医科学研究所(ベテル日本支部)
トウキョウ議事堂の奥まで進むと、
吼が耳に手を当てる。
アオガミ
「こちら、ベテル日本支部神造魔人アオガミ。」
どうやら通信機能があるようだ。
男の声
「アオガミ?
数十年前にアオガミ型は……」
アオガミ
「再起動に成功、今から帰還する。」
男の声
「何ということだ!
すぐに上に伝えてくるからこちらに来てくれ。
ターミナルに触れれば転送可能になるはずだ。」
目の前には、真・女神転生Ⅲで登場した転輪鼓、
ターミナルが鎮座していた。
ユズル
「どうやら、本当に我々の知る東京へ
帰ることができそうだな。」
吼がターミナルを回すと光り出し、
一瞬で別の場所へと移動した。
すると、吼はナホビノの姿から元の姿へ戻り、
隣にはアオガミの姿が現れた。
分離する事は普通に可能らしい。
アオガミ
「到着だ。」
イチロウとヨーコがキョロキョロする。
二人とも見たことがない施設なのだろう。
イチロウ
「ここは……東京なのか?」
ユヅル
「ああ、ここは縄印大学医科学研究所。
ベテルの施設のターミナルだ。」
ユヅルが説明していると、
アオガミの記憶で見た、
金色の鎧を身にまとった大天使
アブディエルがやってくる。
背後に4体のエンジェルを引き連れていた。
アブディエル
「今の姿……一体どういう事か?」
アオガミ
「大天使アブディエル。」
ベテル天使長代理 大天使
アブディエル
Abdiel
アブディエル
「神が定められた禁を破ったというのか?」
アブディエルが剣を突き出した。
アブディエル
「答えろ、小僧。
禁を破りし者にベテルは容赦をせぬぞ。」
するとそこに磯野上タオが現れる。
タオ
「お待ち下さい、アブディエル様。
詳しい事情はわかりませんが、
巻き込まれただけの民間人にぜひご寛恕を。」
アブディエル
「聖女か……」
タオ
「そもそも、神により定められた禁なのです。
破ろうとして破れるものではありません。」
アブディエル
「では、この事実はどう説明する?」
タオ
「それについては日本支部で調査いたします。
ただ、少年の隣に立つのは日本支部の神造魔人。
かの決戦にて失われたはずの者です。
失礼ながらあの決戦、アブディエル様が
指揮をとられていたと聞き及んでいます。
であれば、従軍した神造魔人の無事を、
責めるのではなく、まずは喜んで頂きたく思います。」
アブディエル
「……よかろう。
ただしナホビノの疑いについては、
日本支部の責任で調査を命じる。」
アブディエルはそう言って、
エンジェルを連れて去っていった。
タオは軽く安堵するように息を吐く。
タオ
「……ふう。」
イチロウ
「怖ぇ……
なんだよ、あの迫力。」
ユヅル
「あれが本部の大天使か。」
イチロウとユヅルが言葉を漏らした後、
タオが皆に振り向いた。
タオ
「みんな、心配したんだからね。
……お帰りなさい。
いろいろ説明が必要だよね。
会議室まで、ついてきてくれる?」
タオが先に歩いていく。
吼、アオガミ、ユヅル、イチロウと続き、
ヨーコが何か考え込んでいたが、
後に続いた。
!ターミナル
ベテル日本支部の拠点である
縄印大学医科学研究所には、
ターミナルと呼ばれる装置が存在します。
ターミナルは龍穴と同じ機能を有しており、
行動の記録や龍脈渡りなどの行動を
行うことができます。
東京で活動する際は、このターミナルを
拠点にするとよいでしょう。
……よいでしょうって、研究所の持ち物を
勝手に使用できるんだろうか?
もしくは、これから使用していい流れに
なるという事だろう。
!尋峯ヨーコが
パーティから離脱しました。
このタイミングで離脱。
まあ、戦闘じみた事は無さそうだからかも
しれない。
今後もパーティに入るかは、
ヨーコの出方次第といった感じだ。
ターミナルのある地点から、
北東、南、北西の3方向に進めるようだが、
まずは目的地のマークが付いている北西へ。
扉の手前でユヅルとイチロウが待っていた。
タオの待つ会議室へ向かうことにした……
複数のモニターが壁一面に埋め尽くされた、
細い横長の部屋に通された。
タオ
「えっと、どこから話せばいいのかな?」
あ、でもその前にあなたは?
