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3話~少女の寝起き

丸一日経過してクロエはようやく目が覚めた。きょろきょろと見回して自身の現在地を探っていた。するとその横で椅子に腰かけて眠っていた魔法師団長も目を覚ます。


「目が覚めたか、魔力は戻ったか?」


『はい、……召喚魔法はどうなりましたか?』


「単刀直入に言う、召喚は失敗した。異世界から呼び出されたのはただの死体だった。」


『そう……ですか』


魔法師団長の言葉によりクロエはあからさまに表情を曇らせた。まるで涙に声を震わせるように光の文字も揺れていた。


「だが落胆することはない、君さえ良ければ私の元ではたらいて欲しい「おじゃまするよー」何事だ!?」


魔法師団長の言葉を遮るようにして入ってきたのは、国王直属兵士の一人で世に12本しかない聖剣の内【火】を司る聖剣所有者であり、ドラフレア家の長男だった。誰も信用していないような細く疑るような視線にこれでもかと真っ赤な髪を後頭部でまとめてゆらゆらとさせる。次期ドラフレア家の当主になる男だが雰囲気は軽率


「そんなに睨まないでよ魔法のじいさん。それよりお前やっちまったな、国王が激おこだよ。死体を呼ぶために時間を与えた訳じゃないってさ。まったくお前の目覚め如きを聖剣保有者である俺様が待たなくちゃいけないとか、どんな拷問だよって思ったが、お兄ちゃんとして最後にエスコートしてげるよ」


『なにを言ってるんですか?』


呆けるクロエに対してドラフレア家の長男は気味の悪い笑みを浮かべながら


「お前死刑だって」


そう告げた。その直後ドラフレア家の長男はクロエをお姫様だっこするような形で抱きかかえ、優雅な姿勢で歩き出した。先ほどの言葉に絶望した様子のクロエは抵抗する力も無くただ身を任せるように運ばれていった。そのあとを魔法師団長は慌てて追いかける。


この国は死刑という判決はしない、だが人間以外であれば関係は無く、死刑と決まったという事はクロエの記録は全て抹消され初めから居なかった事にされたという事だ。そうなればこの国に居場所は無く外に出される事もない。


「王様~お荷物をお届けに上がりました~」


王に対しても態度を変えることはないが、それを咎められる者はおらず、王自身がそれを認めているため異を唱える者が居るはずがなかった。


「私がお前の存在を知ってから12年も待った、異世界召喚さえ成功すればゴミに爵位を与えるとまで約束をした。にもかかわらず出てきたのは女の死体」


王は椅子に深く腰掛けながら、溜息とともにそんな言葉を吐き出した。クロエは王を前にして尚意識が定まっておらず、その不安定さが光の文字にも現れ読めるようなものにはなっていなかった。


「魔力の量やその技術に秀でた点があることは認めよう、だっがっなぁ、この私の期待を裏切ったことは重罪なんだ。だから」


そう言葉を途中で止めると、クロエの後ろにいたドラフレア家の長男に目くばせをした。すると今度はクロエを小脇に抱えた。


王がいた部屋を出るとそこには召喚された女の死体が落ちていた、雑に放り投げられたようで、召喚されたときと同じで服を着ていないが召喚時と違ったのは髪の長さだろうか腰まであったのが今では肩ほどにまで短くなっていた。


「はぁーあ、生きていれば俺の愛人にしても良いくらいの美人なのにな。よっと!ってこの体格でクロエより重いのかよ」


召喚された少女もクロエとは逆側の脇にかかえ悪態をつきながら歩き出す。二人の人間を抱えていてもその足取りに重さを感じられなかった。火の聖剣に認められた存在、クロエが順当に成長していれば手にできていたかも知れない力。だが今のクロエにとってそれはどうでもいい事だった。王に向かって抗議をしている魔法師団長の声も届いて居なかった。


向かう先はゴミ捨て場と呼ばれる城の中でもほとんど人が寄らない場所。ただただ高い塔がそびえたっており中には階段どころか昇降設備が一つもない。たった一体の龍を住まわせて置くだけの場所だ。


そこには毎日数十キロの肉が落とされる、この国で人ではないと判断された者の肉


「このセントラル国で大事にされてる【雷龍】のごはんになれるんだ、ゴミにしては大出世だな。それじゃあ」


誰かに見送られる事なく、それだけの言葉を最後にクロエと召喚された少女は宙を舞った。塔の頂上付近から下までの自由落下、ぐんぐんと速度を上げて落下していく。このまま地面にぶつかれば肉片となる。だがそれよりも先に、雷龍によって程よく焼かれる未来がクロエには見えていた。


着地点に居る巨体の龍がこちらに向けて大きな口を開けていたからだ。いつもならばそのまま丸のみすることもあったが、クロエの魔力量に気付いたのか、殺してから食べる事を選んだようで、口からは(いかずち)の力を込めたドラゴンブレスが放たれた。


直撃の前に細かな電流が肌に刺さる、それだけで所々が小さな火傷になる。普通なら肌が真っ黒になるような威力のはずだがクロエにとってはその程度だった。しかしそれも本体が当たれば等しく絶命する。上位の龍とはそういう存在だ。


重さの関係で、先に直撃したのは異世界から召喚された少女の死体のほうだった。そしてそのあと衝撃波クロエを襲う


はずだった


強力なドラゴンブレスは少女の手によって存在を無くしていた。そして少女は地面に落下するとすぐに体勢を立て直し、手を図上に数倍に伸ばしてクロエの事をキャッチした。少女は自由落下のまま着地し、クロエの事は衝撃を受け流すように優しく受け止めた。ドラゴンブレスを吐いた本人は何故自身の攻撃が消えたのか理解できずに、降り立った二人よりも自分が攻撃した方向にばかり注目していた。人間は脆弱で今まで敵が居たことが無いという油断がそうさせていた。


「充電が完了しました、現状の把握結果、排除対象を確認。排除してもよろしいですか?」


抱きかかえる少女から聞こえたのは、少女のような声音でありながらも抑揚のない音で、クロエは言葉の意味を理解するのに数舜固まった。


そして頷くのと共に光の文字で『はい』と返事をしたのはほとんど考えて居なかった。絶望感に襲われていたクロエだったが死にたいわけでは当然無く、無理だと頭の隅で分かっていても頼れるものには頼りたかった。


「了解しました、排除開始します」


少女の言葉と共に右手首が開いた(・・・)クロエの視点からであれば突然少女の手首が折れたように見える光景に違和感を覚えるがその次に起きたとてつもない爆発に思考の全てが奪われた。クロエを抱きかかえたまま手首から吐き出された玉を未だに虚空を見つめている雷龍の顔に直撃する。クロエの頭にあるドラフレアの上位魔法さえ霞むような爆発は雷龍の首を吹き飛ばし絶命させた。


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