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第7話 勇者

〈sideルーク〉


 これからフォームという街に行くことになった僕は、ひとまず歩き始めた。出来る限り人目を避けるため、今までいた街、ルーベに戻る訳にはいかなかった。

 よって、僕らは街道に沿って歩いて向かうことになる。何とか馬車に拾われないかと思わなくもないが、お金のない僕らを拾ってくれるのは余程の善人くらいだろう。

 何の準備もなく野宿とか、正直に言うと不安しかない。ただ、街で僕が生きていることがばれると命が危ないのは間違いないんだよな。もちろん人殺しは犯罪だが、抜け道なんて多々ある。僕が狙われると一瞬で死んでしまうだろう。⋯⋯フィールが守ってくれる?一瞬そう考えたが、フィールが離れる瞬間もあるだろう。その瞬間を狙われたらどうしようもない。


「あの?どうかしました?」


 考え込んでいる僕にフィールがそう問いかける。完全に考え込んでいて、他のダンジョンへ行こうと言ってそのまま立ち続ける変人になっていた。


「あぁ、ちょっと考え事をね」


 真実なのだけど、少々無理のある返しをする。ただ、フィールはそれを気にする様子はない。


「じゃあ、出発しようか」


 一応僕はそう声をかけた。僕にもフィールにも荷物はないのでこの声掛けに意味はないのだが⋯⋯。

 それから、僕らはダンジョン前から街道へと向かっていた。⋯⋯今までダンジョン前で何もせずに話し合っていたのか。変人と思われそうな行動だったけど、周りに誰もいなかったのでセーフということで。

 ダンジョンから街道は少し獣道をたどったらすぐだ。ダンジョン前まで道を整備しろよという冒険者の声は後を絶たない。だというのになぜか整備されない。

 一部のダンジョン神秘主義の人々がダンジョンの周りには人が介入してはいけないと言っているのだとか。⋯⋯正直に言って意味が分からない。ダンジョンはダンジョンだしフィール曰く装置の一種らしいのだ。そんな人工的感あふれるものに神秘を感じるものか。まあ、フィールの話も本当だという保証もないのだが⋯⋯。個人的には信憑性は高いと思う。それに、フィールがそんな嘘を言う理由がない。フィールは学者というわけではないし、まあ何か隠しているだけかもしれないが。

 さらに、教会までそれに同調しているのだからたちが悪い。教会は、どちらかというと神を信仰するというより、話を語り継ぐためという目的が強い組織だ。とはいっても、王家に次ぐ権力を持っている。挙句、王家とのかかわりも深い。

 その物語の中でもっとも有名なものは勇者の話だろう。勇者というのは数百年前、突然現れた化け物を倒したという救世主である。勇気ある者という意味の勇者がどうして救世主につけられたのかは不明だ。ともかくとして、この話の知名度はかなり高い。そのため、子供の頃は勇者にあこがれる人が多い。大人からしても、教育に悪い話ではないのでどんどんと広まっていった。結果として、この話は国民は知らない人のほうがはるかに少ないくらいの知名度を得た。結果、協会はこれを起点として財を成した。王家もそれにあやかっているためかなり深い関係がある。

 物語の続きはというと、勇者は国王となりその仲間たちも要職に就いたとさ、めでたしめでたしで話は終わる。もう、違和感しかない終わり方である。無理やりに話を区切らせたようなそんな印象を受ける。とはいえ、これが建国神話となっていて、王家の権力の正当性を支持している。それも、勇者の功績であって王家の功績ではないと思うのだが、この話が広まっている以上反対はしずらい。

 まあ、これ以上に何か広まっている話があるわけでもない。

 話を戻して、特に僕らには会話もなく、その獣道を抜けた。特に舗装されているわけではないが開けた道に出る。まあ、コストの面で考えると石畳にするのは難しいというのは分かるが⋯⋯。ここには特に教会は関わっていない。


「道が分かりやすいですね」


 その街路を見てフィールはそんな感想を口にする。確かに先ほどの道よりは広いが、分かりやすいのだろうか?


「歩き固めた道じゃないかな?」


 この道は特に整備しようと思ってこんな道になっているわけではない。まあ、木を伐採する程度はしているだろうがそのくらいで、ただ馬車や人が通ったことで道になっているのだ。


「⋯⋯そうなんですね」


 少し考えるようなそぶりの後にフィールはそう言った。


「そうそう。さて、こっちだよ」


 僕は今までいた街の方向とは逆方向に足を向ける。街へ続く道の先にはいくつもの屋根の姿が見えるが、その反対には道が見えるだけで建物は一切見当たらない。先の見えない道にため息をつきそうになるが、それを選んだのは僕だから再度自分に活を入れる。

 そうして、僕らはその道を歩き出す。目指す先はフォーム。旅に慣れない僕には厳しい旅になりそうだが頑張ろうか⋯⋯。


「⋯⋯ちょっと待ってください」


 勇ましく歩を踏み出した途端にフィールに制止させられる。


「旅になるんですよね?だったらせめて、この森で果実か何かを採っていくべきだと思います」


 ⋯⋯そうなのかもしれないな。お金がないならないで、準備することはあるよな。

 そんな反省をしつつ、僕はフィールに従うことにするのだった。


イ「こんな反論の余地しかない話を王権を主張する根拠にしていいの?」

宵「そこはこの物語が数百年前の出来事だからだなぁ」

イ「証拠が残っていると」

宵「勇者自体の存在は居たってなってる」

イ「勇者が国王になったっていうのは?」

宵「それも証拠が残ってるな。ただ、もともと勇者も高貴な生まれだったけど」

イ「その地位が勇者の功績で上がりすぎたと」


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