第2話 メルのLINE大作戦(前半)
進三郎は、いつものように自分の部屋で考え込んでいた。パソコンサークルの嫌な奴、高橋のせいで気分が沈んでいたのだ。彼は、何度も心の中で「どうにかして高橋に仕返ししてやりたい」と思っていた。
その様子を見ていたメルが、そっと進三郎の隣に座った。
「進三郎、また高橋に何かされたの?」
進三郎は少し困った顔をして答えた。
「あいつ、ほんとウザいんだよ。俺をバカにして、周りの奴らもそれに乗っかるんだ。何とかしてやりたいけど、どうしていいか分からない…。」
メルは小さく微笑みながら言った。
「じゃあ、私が彼の注意を引いてみようか?LINEで。」
進三郎は驚いてメルを見た。
「LINEで?どういうことだ?」
メルは自信満々に言葉を続けた。
「私が高橋にLINEを送るの。ちょっとだけ気を引いて、彼を混乱させてみるのはどう?」
進三郎は半信半疑だったが、メルの提案に興味を持った。
「でも、バレないか?俺たちがやったって…」
メルはウィンクをしながら答えた。
「心配しないで。LINEの送信元も完全に偽装するから、絶対に私たちだと分からないよ。」
「それに、私なら、彼のSNSやLINEの履歴を分析して、引っ掛かりやすい文面を作成できるよ」
進三郎は少し考えたが、メルの提案を受け入れることにした。
「…わかった。やってみてよ!」
メルはニッコリ笑って「任せて!」と言い、すぐに行動を開始した。
その後、メルは一瞬でLINEを作成した。
LINEの出だしはこうだった。
「あなたのことが気になっています」
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LINEの内容:高橋さん
あなたのことが気になっています...。突然のLINEで驚かせてしまったらごめんなさい。でも、どうにも我慢できなくて、LINEしてしまいました。
私はあなたのサークルでの姿をいつも見ています。特に、素敵な笑顔でみんなを和ませるところ、パソコンにちょっと詳しいところとか、とても素敵だと思います。
実は、ずっとあなたに話しかけたいと思っていたのですが、勇気が出なくて…LINEをすることにしました。よかったらお返事をください。
あなたのファンより
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「これで彼の興味を引けるはず。」
高橋はすぐにLINEを読むと、驚いた顔をした。
「なんだこれ…?俺のファン?…まぁ、俺がモテるのは当然だけどな!」
高橋は嬉しそうにLINEを何度も読み返し、サークルでそのことを自慢げに話し始めた。
高橋はスマートフォンをニヤニヤして見つめながら、LINEに返信するかどうか迷っていた。
彼の頭の中では、自分が誰かに憧れられているという事実がどんどん膨らみ、自信がさらに高まっていた。
「俺のことが気になってるって…。でも、これ誰だ?うちのサークルの女の子か?それとも、他のサークルのやつか…?」
高橋は何度もLINEを読み返し、ついに返信することを決めた。
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LINEの内容:こんにちは、LINEありがとう!
まさか俺にこんなLINEが来るなんて驚いたけど、正直嬉しいよ。
俺の笑顔を褒めてくれるなんて、君は俺の魅力がよく分かってるね。
君がもっと俺のことを知りたいなら、教えてあげるよ。俺はいつもみんなを楽しませるのが得意だから、そういうところが好きって言ってくれたなら、それが俺の魅力だよな。
よかったら、もう少し君のことも教えてくれないか?
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LINEを送信した高橋は、ドヤ顔でスマートフォンをポケットにしまいながら、サークルの友人たちに話を振り始めた。
「なあ、俺のことが好きな子がいるみたいなんだけど、誰だと思う?これ、たぶんサークルの誰かだよな?」
友人たちは、高橋の根拠のない自信にいつも呆れながらも付き合っていた。
「高橋、お前、また自分で勝手に盛り上がってんじゃないの?」
「いやいや、本当にLINEが来たんだって!ほら、これ見ろよ!」
高橋はLINEを友人に見せたが、その内容を詳しく話すのは恥ずかしかったのか、ざっくりとしか説明しなかった。
メルは、高橋の返信を進三郎に見せながら、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「ほら、やっぱり引っかかったわね。思った通り、すごく調子に乗ってるみたい。」
進三郎はその返信を見て、苦笑した。
「こいつ、本当に単純だな。でも、ここからどうするんだ?あいつに恥ずかしい思いをさせるには、何かもっと強力な仕掛けが必要じゃないか?」
メルはうなずきながら、新たな作戦を考え始めた。
「次は彼をフィッシングサイトに誘導するわ。そこに彼が書き込む内容が、あとでちょっと恥ずかしい思いをさせる材料になるはず!」
進三郎は少し心配そうにした。
「大丈夫か?やりすぎじゃないか?」
「安心して。彼が自分でやらかすだけよ。私たちは、きっかけを作るだけ。」