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2話~異世界召喚陣

クロエが異世界召喚陣の記述が完了したことは魔法師から伝えられた。本来であれば大量の魔法師を必要とする魔法のため1人で半年という短期間であれば褒められるはずの事だが、それに関しては「やっとか」という言葉だけで終わった。


一人の魔法師として若く才能があるダイヤの原石さえ見劣りするようなクロエという存在を理解されないもどかしさを感じながらも魔法師は自身を国王の犬であることを理解しているため反論はしない。この召喚陣が成功した時はクロエを部下としたという思いを胸にしていた。魔法師から見ても術式は完璧だった。記録上でしか見たことが無い召喚陣ではあるが、それらがどれも稚拙なものだと感じるほどに洗練された術式が城の地下に刻まれていた。


完成の報告を受けて数時間後地下には国王をはじめとするする口の重鎮や魔法師、兵士、そしてドラフレア家の現当主であるクロエの父の姿もあった。だがその視線はクロエには一度も無事はなく、ただ疑心の目が術式に注がれていた。魔法師を名乗る者ならばこの術式の凄さに気付かない訳はないが、誰一人としてクロエに賞賛の言葉を与えるものは居なかった。記述式魔法はいずれ廃れる、発動に時間がかかり迎撃にも不向き、発動には記述者本人が魔力を直接注ぐ必要があるという事で、率先して研究される事が無くなった原因で、クロエの凄さに気が付かない原因でもあった。


魔法を極めようとする現魔法師団団長の男だけがこの場でただ1人クロエを心で褒め称えていることは誰もしらない。


国王がドラフレア家当主に声をかけると「クロエ」とだけ名前を呼び顎で合図をした。クロエはその態度に何ら感情を揺さぶられることなく魔法陣に跪いて両の手の平を地面につけた。


高密度の魔力が溶岩のようにどろどろとゆっくり注がれていく。あまりにもゆっくり進む様子に苛立ちや嘲笑を浮かべる者もいるが、魔法師団長からしてみればそれこそが滑稽だった。


魔力を流し込む速度が速いほど魔法の発動は速くなる。魔法に関して触れたことがあれば、それこそ子供にだって分かる問題である。

だが速度を追求しすぎたことで魔力のロスが発生し本来なら少しの魔力で済む発動も、数倍の量に膨れ上がることもよくある。そしてそれは記述式をはじめとする全ての魔法発動でも言えることだった。


魔法師団長は趣味が魔法と呼ばれるほど魔法について研究してきた男で自身の魔法研究に関しても一切手を抜かない、そして長年の研究で身に着けたのは魔力のロス率3%以下の高速起動の上級魔法であり、その技術力を買われ現在の地位に居る。


だが目の前でクロエが行っているのは、0.1%のロスもなく魔法陣へ魔力を満たす方法、高濃度の魔力を留めまるで液体のようにする、一つ一つの技量をとっても魔法師の歴史を変えるような技術だった。


クロエの力を皆に理解させることが、自分の役割だと魔法師団長は心に決めた。


記述式魔法において魔力注入は最終段階であり最大の難所であった。集中力一つ乱せば満足に発動することもできない。


クロエの魔力注入が始まって30分が経過した、魔力はまだ半分程度しか満たされて居なかったが、苛立っている者は誰一人として居なかった。いや、正確には居なくなっていた。


人が使用できる魔力量の限界は個人差があれど、大体は分かっており、戦闘経験がある者ならば経験で分かる。しかしクロエから滾々と湧き出る高密度の魔力は途切れることなくずっと出てきている。その量は既に一般的な魔法師の100人以上にも達していた。


圧倒的な高密度の魔力に全員が息を飲む。

ここでドラフレアの当主が違和感に気付く、ここにいる全員にそれぞれ結界が張られている事に。当然ながらそれはクロエの術式に寄るものでドラフレア当主はそれがなんの為かとクロエに声を掛けようとしたとき、魔法師団長がドラフレア当主に声を掛けた。


「なりませんよ、ドラフレア当主。」

「だが、このような結界は召喚陣には不要だ、何らかの目的があるに違いない」

「クロエ君が言うには過去の記録の中で召喚時に発生した衝撃波や召喚された者による被害があったとあり、それに対応するための結界がこれとの事です。」


結界は物理的にも魔法的にも強い物になっているのはドラフレア家当主の目から見ても明らかだった。これ以外にも召喚陣の外にいくつかの魔法を発動させてはいるが気付かないのであればいう必要が無いとばかりにこれ以上誰も口を開くことはなかった。


術式の魔力が完全に満たされた瞬間、魔法陣は金色に輝いた。その光はとてつもない光量で結界による軽減も意味をなさずその場にいた全員の目を眩ませた。過去の記録にはなかった事象であり、クロエの予想外の出来事であった。それゆえに何が召喚されたのか見届けることは出来ず、魔力が切れたことでクロエは意識を失った。


その場にいたものがそれぞれ視界を取り戻すと、地面を埋め尽くしていた魔鉱石は魔法陣ごと消え去っておりその近くにクロエとは別の人影が倒れていた。


魔法師団長だけがクロエへと駆け寄り状態の確認をする。ほかの者はクロエには目もくれず倒れている異世界から召喚されたモノに注目していた。


召喚されたのは15歳程の小柄な少女だった、からだつきは細いが肉付きはそこそこ、髪の毛は美しい黒髪で腰の丈まである。しかし服は身に着けておらず何より生きている感じがしない。魔力の気配も無ければ生命特有の気配さえ無い。体は冷たくそして異常なまでの重量があった。国王がその死体のような少女を兵士を使って運ばせる。その隙をついて魔法師団長はクロエを医務室へ連れて行った。


単純な魔力欠乏症のため、安静にしていれば治るのだがそもそもの魔力保有量が多すぎる為、既存の回復薬などは効果をなさず自然回復させる以外の方法はなかった。それでも魔法師団長がクロエを医務室につれてきたのは、あのままではあの冷たい場所に放置されることが分かり切っていたからだ。


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