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第56話 謎


「ここが、ダンジョンだった場所だけど、何か感じる?」


 そうして、僕らはダンジョン跡地にまでやってきていた。


「いえ……ここからだと何も感じませんね」


「分かった。じゃあ、中まで行ってみようか」


 さすがのフィールでもダンジョンに入る前から分かるわけでもないか?


「……」


「何か気になることがあるの?」


 僕が歩き出そうとしたが、フィールは足を進めようとしなかった。


「いえ……。気になるというほどのことでもないです」


 フィールはそう言って、僕のほうに足を向けた。


「そっか」


「聞かないんですね?」


「まあ、聞いても答えにくそうだったから」


 フィールが何も言わないということは、言語化しにくい感覚なんだろうし……。今のフィールなら言いたくないことが生まれていてもおかしくない。


 悪い意味じゃなく、フィールも人間としての人格が形成された。いうなれば、人らしくなったってことで。


「そうですか。まあ、なんとなく、違和感があったんです」


「違和感?」


「ここには多分、何もないような、そんな気がしたんですよね」


「つまり、ここを探しても最後の体は見つからないってこと?」


「……そんな気がするというだけで、確実にそうというわけではないですけど」


 そんな気がする……かぁ。


 フィーアが以前、行ってもどうしようもないと言っていたことを思い出した。このことをこのことを予測していたのか?


「……と言っても、手掛かりがこの場所を探す以外にないですよね」


「あー。確かにそれもそうだね」


 仮に、ここにないとして、ならどこにあると考えても分かりようがない。なら、以前あったはずのこの場所を探すことしかできない、か。


 幸いにも、唯一の崩壊したダンジョンとして一般にも開放されている。この街の観光地として、この街の発展に寄与しているわけだ。


「……しかし、こうして見ても、妙ですね」


「妙って?」


「以前、私の体を失ったダンジョンは龍脈につながると言ったじゃないですか」


「このダンジョンはどちらにもつながってないってこと?」


「そうです。どちらかにつながっていれば、ダンジョンとしての機能は維持されます」


 それが維持されていないことが異常だと……。


「無理やりにフィールの体を奪ったというわけではないんだよね?」


「……そう考えてましたが、これは……」


 フィールはそう言って口ごもる。


「不自然だってこと?」


「……そうですね。偶然、龍脈につながらなかったというより、誰かが何かをしたと考えるほうがまだ、可能性が高いと思います」


 人為的な何かが起こっていると考えたほうがいい、ということなのだろうが……。


「まだ?」


 言い切らないフィールの言葉に違和感を感じてそう聞き返す。


「ただ、これを起こすことが人間にできるのか、と言われると……」


 なるほど。その可能性のほうが考えやすくても、できると思えないってことか。


「フィールならできるの?」


「まあ、ダンジョンの根を挿す方向を変え続けるだけですからできないとは言いません」


「続けるってことは……」


「そうです。私がその場にいないとできないんですよ。その状況に合わせて調整しないといけないんです」


 ってことは、現在進行形でこのダンジョン内には誰かがいるってことか。


「誰か心当たりがあったりは……」


「そもそも、私が生きていた時代の人は生きていないと思うので」


「ああ、そうだよね」


 心当たりがあったとしてもその人は生きていないか……。


「僕もないなぁ……」


 そもそも、ダンジョンの力の根源を知っているような人を僕は知らない。


 僕もフィールに言われて初めて知ったことなのだ。一般常識ではない。


「……ただ、目的が不明ですよね」


「確かに」


 単純に考えればダンジョンの復活を阻止することだろうが……。


 それによるメリットを受ける人物は思い当たらない。


「わざわざ、一つのダンジョンがなくなったとしても、他のダンジョンに入る人が増えるわけでもないし」


 分からないな……。


「……龍脈ですかね」


「どういうこと?」


「単純に龍脈の力を取り込もうとしているのかと」


 龍脈とダンジョンの関連性を見出した人が、龍脈から力を得ようとしているってことか……。


「そんなことができるの?」


「私の力と同じで取り込むのは体がもたないと思いますけど」


 だよね……。フィールのかけらに宿る力でも龍脈のエネルギーには及ばないと言っていた。本来のフィールの力なら龍脈以上らしいが、ともかく、そんなかけらを取り込むだけでも人間は耐えられない。


 これまで、何人も取り込んで人間の形を保てなかった人たちを見てきた。


「……実際に見ないことには分からないですね」


「やっぱりかぁ」


 なんだか、闇のありそうな話が出てきそうで不安なんだけど。


 ……さすがにこんな謎は想定してなかったんだけど。


「フィール、何か言った?」


「?いえ、特に何も言ってませんが」


 じゃあ、気のせいか。フィールの声が聞こえてきたような気がしたんだけど。


「とりあえず、行ってみようか」


「ですね。行ってみましょう」


宵「えー、物語の進め方が分からなくなってきました」

イ「最近、一話一話の内容が薄くなっております」

宵「薄めたカルピスでお送りしております」

イ「最終章がそれでいいのか?」

宵「あれ、最終章って言った記憶がないぞ?」

イ「猶更問題だよ!?」


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