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9話~冒険者ギルド

クロエは逃げ、ゴブリンロードは見逃した。お互いに勝てる見込みはあれど損失を嫌ったゆえの決断だった。

互いの距離が10キロほど離れたあと、ようやくクロエは倒れた倒木に腰を落として溜息をついた。


『本に書いてあることがすべてじゃないのは知っていたけど、すごかったなあのゴブリンロード』


「倒さなくてよかったのですか?」


クルミとしては敵対するものは全て排除するよう組み込まれている以上、敵となりうる可能性の高いゴブリンを見逃すという選択肢は無いと考えていた。クロエはクルミの問いに対して首を振って


『あれだけの群れを率いている以上、単純な力比べに収まらない可能性もあるからね。それにここで足を止められるわけにはいかないから』


「そうですか」


クルミは表情を変えないまま、興味もなさそうに返答する。主人であるクロエが戦わないと判断したのであればそれはもう敵ではない。そうなれば次の目的である遠くに見える街に視線を移す。


冒険者ギルドが統括する街【フォース】

街の出入りにも物の売買にも税金がかからない、そして互いに監視しあうために事件などもめったに起きない。しかし宿はあれど家は無くギルドの職員以外は2週間もすれば顔ぶれが変わってしまうほど移り変わりが激しい。ゆえに文化というものが定着しづらく、街並みに統一感が無い。それでも一番しっかりとした作りの冒険者ギルドはその建物だけでなかなかの威圧感を放っていた。


クロエとクルミが冒険者ギルドへと入ると一瞬すべての視線が二人に集まった。見るからに軽装の二人で片方が背の高く痩身な男でもう片方が顔が左右完全対象の美少女だ。視線をとられて当たり前、だがそれらは数秒ほどして霧散する。冒険者ギルドに足を運ぶ者の大半は訳ありだ、それだけでも関わることはためらわれるのに、軽装で片方は女とくれば問題を抱えていることは容易に想像できる。もしそれらが依頼主であれば自分らに仕事が回ってくるチャンスであり、同業者ならいずれ縁があると考え下手に行動を起こさない。


まぁそこまで頭が回るものもいればそうではない者もいる。


クロエは事前に打ち合わせし、クルミに会話を一任していた。


「冒険者登録をしに参りました。手続きを2名分お願いします」


無機質で抑揚の無いクルミの声に受付をしていた女性は最初言葉の意味を理解できず一瞬立ち止まってしまうが、理解が遅れてやってきたようで、受付カウンターの下から紙を2枚取り出した。


過去に召喚した異世界人のおかげでもあってクルミにもなじみ深い真っ白な紙。そこには自身の登録名と得意分野、使える魔法や加護について書き込む欄があり、登録名は偽名でもよくそのほかについての記載は任意となっていた。


「文字を読むことは可能でしょうか?」


受付の女性は声をかけると、クルミは頷いて返答した。30歳前後の受付の女性は上品なしぐさをしているが一定の武術にたしなみがあるようで、手にはそれなりの傷や剣を振った跡が見られた。


「簡単に説明します。こちらの紙に記載されたことがギルドで共有されますと、仕事が斡旋されやすくなります。そのため記載量が多いほど指名依頼も多くなりますが、それに伴って虚偽の申請をすると依頼の失敗率も上がり依頼未達成による負債を抱えることも増えます。また名前に関しましては自由で構いません。」


その話を聞いた上で、クルミは自身の名前をクルミとし、徒手格闘や武器による戦闘が得意だと記載した。対してクロエは【クロ】として記載し、魔法に関しても全属性の中級魔法が無声にて発動可能だと書いた。これも全て事前の打ち合わせ通りだった。冒険者登録の際には3つの基準のうち1つを満たす必要がある、1つ目は財力、一定の金額をギルドに寄付すること。2つ目は知力、筆記試験と面接を行いギルド職員から合格をもらう。最後3つ目は武力、これはギルドごとに内容は変わり、職員との戦闘若しくは指定された魔物を討伐し討伐証明部位を提出したりする。


