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5話~加工魔法

使い手が少なく、魔力消費量の大きさから使用者も居ないとされる転移魔法、知識としてはクロエにもあるがどれだけ研究しても人間を転移させる魔法は発声魔法と記述式魔法でしか発動することは難しく、記述式魔法であれば10日ほどは要するため実用的ではない。


「初めて使ったが上手くいったな」


草原と森の境目のような場所で全裸の少女と汚い布を巻いた高身長の男、そしてセントラル国の国軍であることを示す青い生地に七本の剣が描かれた国章が刺繍された服に身を包んだ3人が立っていた。


『3人同時の転移、本来ならそれぞれの存在値を固定する必要があるからかなり難しいはずなのに、それを一度で成功させたんですね』


ぼろい布を体に巻きつけているだけの痩身の男、クロエが魔法によって生み出した光の文字で話す。


「そこは長年の勘というものだな」


自身ありげに返すのは、世界最大の国家であるセントラルの国王直属魔法師団の団長である既に70を超えた老父。


『いえ、混じりました。マスターの体内には2%程、彼の体にはマスターの4%ほどの肉体が混入されました。私は物として認識された為、衣類などの装備品がわずかに混入しておりいくつかの機能に損傷がありますが、非常に軽微なため自己修復可能です。またマスター達のほうも問題は無いと判断します』


老父に対して観測できた事実を告げたのは、衣類を身に着けず隠そうともしない少女だった。この世界の人間と比べると顔の堀は浅く、顔立ちは体型よりは幼く見えたがどの基準で見ても美少女であると言えた。少女の名前はクルミ、異世界で作られた機械仕掛けの人型兵器


空間転移であれば、目的の地点までの空間を直接つなぐがそれよりも下位の魔法である転移魔法は、対象者を粒子のようなサイズにして物理的に運ぶため、それぞれの物や生き物をしっかり固定しなければ、今回の用に混ざることもある。世界各国で使用されている記述式転移魔法陣はその辺りがしっかりと記述されているため、使用時にかかる費用や魔力は莫大なれど、事故が起こることは無い。であれば空間魔法のほうが圧倒的に利点があるが、残念ながら魔法師団長でもクロエでもその存在の糸口さえつかむことさえ出来ていない。


「うまくいってよかったよ」


苦し紛れにそう言い放った魔法師団長の顔をクロエは目を細めてジッと見つめた。


「そんなことより、転移したとは言えまだセントラル国からそれほど離れて居ないし、私たちが転移し始めてからすでに30分は経過した。そろそろバレてもおかしくはない。」


転移魔法の対象となった者の間隔では数分程度の時間経過だが、実際にはそこまでの移動を粒子になって行っているため障害物を考慮せず直線距離を走っているのと同程度の速度で移動をしているのと変わらない。そもそも再構築される地点も魔法を理解している者なら容易く感知されてしまう為戦闘には全くの不向きであると言わざるを得ない。


「だがその恰好では不便だろう、私も含めてな」


魔法師団長の服装は誰から見てもセントラル国軍であると分かる見た目をしている。それこそ遠方から見ても丸わかりだ。それにセントラル国内部は優れた技術によって全域が過ごしやすい環境に整えられて居るのに対し、ひとたび国外へ出ると容赦の無い日照りにさらされている。


『汗が凄いですね』


「君たち二人が涼しそうにしている事のほうが驚きだよ。まぁ私は厚着るをしていたからな脱げば多少はマシになるだろう。クロエなら【加工魔法】は使えるんだろう?」


普通の人間ならこの環境で汗をかかないことは異常なのだが機械であるクルミは汗をかく必要は無くクロエは、ほぼ無意識化で行っている訓練によって暑さを凌いでいた。


『いいんですか?』


「どうせ私にはもう不要なものだ」


魔法師団長から渡された衣類を受け取った。魔法師団長の証さえも脱ぎ捨てた老父はその辺に居る人間と対して区別が付かないようになり、そして


「旅をしていればいずればまた会える日が来るだろう。私はやりたいことが出来た、二人の旅路に幸多からんことを」


その言葉を言い残して元魔法師団長の男は北のほうへ歩いて行った。その様子を見送りながらもクロエは受け取った服に加工魔法を施している。加工魔法とは無属性に分類される特殊な魔法だ。特殊とはいっても大抵の魔法師であれば使用する事が可能で装飾などの細かいことを抜きにすれば布を好きな形状に変化させることができる。等級でいえば下級と中級の間あたりに分類され、クロエでも無声式にて発動出来た。


しかし、ほかの魔法師がそれを見ていたならば目を疑いたくなる光景が繰り広げられた。自身の権威を象徴していた服が形を変えていく様を見たくなかった元魔法師団長は足早に去っていったが、既存の物とは大きく異なるクロエの加工魔法を見なかったことは当人にとって損以外の何物でもなかった。


受け取った服は国章等の刺繍を含めて糸に変わった。それもどこにも継ぎ目のない1本の糸に。そしてそれらは独りでに風になびくように揺れ少しずつ布へと変わっていく。それと同時に一本の糸にはクロエの魔力が染み込む。ただの糸が魔力をもった魔糸(まし)へと変貌していた。そして更に2分ほどが経過した頃にはまず1着のシャツが出来上がっていた。特筆できるような意匠もなく柄もない、真っ白なシャツ。そして更に自身の来ていた布切れもその糸の一部に変化させていく。


最初に作ったシャツをクルミに渡す。少しサイズが大きいように見えたが次第に大きさを変えていき最終的にはワンピースのように変わった。顔立ちが良いだけにそれだけでも様になっているのはクロエから見ても明らか。一瞬ようやくまともに見ることができたクルミの全貌に見惚れかけたが、時間が無いことを思い出し加工魔法に目を向ける。自身の着ていた布を含ませた事で糸の品質が低下したが、作れる布の量を考えるとこうする他はないがほつれや傷などが無い新品同様のシャツとズボンが出来上がった。今出来上がった服をクロエが着用してもサイズ等が変わったりせず、それでも自身の体型にピッタリだった。


一度変化した服はその形で固定されるため、体格が変わった時はまた作り直す必要があるが、今現状の段階で二人の……とくにクルミの服は国宝クラスである。


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