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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界恋愛・短編

「シェーラ今回も許してくれるだろ?」「えっ嫌です」この度女侯爵となったので浮気者の婚約者とは別れようと思います・短編



「シェーラ、今回も許してくれるだろ?」


サム様と婚約して三年。


彼が浮気をするのはこれで六回目。


サム様は浮気をする度に、ニヤケ笑いを浮かべ当家に謝罪に来ました。


父はそんな彼を許していた。


それがサム様を調子にのせてしまったようです。


「えっ、嫌です」


私が冷淡に言い放つと、サム様が凍りつきました。


「なぜだ!

 今までは許してくれたじゃないか!?」


「今まであなたの浮気を許してきたのは私ではなく、父です」


父はお人好し……いや、外面が良い人間でした。


父は自分の体裁を守る為なら、平気で家族を犠牲にした。


他人に寛大に振る舞う時、父はさぞ気分が良かったでしょう。


自分は何一つ失わず、他人から感謝されるのですから。


「父は私の意見など一切聞かずあなたの浮気を許してきました。

 その度に私が、辛い思いをしているとは考えもしないでね」


勝手に私の婚約者を決め、勝手に婚約者の浮気を許していた父。


あの人にはどれだけ煮え湯を飲まされたかわかりません。


「ですがその父も先月亡くなり、私が家督を継ぎました。

 イングラム侯爵家の現当主は私です。

 ですからサム様との婚約を維持するか、それとも破棄するか、それを決める権限も私にあります。

 私はあなたの浮気を許しません。

 なのであなたとの婚約を破棄し、バートン伯爵家に慰謝料を請求します」


そもそも格上の侯爵家の婿入りする伯爵家の次男の分際で、よくまあこんなにも浮気を繰り返せたものです。


それもこれも、無能な父のせいです。


父は人が良いだけのポンコツだったので、その本質を見抜いていた学生時代の友人に付け込まれていたのです。


父の学生時代の友人というのが、サム様の父親で、没落寸前のバートン伯爵家の現当主です。


バートン伯爵はアホでスケベな次男を、侯爵家の跡取り娘である私の婚約者にしようと画策しました。


へっぽこな父は、バートン伯爵家の策略にまんまと嵌められたのです。


父はそのことに気づきもせず、「傾いていたバートン伯爵家を救うことができた。とても良いことをした」と本気で思っていました。


伯爵家のバカ息子と婚約して、彼の尻拭いをするのは誰だと思っているのかしら?


父は、侯爵家の当主としても、父親としても不適任でした。


「君の一存でそんな事を決めていいのか?

 君は未成年者だろ?

 君の後見人や、イングラム侯爵家の親戚はなんと言っているんだ?

 婚約は家と家との結びつきだ!

 君のわがままで、簡単に破棄できるものじゃないんだぞ!」


サム様がみっともなく吠えています。


この国の成人は十八歳。


私は現在十六歳。


彼が言うように未成年の私が家督を継ぐには、後見人が必要です。


「その点なら問題ないよ。

 シェーラの後見人である僕が、君とシェーラの婚約を破棄することに同意しているからね」


その時、応接室に金色の髪に、青い目の美青年が入ってきました。


「誰だ!

 お前は!」


サム様が、彼を睨みつけました。


「彼はフランシス・アシュフォード様。

 アシュフォード公爵家の次男で、私の後見人ですわ」


アシュフォード公爵夫君(ふくん)は、父の弟。


よってフランシス兄様は私のいとこに当たります。


「シェーラの後見人かなんだか知らないが、俺とシェーラの婚約は亡き侯爵閣下が決めたことだ!

 死者の思いを尊重しようとは思わないのか!」


サム様がフランシス兄様に抗議しました。


「死者の思いを尊重する?

 笑わせるな。

 そんなもので家が守れるものか。

 婚約者がいながら浮気を繰り返す君に、死者の思いを尊重しろと言われる筋合いはない。

 第一君には、伯父様の意思を尊重して、シェーラとの婚約を継続させたいと思わせる程の価値がない」


「それは……」


「死者を悪く言うつもりはないが、ネイサン伯父様は外面が良いだけの残念な方だった。

 学生時代の悪友にそそのかされ、バートン伯爵家の出来損ないの次男を、押し付けられたことにも気づかない」


「誰が出来損ないのバカ息子だ!」


フランシス兄様は、サム様の事を「出来損ない」と言いましたが、「バカ息子」とは言ってません。


サム様は自分が「バカ」という認識があったのですね。


「ネイサン伯父様は、娘が何度も婚約者に浮気されているのに、自分の体裁や自分が良い人だと思われることだけに固執していた。

 そうしたネイサン伯父様の態度は、シェーラだけでなく、イングラム侯爵家の家格を下げる行為だと、親戚から苦情が出ていた。

 ネイサン伯父様が亡くならなくても、近い内に当主交代が行われていただろう。

 そして君とシェーラの婚約は破棄されていただろう」


私の言いたいことを、フランシス兄様が全部言ってくれました。


「そんな……!」


事実を突きつけられ、サム様は床に崩れ落ちました。


「そういうわけですのでサム様、早急にお帰りください。

 婚約破棄の慰謝料については、追って弁護士とバートン伯爵を交え話し合いましょう」


いつまでもサム様に居座られると迷惑です。


「待ってくれシェーラ!

 愛してるのは君だけだ!

