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第7話 メル、失踪

翌日の朝、進三郎が起きると、いつもと違う雰囲気に気づいた。

リビングに向かうと、いつもなら朝食を準備してくれているはずのメルの姿がなかった。


「……メル?」


寝ぼけた頭で部屋を見回しても、彼女の気配はどこにもない。

机の上には彼女がよく使っていた雑誌やメモ帳さえ綺麗に片付けられ、まるで最初から存在していなかったかのような不自然さに、進三郎の胸に不安が広がった。


「どこに行ったんだ……?」


慌ててスマートフォンを手に取り、メルにメッセージを送ろうとしたが、よく考えてみると、メルがスマートフォンを使っている姿を見たことがなかった。

彼女に連絡を取る手段など、そもそも存在していなかったのだ。


ドアを開けて玄関を確認しても、彼女の靴はなく、家のどこにもその痕跡は見当たらない。焦りに駆られて外に飛び出し、周囲を探し回ったが、メルの姿を見つけることはできなかった。


進三郎は学校に行く気力もなく、ただリビングでぼんやりと座り込んでいた。

メルが何も言わずにいなくなるなんて、あり得ない。いつも明るく自分のそばで笑顔を見せ、日常を支えてくれていた彼女が、突然消えるなど想像もしていなかった。

気を紛らわせるように進三郎はスマートフォンを手に取り、何気なくYouTubeを開こうとした。

だが、画面には「エラー」の文字が表示され、アクセスできない。次にニュースサイトを開くと、そこには意味不明なC国の言語のような文字列が並んでいた。


「……なんだこれ……?」


異常事態を感じつつも、進三郎は何が起きているのか理解できなかった。そのとき、スマートフォンが振動し、父からの着信が表示された。

普段は滅多に連絡を寄こさない父からだった。進三郎が応答すると、電話越しから聞こえてきた声は、いつもより緊張感に満ちていた。


「進三郎、インターネットはもうダメだ!ネットの情報は一切信用するな!今、日本は――」


父が何かを言いかけた瞬間、突然電話は切れた。慌ててかけ直そうとしたが、何度試しても接続できなかった。スマートフォンの電波は立っているのに、全く繋がらない。


テレビをつけると、そこには緊急ニュースが映し出されていた。

「速報です。C国がT国への大規模な侵攻を開始しました。同時に、K国がD国への攻撃を仕掛けた模様です。国際社会は緊急対応に追われています。」

画面にはT国の都市で爆発が起こる映像や、D国の国境付近で兵士たちが慌ただしく動く様子が映っていた。進三郎はその場で固まった。


「本当に……戦争が起きてるのか?」


さらに耳を疑うニュースが続く。

「日本もサイバー攻撃の標的となり、多くの政府機関がシステムダウンを起こしています。ニュースサイトやSNSがハッキングされ、フェイクニュースが拡散中です。国民の皆様には冷静な行動をお願いいたします。」


進三郎はスマートフォンでニュースサイトを開こうとしたが、どのページもアクセスできない。かろうじて開けたページには、真偽不明の見出しが並んでいた。

「日本政府が反撃を開始!」

「沖縄占領か!」

SNSを確認すると、そこはさらに混乱していた。

「おい、東京が次に狙われるらしいぞ!」

「政府はもうダメだ……誰か助けてくれ!」


進三郎はその異常な光景に息を呑んだ。

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