」


 普通なら嬉しい話だが、

 ベテルの聖女という肩書きがあるので、

 素直に喜べないだろう。

 相談の内容というのも、おそらくは

 サホリの事にちがいない。

 前振りが多かったからね。


 近くの男子生徒に声掛け。


男子生徒

「太宰イチロウ、動画撮影やめて

 別の趣味でも見つけたのか?

 何なのか訊いても、教えてくれねえし。

 あのしたり顔、なんだかなぁ~」


 まぁ……教えられる話じゃないよな。


 次に廊下を東に行き当たるまで歩き、

 南側に入る男子生徒に声掛け。


男子生徒

「なに?

 古今東西の伝説に通じた僕に

 聞きたいことがあるって?」


 大鳳吼は、

 ミヤズから聞いた話を伝えた……


男子生徒

「ほー、月の船に異国の王子様か……

 まず考えるべきなのは

 月を象徴する神のセンだね。

 だが、世界には多くの

 月の神がいるからなあ……

 “王子様”ってのは

 案外いいヒントかもしれないな。

 少なくとも女神ではないってことだ。

 そういえば、その夢を見た女の子は

 身体が弱いって言ってたね。

 そして、その王子様が

 夢に出る日は少し調子が良いとか……

 エジプトの月の神、コンスには

 似たような逸話があるんだ。

 病気に苦しむお姫様を癒したというお話だ。

 コンスという名前は“旅人”を意味している。

 古代エジプトの人々は、彼が夜空を横切る姿に

 月の運行を重ね合わせていたんだ。

 聞かせてもらった話に

 一番近いのはこの神様な気がするよ。

 どうかな、参考になってればいいんだけど。」


 情報が聞けたところで階段を下りる。

 そして保健室へ。

 サホリが保健室から出て行ってすぐ、

 ミヤズから声が掛かった。


ミヤズ

「こんにちは、先輩。」


「具合が悪いのか?」


 『今の彼女は?』と聞く場面ではない気がする。


ミヤズ

「いいえ、私は大丈夫です。

 樹島先輩の手当てをしてたんです。

 校医の先生がいなかったので、

 私が手伝ったのですが……

 先輩って、樹島先輩の怪我の理由を

 知ってますか?

 ここだけの話なんですけど……何だか……

 殴られたり蹴られたりみたいな……

 樹島先輩……大丈夫でしょうか……」


 先生たちは気付いていないのか。

 それとも怪我を見ても素知らぬふりか。

 ……後々何か起こるのは確実だな。

 まぁ、それはそれとして、

 まずは、ミヤズからの依頼を報告しよう。


 大鳳吼は

 オカルト研の部員から聞いた話を

 ミヤズに伝えた。


ミヤズ

「あ、先輩!

 どうですか、なにかわかりましたか?」


 大鳳吼は

 コンスについての話を伝えた……


ミヤズ

「わあ、エジプト神話には

 そんな神様がいるんですね。

 コンス、かぁ……

 すごいです。

 私の夢にこんなに近い

 お話が本当にあるなんて……

 病気に苦しむお姫様を助けて、

 最後には月に帰ってしまう……

 なんだかびっくりです……

 エジプトって、どんなところなんでしょう?

 私、小さい頃からこんなだから、

 東京出たことないんです。

 きっと日差しがまぶしくて

 不思議な香りがして……

 東京とは何もかも違うんでしょうね。

 私には……遠い世界です。

 あれ?

 でも、ちょっとおかしいですね。

 そのお話でコンスが助けたのは、

 どこかの国のお姫様……ですよね。

 私、お姫様じゃないのに、

 どうして月の王子様が現れるんでしょう。

 なんて、夢の話について、

 こんな風に考えてもしかたないですよね……

 で、でも、興味が湧いてきました……

 エジプトの神話の本とか、

 今度図書室で借りてみます!

 先輩、本当にありがとうございます。

 これ、つまらないものですが、お礼です。」


!クエスト

 「王子様につい知りたい」

 を達成しました。


 大鳳吼は

 ゼリー缶を3個手に入れた。

 経験値500EXPを得た。


!ゼリー缶

 中までたっぷりゼリーが入った缶だ。

 振れば振るほどゼリーは細かく砕け、

 より飲みやすくなる。


 確認すると遺物扱いになっていた。

 ……おかしいと思うのは私だけ?


