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第61話 勇者VS王

〈sideフィール〉


 マスターを逃がした私は、王に再度意識を向ける。


「おい、お前たちあいつを追いかけろ」


「「は、はい。わかりました」」


 マーガレットとデイビッドでしたっけ?先ほどまでヒステリックに叫んでいた彼らが、行儀よく返事をして、駆け抜けていく。


「いいのか?追わなくて」


「いいです。彼らにかまっていられるほど余裕はないので」


「天下の勇者様が余裕がないか、それは愉快なことだな」


「それに、マスターならあの程度の人たちに後れを取ることはないでしょう」


 マスターは私に次ぐくらいの才能がある。私がしっかりと鍛えてきたのだから大丈夫だろう。


「マスター、か?なぜそのような呼び方をする?」


「理由は特にありませんよ」


 初めの頃にマスターにも聞かれたな、と思い出す。あの時は、マスターはマスターだから以上の回答ができなかった。今も明確な答えがあるわけじゃないが、記憶も何もかもなくしてたから刷り込み的なものでマスターと呼んでいたんじゃないかなと思っている。


「まあ、そのようなこともあるのだろうな」


「あなたにバラバラにされましたからね。何が起こるかは私にもわかりません」


 バラバラにされたことで何が起こるのかなんて、流石の私にもさっぱり分からない。バラバラにされた人間なんて私以外で聞いたことないから。記憶を失ってしまうことも勇者だったころの私には想像できなかっただろう。せいぜい、肉体がバラバラになってしまうということくらいだろう。


「ここまで長い時間、お前が生きていることが我にとっては一番の想定外だ。蘇ったら龍脈を取り込んだことでこの世界で最も強いものになれる。その予定だったのだがな」


「あなたが、世界最強になるなんて認めたくもないですけどね」


「だが、勇者時代ほどお前に力がないことは幸運だったな。今のお前なら不死身というわけではないだろう?」


「どうでしょう?死んだことがないから分かりませんが、案外、何度でも蘇るかもしれませんよ」


「では、試してみるとしようか」


 そう言って、王は私に接近する。会話で時間稼ぎするのもここらが限界か……。


「どうした?隙だらけだぞ」


 一瞬で目の前に現れた王は私に向かって拳を繰り出そうとする。


「隙なんてありませんよ」


 それを予測していた私は、その拳を回避して剣で迎撃する。


「ほう?」


 その剣はあっさりとつかまれ、そのまま私ごと投げ飛ばす。


 私はそのまま壁にたたきつけられる。


 やっぱり、攻撃は通らないですか……。


「反撃してくるとは、想定外だ」


「次は当てます」


 叩きつけられた体が痛む。……が、まだ動く。


「威勢だけはいいようだ。だが、お前程度の実力では傷はつけられん」


「反撃を許したのは誰でしたっけ?」


「地力が違うのだ。いくら反撃できようとそれに意味はない」


 事実だ。いくら反撃ができても、速度も力も反射神経も何もかもで私のほうが劣っている。そんな状態ではいくら攻撃しても潰される。


「だからと言って、諦めるわけにはいきませんね」


 それでも、こいつはここで止めないとまずい。私の力ですら、この世界では規格外なのだ。それ以上の力を、思うがままに振るわせるわけにはいかない。それに……。


「それは、勇者としてか?」


「どうなんでしょうね。勇者はもう死んだんです。ここにいるのはただのフィール、ですよ」


 私の意志が、勇者だからなのか、それとも私という存在からくるものなのかは分からない。それでも、少なくともこの男は倒さないといけない。


 だから私は、その男に剣を突きつける。


「私は、あなたを倒しますよ」


 そう、宣言する。正直に言ってしまえば、勝てる可能性は低い。とはいえ、勇者であった私を見逃すことはないだろうし……。


 抗うためには王を倒さないといけない。負けたとしても、マスターは逃げきってほしいですが。


 私は地を蹴り、再度王に接近する。


「何度も言っているように、お前では我には届かないぞ」


 そう言って、王は私を蹴り飛ばす。


「うっ……」


 なんとか、腕をクロスして防御するが、それでも強い衝撃が私を襲う。


「どうした?反応が鈍いぞ」


 こっちは、今、蹴り飛ばされてる途中なんですけど……。


 王は飛ばされている私に追いつき、追撃を仕掛ける。


「身体能力が違いすぎませんかね!」


 空を蹴り、私はその追撃を何とか回避する。


「諦めが悪いようだ」


 吹き飛ばされる私に追いつけるほどの速度で動いていた王は、止まることができずに私たちの間にはかなりの距離が生じる。


「生憎、簡単に負けるわけにはいかないんですよ」


「少しでも時間を稼ごうというわけか。……あの男のためか?」


「マスターのためではないです。そもそも、先ほどから言っているように、あなたは私が倒しますよ」


 逃げるための時間稼ぎという面も当然あるが、仮に王が生きていたらマスターも、ほとんどの人間が殺されかねない。だから、最強だった私が倒さないといけないのだ。


 私は、王の背後に回って、剣を振りかぶる。


「何度も言わせるな、お前の攻撃は届かないんだよ」


 そう言って、王は拳を繰り出す。


 それを私は身をよじって、受ける。


 そうして、振りかぶっていた剣を手放し、反対の手を伸ばす。


 この男は、戦闘経験があまりにも足りていない。力に振り回されているだけだ。それでも、身体能力だけで私は不利に立たされているわけですが。


 空間からもう一本剣を取り出し、そのままの勢いで王に突き立てる。


「なっ!」


 王は驚いたような声を上げる。


 そんな隙を逃すわけにはいかない。


 あの拳の勢いを利用したからか、体はバラバラになってしまいそうだ。だけど、そんな体に鞭を打って、私は無理やりに地を蹴る。


 幸い、まだあの拳の勢いは残っている。地を蹴り、無理やりにその場にとどまり、その回転の勢いのまま、突き立てた剣を蹴りつける。


「あがっ!」


 剣は王の喉元辺りまで食い込み、私は、自分の蹴りの勢いで飛ばされる。


 さすがに、これで通用しないならまずいのだけど。


「惜しかったんじゃないか?……だが、傷はもう治ったがな」


 再生能力もそこまで強くなるんですか……。


 王は、私が突き立てた剣を引き抜き、投げ捨てる。


「さあ?次はどうする?」


宵「戦闘中の会話って難しいよね」

イ「違和感のある会話だったり、しゃべれねぇだろってタイミングだったりね」

宵「どれくらい会話を入れても違和感がないか検証中」

イ「今まで、一切の会話がないとかざらだったし」

宵「それは刺さる言葉だなぁ」


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