その制服は聖マリナ女子学院よね?」
ヨーコ
「私は尋峯ヨーコ。
事情があり今は学院には通っていない。」
ユヅルが続いてサポートするように説明する。
ユヅル
「彼女には廃墟のような東京で
悪魔に襲われた所を助けてもらったんだ。
そうだ、僕はベテル日本支部に協力して、
悪魔に対抗する力を持っている。
だが君はどうしてそんな力を?」
サポートはしたが、ユヅル自身も問うた。
正直な質問といった感じに。
ヨーコ
「私は昔から不思議な力があって、
聖女と呼ばれていたこともある……
学院でもその力を見込まれ、
悪魔祓いの技術を教え込まれていたの。」
ユヅル
「そうだったのか。」
簡単に納得したようだった。
ベテル関係者から見れば
不思議な事ではないらしい。
タオ
「尋峯さん、私も同じなの。
私も子供の頃から霊力があって、
ベテルでは聖女ってよばれてるわ。
その力を使い、敦田君と同様に
日本支部に協力をしているの。
ただそんな話よりも、
今はあなたたちが見てきた
悪魔の住む世界について話しましょう。」
ここからとんでもない話が始まる。
タオ
「……私たちが暮らしてきた東京が、
実はウソだっていったら……信じる?」
物凄く突拍子もない、非現実的な問いだ。
イチロウ
「……ハァ?」
イチロウの口から漏れた声が
とても素直に感じる。
タオ
「18年前、千代田区を中心とした
23区内全土が突如魔界化し、
現世から消滅した……
一千万を超える都民も、
その生を終え魔界に消えたわ。」
真・女神転生Ⅲで起きた東京受胎だ。
という事は、この世界は
東京受胎から18年後を指している。
彼ら高校生の年齢を考えれば、
当時の受胎を知る者はいない。
震災の記憶が風化されていくように。
ユヅル
「何を言っている磯野上、
僕らは今まで東京で暮らしてきたじゃないか。
あれはどういうことだ?」
タオ
「そう、それこそが神の奇跡……
消えた東京の土地と住民を、
何の疑いも持たれないよう再現した。」
真・女神転生Ⅲのエンディングには何通りかある。
その中でも、シジマ、ヨスガ、ムスビ、先生の
4つのエンドは、東京が再構築されていた様に
感じた。
また、アマラエンドの場合はその先が不明だが、
悪魔たちが向かった先が、神の奇跡で再現した
東京だとすれば、辻褄が合う。
おそらくは後者が正解かもしれない。
であれば、カグツチ以外に世界(東京)を
再現した神がいたという事になる。
ヨーコ
「18年前の神の奇跡……」
イチロウ
「オレたちが今まで暮らしてきた東京が……嘘?」
ユヅル
「そんな…………」
タオ
「本当の東京は悪魔が住む魔界と化した。
そして悪魔たちは人の魂を奪おうとして、
私たちのいるもう一つの東京を襲ってきているの。」
すると皆の背後から一人の男が現れた。
スーツ姿で身を固めたその様は、
大企業の幹部か公務員に見える。
越水
「それを防ぐために戦っているのが、
この少数精鋭の極秘組織、ベテル日本支部だ。」
カツカツと靴音を鳴らし、皆の前にきた。
越水
「聖女からの説明は終わったか。
改めて我らの戦いに巻き込んだ事を謝罪しよう。」
イチロウ
「えぇ~と、オジサン……
どっかで見たような?」
越水
「私は越水、ここの責任者であり、
日本国内閣総理大臣だ。」
日本国内閣総理大臣
ベテル日本支部長官
越水ハヤオ
Hyao Koshimizu
ユヅル
「日本支部トップの越水長官って、
同姓同名じゃなく、
本当に越水総理のことだったんですか!?」
ユヅルも知らなかった事実らしい。
越水
「うむ、
敦田君も無事戻ってこられて何よりだ。
東京の真の姿を知った君たちには、
この世界の真実を伝えておこう。
世界の裏側では秩序と混沌が対立している。
法の神と混沌の悪魔が戦いを続けているのだ。
悪魔たちは人を襲い魂を奪おうとする。
隙を見て魔界から現実へ侵略しようとする。
危険な存在である。
その悪魔に対抗し、東京を守るために戦う。
それがベテルの日本支部、
即ち我々というわけだ。
しかし悪魔の攻撃は激しく、
手が足りていないのが実情である。
磯野上君や敦田君といった
学生の手を借りるほど、
ベテルの力は足りていない。」
そして越水はヨーコを見据える。
越水
「話は聞いていた。
君が聖マリナ女子学院の悪魔祓いか。
あそこは本部の管轄だったが話は通しておく。
その力、東京のため役立ててくれないか?」
ヨーコのこたえがくる前に、
イチロウが食い付く様に割って入る。
イチロウ
「お、おおお……
総理、それってオレにもできますか?」
越水
「……東京を守る事かね?」
イチロウ
「ああ、それ、やりたいんだ!」
タオ
「太宰くん?」
イチロウ
「オレ、落ちこぼれて……
いつも人に迷惑ばかりかけてて……
でも、そんなオレでも優等生みたいに
人の役に立てるならやってみたいんだ!」
人ならざる者と対峙する恐怖とは、
想像をはるかに超える。
勢いだけで語っていなければいいのだが。
越水
「ありがとう。
君の勇気に感謝を。」
そして越水は吼にも語る。
越水
「君について連絡は受けている。