 ミヤズは何かの歌を口ずさんでいる……


ミヤズ

「……あ、これ、歌のアニメで流れてた歌なんです。

 ちょっと怖いかんじなんですけど、

 女の子が月の王子様と

 ダンスするところとかすごく綺麗で……

 お兄ちゃんに録画してもらったのを

 何回も見てました。」


 歌のアニメも月の王子様か……

 コンス絡みのサブクエストでも起きそうだ。


 さて報告したので寮に帰ろうと廊下に出ると、

 廊下や階段にいる生徒たちの吹き出しマークが

 また出ていた。

 仕方が無いのでまた聞きまわる。


 まずは階段下にいる男子生徒。


男子生徒

「大鳳先輩、おつかれっす。

 学校の寮、結構ここから

 離れてるんすよね……

 駅の東口からまた湾岸の方まで歩いて……

 都心の学校だし仕方ないんかなぁ~」


 ただの愚痴だった。

 次は階段踊り場の男子生徒2人。


男子生徒A

「そういえば、3年に転校生が来たらしいな。」


男子生徒B

「ああ、聖マリナ女子学院ってとこから

 転校してきたんだっけ?」


男子生徒A

「そうそう、あんまり聞いたことない

 学校だよな? 知ってたか?」


男子生徒B

「今調べてる……

 へぇ、かなりレベル高いみたいだな。

 なんでわざわざうちに来たんだ?」


 本当の理由なんて言えないだろう。

 ただ、聖マリナ女子学院を

 休学していたのは気になるが。


 次はオカ研の女子生徒。


女子生徒

「神職、修験者、僧侶、巫女、ムーダン。

 政府が霊感ある人間を集めチームを結成……

 この噂知ってる?

 ホント間違ってるッ。

 オカルト研の私に声をかけるべきなのに!」


 ベテルの事か。

 そんな噂が出ているのは良くない気がする。

 しかし怒ってる方向性はそれでいいのか?


 次は朝練を頑張ってた女子生徒。


女子生徒

「部活中止かぁ。

 寮に帰ってもなぁ。

 駅前は遊ぶトコないし……

 プリンセスホテルの映画館か渋谷まで出るか。」


 学生割で映画安いのかな?


 次は男子生徒。


男子生徒

「きっつー……

 さっきイジメの現場、見ちゃったよ。

 突き飛ばされた子、ヒザ擦りむいてたぜ?

 あのあと保健室に行ったみたいだけど、

 あれはヒドイよ。」


 バリバリにフラグ立っちゃったなー。

 タオからの相談事はもうこれで確定だろう。


 玄関に着くとユヅルがいた。


ユヅル

「やあ、大鳳。

 お互い、昨日は大変だったね。

 あの後、太宰に悪魔召喚を教えたんだ。

 そうしたら、あっという間に覚えてね。

 ベテルも協力者が増えて喜んでいたよ。

 ただ、僕としては素直に喜べないよ。

 だって彼は今まで平和な日常を過ごしてきた

 一般人だったんだ、それなのに……

 僕はそういった平和に過ごす人々を

 守るためベテルに協力していたんだが、

 彼を巻き込んでしまった……

 いや、太宰だけじゃない。

 大鳳吼、君もだ。

 自分にもっと力があれば、

 君たちの日常も守ることができたかもしれない。

 そのためには、これからも努力を重ね、

 悪魔を狩れるようになるつもりだ。

 新しい仲魔も増えたことだしね。

 互いに東京の平和を守るため、

 頑張るとしよう。」


 一方的に喋って一方的に閉めた感じ。

 吼が喋らないからってのもあるが。


 次は植木鉢(観葉植物?)付近にいる女子生徒。


女子生徒

「最近、またオカルトブームきてない?

 謎の化け物とか、幽霊が出るトンネルとか。

 あまりそういうの信じたくないけど、

 見たって言うウチの生徒、結構いるのよね。」


 高輪トンネルはともかく、

 あの魔獣またこっちに来ているんだろうか。


 次は壁側にいる男子生徒


男子生徒

「購買……閉まってるッ。

 いちご牛乳の気分だったのにぃ!」


 あ、朝にコーヒー牛乳飲んでた生徒か。


 最後にロッカー前にいる男女。


女子生徒

「そういえば、トンネルが崩れる事故が

 あったって知ってる?」


男子生徒

「ああ、うちの生徒が巻き込まれたって。

 でも、ケガは大したことなかったらしいよ。」


 もう既に聞いた情報だった。


 あとは校舎の外へ。

 こちらも会話マークが出ているので声掛け。


 朝もいた女子生徒3人組。


女子生徒

「聖マリナ女子学院からの

 転校生が来たらしいね。」


女子生徒

「あそこ、規律が厳しいんだっけ?

 校則とかが嫌になってうちに来たのかな?」


 もう一人は聞くだけみたいだ。


 次は男子生徒2人。


男子生徒A

「友達の友達が、褐色に日焼けした

 マッチョの坊さんを浄増寺で見たんだって。」


男子生徒B

「マッチョの坊主って!

 格ゲーのキャラかよっ!」


 悟劫の事だ。

 魔界からこっちに帰ってきたのかも。

 回帰のピラー凄く使えるからお礼言いたい。


 門の近くにはイチロウがいた。


イチロウ

「なぁ、なぁ!

