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第53話 パーフェクト

〈sideシーザー〉


「な、なんなんだよ!」


 俺はそいつに向かって叫ぶ。手にもっていた岩を放り投げ、相棒の大剣を手に取る。


「……危険を感知。防衛します」


「は?何言ってんだてめぇ」


 俺が放り投げた岩には血がべっとりとこびりついており、明らかに致命傷を負わせることはできたはずだろう。


 そして、瞬間俺の体に衝撃が加えられる。


「――がはっ!」


 何が起こった?俺は、体を起こしそいつに視線を向ける。


 先ほどまで俺がいたであろう場所にたたずむ奴。


 つまり、俺が認識できないほどの速度で奴は動いて、俺を攻撃した。


「……とんだ、バケモンじゃねぇか」


 格が違う。俺と奴の間にはそれだけの差があった。


 あれか?死の危機に瀕して人間としてのリミッターが外れたとでもいうのか?


「てめえら!逃げるぞ!」


 俺はそう叫んで、その部屋から逃げ出す。


「は?最後までやって殺しておかないと……」


「あんな状態の奴に勝てるっていうのかよ!それに、あの出血量じゃ、じきに死ぬ!」


 マーガレットがふざけたことを抜かすので、俺は足を止めずにそう叫ぶ。


 幸いにも、奴は逃げる俺たちを追う様子はない。ただただ、自己防衛本能で動いてるって感じだな。


 デイビットは、何も言わずについてきている。


「……回復くらいはしといてあげよっか」


 背後からそんな声が聞こえてきた気がしたが、今はそんな声に気を取られてるほど余裕はない。一切足を止めることなく、俺たちは走り続けて……。


「ここまで来れば大丈夫だろう」


 ダンジョンの外まで逃げ出すことに成功していた。


「あいつは何なのよ!」


「ああ、あんな化け物じみた力、今までも見せてなかっただろ」


「知らねぇよ!死にかけて、全力で抵抗してただけだろ!」


「死にかけただけで、あんな力出せるわけがないでしょ!」


「「……」」


 その言葉に俺もデイビットも返すことができなかった。


 それもそうだ。あいつの出した力は本当に異常としか言えなかった。


「まあ、もう過ぎたことだ。あの傷じゃ、あいつの回復魔法程度じゃ治せねぇよ」


「たしかに、私でも治せないくらいの傷だったわね」


 現実逃避なのかもしれない。だが、あいつに恨まれていないとそう思いたかった。


『何を言っているのだ?』


 俺が、あいつにビビる?ふざけるな!


 そんな声が聞こえたと思った途端、俺の思考が切り替わる。


『そうであろう?あの過去の遺物に、この時代を生きる資格などない』


「ねえ?大丈夫?」


 急に黙り込んだ俺を見てか、マーガレットがそんなことを口にする。


「ああ。問題ない」


 俺は、あいつを消さないといけない。あれが生きているのは気に食わない。だからこそ、パーティーに入れ殺そうとしたわけだから。


 おい、さっきから声をかけてくる奴よ。どうすれば奴を殺せる。


『お前は我だ。そんなことは知っているだろう』


 なるほど。俺は思考を巡らせ、記憶を辿る。


 そうかそうか。お前の力は、そういうことだったのか。


 だったら、あの場所に向かうはずだ。幸いにも、俺にとってもその場所に行くことで、力を得られるというメリットもある。


 あいつが、あの力を持っているという状況は面倒だが、対処法がないわけではない。


 待ち構えるとしようか。


「さっさと行くぞ」


 俺はそいつらを先導して、歩を進める。奴を消すために。


 まずは、こいつらを思い出させることからだな。


 俺はシーザー『王』なのだから。


宵「短いけど、ここまでで」

イ「ほんとに短いなぁ!」

宵「だれか、構成力を分けてください」

イ「身に着ける努力をだね……」


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