第57話 デート!?
あれから、数日が経った。崩壊したダンジョン内を探索し続けたわけだけど……。
「あまりにも、手掛かりがないですね」
「だね……」
フィールのパーツの行方も、なぜダンジョンが復活しないのかも全く手掛かりがつかめない。
「やっぱり、何も残ってないんでしょうか」
「どうだろう?少なくとも、ダンジョンの復活を止めている人物はいるはずなんだよね?」
「いる。と言いたいんですが、私が知らないだけでダンジョンの復活を止めるシステムみたいなものが開発された可能性も……」
「流石に今の技術でそれは難しいと思うけど」
フィールに教育を受けた身として、フィールの時代の知識と現代の知識の格差は広い。僕がここまで強くなったのもフィールのおかげと言えるだろう。
「マスターが強くなったのはマスターの才能ですと、何度言ったらいいんですか……」
フィールがため息交じりにつぶやく。
「声に出してた?」
「いえ、なんとなくそんな気がしただけです」
なんだろう、最近フィールの察し能力に磨きがかかっている気がする。
それに、感情もだいぶ豊かになったな……。
成長してるってことだろうね……。感慨深いよ。
「一旦、街のほうに戻ってみようか」
「そうですね」
「まあ、気分転換だと思ってさ」
このまま、ダンジョンの探索を続けても手掛かりを見つけられるような気がしない。さすがに集中力も尽きてきた。
「確かに、ずっと同じ景色だと飽きますよね」
……そういうことじゃないような気もするけど。
「なんだか、こうしてゆっくり街を歩くのは初めてな気がしますね」
「確かに、ずっとダンジョン巡りをしていたからね」
フィールのかけらを見つけたらすぐに次のダンジョンに向かっていた。だからか、こうしてゆっくり観光する余裕を作っていなかったな。
「マスターが気にしてしまうのも分かりますが、私としてはこうやってゆっくりしているだけでもいいんですよ」
「……言うようになったなぁ」
僕は思わず苦笑してしまう。
「マスターはあれです、善人ってやつなんでしょうね。だから、私にかまってしまう。そんな気がします」
最初は僕に追従するだけだったフィールが、そんなことを口にして少し驚く。
「善人って、買いかぶりすぎだよ」
「いえ、あのカップルの冒険者を救うようなことは私ならあきらめてしませんでしたし、そもそも……」
フィールは一息置いて。
「私の体を探そうなんてしませんよ。私は頭だけでも生きていくことはできましたし。なのに、自ら面倒ごとをしようとするなんて……」
こうして言葉にされると、僕の行動って誰かのための行動ばかりのように思えてしまう。
「そ、そうだね」
僕は、反論する言葉を持っていなかった。いや、自分をほめているような言葉を肯定するのは少しむず痒いものがあるな。
「まあ、それがマスターの美点なんでしょうけど」
フィールはそう言ってくすりとほほ笑んだように見えた。
「そういえば、これってデートってものになるんでしょうか?」
「え……」
いや、確かに男女二人で街を観光する。うん。デートと言ってもいいかもしれない。
「いやいや、デートじゃないって……多分」
言い切ることができなかった。当然、フィールのような可愛くて優しい女の子と付き合えるとなるとうれしい。
そんなことを口にする勇気は僕にはないが、フィールとのお出かけをやめたいとは思えず、そんな風な否定の言葉を吐き出すことしかできなかった。
「まあ、私には恋とかそういったものは分からないんですけど……」
「いつか分かるよ」
月並みな言葉だろうけど、フィールは順調に感情を身に着けている。だから、恋とかそういったものを知る時がいつか来るだろう。
相手は誰なんだろうか?そう考えたとき、胸がずきりと痛んだような気がした。
……今更か、僕はフィールに惹かれているんだろうな。
「どうかしました?」
気が付けば僕は足を止めていたようで、フィールが僕のことをのぞき込んできていた。
「なんでもないよ」
僕はそう言って、フィールのほうへ駆ける。
もし、もし、フィールの最後のかけらを取り戻すことができたなら告白しよう。
そんな決意を胸に秘めて。
……そんな条件整わないほうがいいのに。
どこかから、そんな声が聞こえてきたような気がした。
宵「おー!なんか作者が想定してない動きした!」
イ「……小説ってそれでいいの?」
宵「まあ、突然キャラが動き出すことってあるし、今回はプロット破壊しないいい感じの動き」