 これからは浮気はしないと誓う!」


「サム様からその言葉を聞くのは六度目です」


サム様は浮気をする度に、「君だけを愛する」「二度と浮気をしない」と言いました。


六度も浮気しておいて、今さら誰がそんな言葉を信じると言うのでしょう?


私が呼び鈴を鳴らすと、私兵が部屋に入ってきました。


「サム様がお帰りです。

 どうぞ丁重に、そして確実に玄関までお運びして」


「おい! 何をする離せ!」


私兵がサム様を拘束し、部屋の外に連れ出しました。


私はフランシス兄様と一緒に応接室の窓辺にたちました。


応接室の窓から、私兵がサム様を門の外に捨てるのを確認し、安堵の息を漏らしました。


サム様には二度と当家の敷居を跨がせたくありません。


「やっと帰ったか、バートン伯爵家の礼儀知らずの犬が。

 あんなのが婚約者では君も大変だっただろう?」


「ええ、それはもう」


私の初恋の人はフランシス兄様でした。


四年前、兄様と「成人したら結婚しよう」と約束していました。


それなのに、父がバートン伯爵にそそのかされて、私とサム様の婚約を勝手に決めてしまったのです。


それからは、サム様の尻拭いの連続で、苦労のしどおしでしたわ。


「サム様との縁が切れると思うと、清々しい気持ちになりますわ」


「バートン伯爵家は、ネイサン伯父様や君を舐め腐っていたからね。

 イングラム侯爵家に縁のある者は、バートン伯爵家を良く思っていないよ。

 この機会にバートン伯爵家とは、仕事の縁もスッパリ切ってしまおう。

 イングラム侯爵家とその親戚から縁を切られたら、バートン伯爵家は潰れるだろう。

 だがそんな事は僕達の知ったことではない。

 今までアホな……人の良い伯父様を利用して散々うまい汁を吸ってきたんだ。

 奴らはその報いを受けて当然なのさ」


「まぁフランシス兄様、それは素敵な計画ですね」


サム様と婚約してからの三年間。


彼らには青春を踏みにじられ、辛酸を嘗めさせられてきました。


このくらいの仕返しをしないと、私の溜飲が下がりません。


「ところでフランシス兄様……昔私とした約束を覚えておいでですか?」


「君と結婚しようと約束したこと?」


「ええ」


私がフランシス兄様と結婚の約束をしたのは、私が十二歳、フランシス兄様が十六歳の時でした。


フランシス兄様にとっては、親戚の子供相手にした他愛のない約束だったのかもしれません。


でも私はずっとフランシス兄様の事が……。


「もちろん覚えているよ。

 だからこの年まで婚約者を作らず、独身を貫いてきたんだ。

 いつかバートン伯爵令息の有責で、君と彼の婚約が破棄される事を願ってね」 


「それは本当ですか?

 嬉しいわ!

 フランシス兄様!」


「君を抱きしめてキスしたいけど、君は書類上はまだバートン伯爵令息の婚約者だからそれは控えるよ。

 相手に付け入る隙を与えたくないからね」


「そうでしたわ。

 私はまだあのダニ……サム様の婚約者でした。

 慰謝料なんてどうでもいいから、早急に彼との婚約を破棄したいです!」


「それは駄目だよ。

 イングラム侯爵家が舐められない為にも、バートン伯爵家は徹底的に潰しておかないとね。

 心配しないで、バートン伯爵令息の有責で婚約を破棄し、彼らから慰謝料を取り立て、伯爵家を潰すのに一カ月もかからないから」


「フランシス兄様はとても頼もしいわ」


フランシス兄様は、本当に一カ月もかからずにそれらのことを成し遂げました。


落ちぶれたバートン伯爵家の面々を見て、私も胸のつかえが取れました。


「愛してますわ。

 フランシス兄様」


「もう、兄様じゃないだろ?」


「愛してるわフランシス」


「僕もだよシェーラ」


その一年後、フランシスがイングラム侯爵家の婿入りする形で結婚しました。


優秀なフランシスは、領地経営や商売も上手で、当家はますます発展しました。


私はフランシスに大切にされ、末永く幸せに暮らしました。



――終わり――


読んで下さりありがとうございます。

少しでも、面白い、続きが気になる、思っていただけたら、広告の下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると嬉しいです。執筆の励みになります。


【書籍化のお知らせ】

この度、下記作品が書籍化されました。


タイトル:彼女を愛することはない 王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした

著者:まほりろ

イラスト:晴

販売元:レジーナブックス

販売形態:電子書籍、紙の書籍両方 

電子書籍配信日:2025年01月31日

紙の書籍発売日:2025年02月04日


ぜひ手に取って、楽しんでいただければ幸いです。


まほりろ


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


連載中の下記作品もよろしくお願いします。

「完結保証・嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」

https://ncode.syosetu.com/n5735kh/


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― 新着の感想 ―
あっさりしすぎている感じがしました。浮気野郎の落ちぶれていく様子が見てみたかったです。
両思いの二人がクズ親の妨害にもめげずに幸せになってよかったです! 婿養子という言葉にちょっとひっかかりました 主人公の親はもういない訳ですから、普通に婿入りでいいのでは?
さんざん主人公や親戚一同を振り回しておいて、自分だけサッサとあの世に「死に逃げ」しちゃったパパ侯爵にイラッとしますねえ。 なので多分、病死とか自然死に見せかけて裏で実はフランシスが……とかって妄想して…
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