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なんで、テレビって、Hな人間ばっかりなんだ!?

「役職定年って、つまんねえなあ」

 JR有楽町駅のガード下中華屋で昼食を取りながら、経理部の池波部長がこぼした。

「いいじゃないか。責任もなくて、仕事もなくて、給料もダウンして、それでも、食い扶持稼げるんだから。おまんま食わせてもらえるだけ有難いと思わなきゃ」

 いつもは、逆に愚痴ってばかりの閑職営業部長、相川健二56歳が、殊勝なことを言って返した。

「まあ、たしかに、なんにも仕事しないで、若い連中の仕事っぷりを日がな一日眺めているだけで、とりあえず、毎月給料が振り込まれるんだから」せっかくの中華スープをただただ事務的にしゃもじで口に運びながら、池波部長も少ししおらしくなる。ただ、せっかくの昼飯なんだから、もっと、味わわないと。もったいないよ。「学校卒業して、苦節、30数年。とうとう、やっと、世界最高、最強の月給取りにまで上り詰めたってわけか」

「そうそう。そういうことだよ」

「いらっしゃいませ!」

 店員の元気な声が店内に響いた。なにげなく見上げると、入り口の自動ドアが開いたままの恰好で、見覚えのある女性が姿を見せた。

「あれっ。あれって、御成門テレビの加賀真由美じゃねえか」

 すかさず、相川が反応した。見逃すはずがない。ヤ〇たいヤ〇たい、と夢想していた相手なのであるから。

「あっ、ほんとだ。願うと叶うもんだな。よかったな、会えて。なま加賀アナウンサーに」

「そうだ。なんでも、願うもんだ」

 加賀の後ろには50年配の男がお付きでついていた。加賀がときどき振り返りながら、確認しあっている。

「なんだあのおっさん」おっさん同士、対抗心を燃やす。

「・・あっ、先輩だ。演出家の田部走さんだよ。オレの中学高校大学の一個上なんだよ」

「知ってんのか、あのおっさん」

「知ってるもなにも、部活の軟式テニス部で一緒だったからな」

「・・・」なにが、軟式テニスだ。くすりの助けを借りなきゃ役立たずの、軟式〇ニスのくせに。

「相席ですが、よろしいですか」

 店員が相川らのテーブルの残席を打診してきたから、

「どうぞ、どうぞ」渡りに船である。

 方形の、赤色の安っぽいエナメルテーブルの右半分に、美女とおっさんが腰を掛けたと思いねえ。まるで、お笑いてんぷく劇場みたいな展開だ。





 

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