 樹島サホリって、知ってる?

 今、すれ違ったんだけどさ、

 すごく辛そうな顔してたんだよ。

 以前は隙のない美人って感じでさ、

 正直、オレ憧れてたんだよ。

 ……まぁ、オレなんか相手にされないけどな!

 だけどよ、最近の彼女は見てらんないぜ。

 何とかしてあげたいけど、

 オレじゃ……」


 ……これだけフラグ立ったら、

 それなりのイベントが起きそうだ。


 寮に戻ったら屋上へ。

 もう夕方だ。

 夕日が沈もうとしている。

 周囲は暗くなってきていた。

 そこで、タオが待っていた。


タオ

「ごめんね、呼び出しちゃって。」


「話は何?」


 『サホリのこと?』の選択肢がある。

 やっぱりそういう相談のようだ。

 どちらで聞いても同じだろう。


タオ

「……うん、

 サホリのことなんだけど。

 あ、樹島サホリ。

 私の友達、ううん、親友なんだ。

 サホリね……

 いじめられてるみたいなの。

 前は彼女、私と同じラクロス部で

 活躍するすごい選手だったんだ。

 だけど去年、事故で怪我をして、

 部活を辞めることになっちゃったの。

 それからだよ。

 イジメが始まったのは。」


「犯人は?」


 『理由は?』の選択肢もあるが、

 理屈抜きにイジメはダメだ。

 理由など関係ない。


タオ

「元部員の子たちが、逆恨みして……

 サホリの作った厳しい練習メニューがイヤで、

 数人の部員が辞めていったことがあったの。

 サホリはチームが強くなるために

 頑張っていたんだけどね……

 どうすればイジメや嫌がらせを

 止められるかな?」


「先生に伝える。」


 『一緒にいることだ。』は、

 仮にタオだけ一緒にいるというなら危険だ。

 ユヅル、ミヤズ、イチロウといった感じに

 数人が一緒にいるなら簡単に手出しできない

 と思う。

 だがそれをずっと続けるのは難しいだろう。

 まずは先生に相談が最初の一手か。


タオ

「先生には伝えたんだけど……

 サホリ、何も言わなくて……

 先生も噂だけで証拠もないし、

 本人も申告しないのならイジメじゃないって……」


 すると、いつの間にいたのか、

 最初からいたのに気付かなかったのか、

 ヨーコが語り出した。


ヨーコ

「先生なんかアテにならないわ。」


 屋上にあったパラソル下の椅子に座っている。


タオ

「尋峯さん?」


ヨーコ

「ごめんなさい。

 盗み聞きするつもりはなかったんだけど、つい。」


タオ

「あ、いいの。

 こちらこそ気づかなくて……」


ヨーコ

「お邪魔したわね。

 私、もう行くから。」


 ヨーコは立ち上がり、

 そのまま屋上を去ろうとする。


タオ

「あ、あの!

 さっき言ってたこと……

 尋峯さんは何か別の考えがあるの?

 よかったら、教えてほしいの。」


 ヨーコは立ち止まり、腕を組んでこたえる。


ヨーコ

「先生に相談するとか、一緒にいるとか、

 そんなの意味ない。」


タオ

「えっ……」


ヨーコ

「そういう遠回しな手段では、

 樹島さんには届かないってこと。

 虐げられている人に必要なのは、

 直接的に自分を助けてくれる手なの。」


 ヨーコは組んだ腕を解き、振り向いた。


ヨーコ

「磯野上さんは、その手で彼女を

 いじめる子たちを殺す覚悟がある?」


タオ

「こ、殺す……?

 待って、私はイジメを止めたいだけで……

 そんなこと、サホリも望んでないよ……」


ヨーコ

「いいえ、それこそ彼女が望んでいること。

 誰も助けてくれない中、被害者が心の奥で

 望むことはただ一つ、加害者への復讐だけ。」


 ヨーコはいつの間にかまた腕を組んでいた。

 どこか遠くを見ているような目線は、

 何を思っているのだろう。

 自らの過去に繋がる何かかもしれない。


タオ

「尋峯……さん……?」


 ヨーコはまた腕を解き、タオに謝る。


ヨーコ

「……ごめんなさい。

 部外者が言うことじゃなかったわ。」


 ヨーコはそう言って吼を見た後、

 屋上を去っていった。


タオ

「あの……聞いてくれてありがとう。

 私、もう少し考えてみるね。」


 本当に考え込んだような表情で、

 タオも屋上を去っていった。


 吼も自室に戻る。

 明日は学校どころではない何かが

 起きそうな、そんな感じがした。


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 Name 大鳳吼

 Location 学生寮 自室

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