「試験内容は、クロ様が筆記試験クルミ様が実技試験とのことですね。どちらの試験も本日受けることができますがいかがいたしますか?」


2人はその問いに頷いて答え、それぞれ20分ほどで準備ができるとのことで、ギルドの壁に貼り出されている依頼書を眺めることにした。依頼書の並びはランクごとに分かれており、高い位置にあるものほどランクは高くなっている。Aランク位になると手が届きそうも無い。そもそも依頼書自体に魔法による座標固定がなされており、外すにはカギとなる何かが必要そうだとクロエは感じていた。


「マスターが森の中で倒していた獣型の魔物討伐はFランク以下の依頼に当たるんですね」


綺麗な絵とともに常時依頼と書かれたそれは、獣型の魔物を討伐しその死体そのものを引き取るというものだった。魔物の強さ的に言えばかなり差があるが恐らく食肉目的の依頼だろうそのためか、依頼達成時の報酬が肉の重さで算出される仕組みとなっていた。


クロエはひとまずすべての依頼書を見まわしたが、ゴブリンに関しての依頼書は1枚もなかった。


「もう受かった時の依頼探しかい?ずいぶんと余裕だね」


そう言ってクロエたちに近づいてきたのは、クロエよりは小柄ながらも周りと比べると高身長で顔立ちの整った男だった。頭に黒色のバンダナを巻いており、バンダナからは魔力の気配を感じ取れた。魔法具と呼ばれる分類だろうが、保有している魔力量の少なさから、大した効果が無いだろうとクロエは視線を男の顔に戻す。


「このバンダナ気になっちゃう?そうだよねこれが、冒険者憧れのマジックアイテムだよ。効果は秘密だけどね」


軽薄そうな話し方に一瞬兄の顔が浮かぶクロエだったが、それよりも数百倍は接し易いと考えつつ表情に負の感情が浮かばないように努めた。バンダナ男は気が付いていないが、二人が着ている服もまごう事なき魔法具(マジックアイテム)であり、性能を比べれば、バンダナは布切れも同然だった。


「試験の準備ができたのでしょうか?」


クルミがバンダナ男に話しかける


「まるで貴族様に仕えているような話し方だね、顔もきれいだ。でも一切魔力を感じないね。どう僕の愛人になってみないそうすれば安泰にくら」


言葉の途中で言葉が途絶えた、バンダナ男がクルミの肩に触れようとした瞬間、床にたたきつけられたからだ。


「ハラスメント警告です。次は排除します」


無機質ゆえの冷たさや鋭さが言葉に込められていた。こちらの様子をうかがっていたほかの冒険者も驚きに口を開いている。


「今のなんだ?気づいたらバンダナの奴が床に突っ込んでたぞ。あのねぇちゃんがそれをやっとのか?」

「あのバンダナの首にあるタグって金だよな。しかも8って」


と周りがざわざわと騒ぎ立てる、どうやらクルミが一撃で倒したこの冒険者の実力はかなり高いようで、先ほどとはまた別の注目がクルミにあつまった。


「僕の誘いを断るだけじゃなく、顔に傷まで……俺は試験管だぞ、俺の気分次第で合格不合格にできるんだぎゃっ」


立上りながら息巻いていたバンダナ男がまたしても床に突っ込んだ。今度は先ほどよりも深くめり込み床が割れて建物の土台が見えた。それでも下に向かうい勢いは止まらず、指先一つ動かすこともできないようだった


「マスターありがとうございます」


『不快すぎてつい、な』


「今度はあの大男か?重力魔法なんて上級魔法を詠唱無しで発動させたのか!?」

「んなわけねぇだろ、無声で上級は不可能なんだよ。よくみてみろよあれ、上から空気の塊をぶつけてるんだ。」

「ってことは風属性魔法の下級【空気弾】ってことか?」

「あれの1000倍くらいのサイズをずっと維持し続けてる感じ」


またしても周囲が語り出す。そして至った結論が非現実的過ぎて別の考えをするもどれも似たような結果となり、話題の中心となる二人の実力を実感した。


「ところで試験はどうなるのでしょうか?」


クルミは押しつぶされているバンダナ男などもうすでに視界にも入っていないようで、事前の打合せと大きく異なろうとしている現状をどうもとに戻そうか思案を巡らせていた。

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