アオガミと融合した君にも協力を求める。
……悪いが選択権はない。」
吼
「大丈夫です。」
アオガミに協力してもらって帰還できた
以上、断るつもりは無いだろう。
「本当は嫌だ。」という選択肢は、
あって無いように感じる。
まして魔人マタドールまで倒した実力だ。
一般民間人の持つ恐怖心など、
どこかに消し飛んだかもしれない。
越水
「ありがたい。」
そして再度ヨーコに向き直る。
越水
「そして尋峯君もだ。
悪魔祓いの力を貸してもらいたい。」
ヨーコに再度同じ事を頼んだ。
さっきは回答する間もなく
イチロウから声が掛かったからだ。
ヨーコ
「……任務において大鳳吼と
同行できるなら協力しましょう。」
ということは、
パーティ離脱は今だけのようだ。
それとも吼に何かを感じ取ったのか。
越水
「問題はない。
ではよろしく頼む。」
ここでタオが本音をポロリ。
タオ
「神造魔人が無事に戻ったのは喜ばしいけれど、
人間と融合だなんて、前代未聞ね。」
それについては越水も同意らしい。
越水
「アオガミ製造には私も関わっていた。
後でいろいろと調査をしてみるつもりだ。
アオガミ、
これから君の記録データを調べたい。
この後、研究施設に向かってくれたまえ。」
アオガミ
「了解。」
越水
「他の者たちは、後日改めて話がしたい。
今日は帰ってゆっくり休んでくれたまえ。」
イチロウ
「ハイ!」
越水
「それから、敦田ユヅル。
今回、魔界から無事生還した事、
称賛に値する。
悪魔召喚の腕も上がっただろう。
今後は、より強力な者を仲魔として授けよう。」
ユヅルは、会話で悪魔を仲魔にといった事が
出来ないのかもしれない。
組織の援助あっての仲魔化だと、
かなり限定的になるだろう。
ユヅル
「はい、ありがとうございます。」
ここで一旦落ち着いたようだ。
吼が皆に声を掛けてみる。
イチロウ
「東京を守るとかってすごくね!?
オレなんかが、学園の有名人と
一緒に戦えるんだからな!
オレが落ちこぼれたのって、
自分に自信が持てないからなんだ。
オレの家は離婚こそしてないものの、
両親が不仲でさ。
オレはいつも正解を探してた。
父親の言いつけを守ると母親が怒る。
母親の言いつけを守れば父親が怒る。
そのうち、正解がない事ができなくなった。
だけど悪魔から東京を守るのは
絶対に正しいことだろ?
迷わず自信を持ってできるよ。」
イチロウは、チャラけた見た目とは裏腹に
随分と苦労人のようだった。
普段の姿はストレスの表れかもしれない。
タオ
「そういえば私がベテルの関係者だってこと、
黙っていてごめんね。
君を巻き込みたくなかったの。
まさか事態がここまで深刻になるとは
思わなかったから。」
うん、まぁ同校性を巻き込みたくない
というその気持ちは分かる。
ユヅル
「とにかくお互い無事でよかった。
これからも一緒に東京を守るため戦おう!」
ユヅルは吼との共闘を経験したからか、
吼も戦う事には前向きに賛成のようだ。
越水
「君たちが無事に帰還して何よりだ。
結果的に、アオガミの帰還という
思わぬ収穫もあった。
大鳳君や太宰君たちも
ここの一員として出入りできるよう
取り計らう。
ターミナルの使用や
バーチャルトレーナーによる訓練も
できるよう許可しておこう。
君たちがいた魔界にあるトウキョウ議事堂。
そこにバーチャルトレーナーを設置してある。
学生寮の君の部屋にも
小型のターミナルを設置しておく。
以降はそれで自由に移動して構わない。
私からは以上だ。
今日のところはゆっくり休んでくれたまえ。」
ターミナルの使用がOKになった。
まずは一安心。
!バーチャルトレーナー
バーチャルトレーナーでは過去の強力な敵と
勝ち抜き形式の連戦か通常の戦闘の
いずれかで再戦することができます。
連戦形式の戦闘では、オプションとして
プレイヤーが勝利するごとに敵が強化される
チャレンジモードが用意されています。
いずれの場合でも敗北した場合は
ゲームオーバーとなりますので、
戦闘前はセーブすることを推奨します。
!バーチャルトレーナー
「港区の戦い」
が開放されました。
Ⅲにあった「墓標の間」の強化版
といった感じなんだと思う。
ジャターユとマタドールは再戦したくないけど。
越水
「アオガミを連れ帰ってくれたことに感謝する。
ひとまずは、今まで通り
学園生活に戻ってくれ。」
越水だけ台詞に声が入っていなかった。
声優つけているんだから、もったいぶらず
他のメンバーも入れれば良かっただろうに。
ヨーコ
「ここがベテル日本支部……
私たち東京に戻ってこられたのね。
魔界から帰れて良かったわ。
ありがとう。」
出会った当初に比べて随分素直になったな、
とは間違っても言えないな……
そう思っているとタオから声が掛かる。
タオ
「明日も学校だし、そろそろ帰りましょう。
そういえば彼女は?」
ヨーコ
「私もそろそろ失礼するわ。
大鳳吼、また会いましょう。」
大鳳吼はベテル会議室から出た。
Save
Name 大鳳吼
Location ベテル会議室




