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第48話 少女

〈side???〉


 始まりは突然だった。


 ただの町娘だった私に一般的には奇跡と呼ばれるような現象が起こった。


 突然村にやってきた偉い人に私が勇者であると告げられた。私が勇者と呼ばれる存在に選ばれたと。伝えてきた奴の役職なんてさっぱり覚えていない。言われてみれば、最近知らない知識や、異常ともいえる身体能力の向上が見られていた。そして、私はそれに全く気付いていなかった。いや、違和感を抱けなかったといったほうが正しいだろう。


 そうして私は、村から追い出されるようにして世界を救う旅に出た。いや、ごめん。普通に温かく送り出してくれたよ。最近はやりじゃん、そういうの。


 それから数か月がたって……


 私という規格外な言うならば、神様に直接作られた存在の旅についていけるような人間がいるはずもない。国からかき集められた歴戦の猛者たちも、一人、また一人と私の旅から離脱していった。そうして、ものの数か月にして、私の旅は一人旅へと変わっていった。


「さみしいってほどでもないんだけどね」


 世界を救えるのは私しかいない、そう理解させるような出来事でもあった。一人旅になったとはいえ、決して孤独だったわけではない。案外応援している人もいる。彼ら彼女らのために私は頑張らないといけないなぁ、と思いつつ旅を続けた。


 旅の目的は魔王。王道との声がどこかから聞こえてきそうだけどまあ、気のせいだと思う。ともかく、破壊の限りを尽くしているという魔王を討伐する。それが国、そして神様に与えられた私の使命だった。


 そして、これは、私が勇者として世界を救う旅のそしてその終わりの物語だ。






〈sideフィール-過去-〉


「わー!」


 そんな叫び声を上げながら私は、村の中を駆け回っていた。変人?そんなことは置いておこうぜ。


 木々の間をくねくねと抜けたり、地を蹴り一メートルくらい高く飛んだり、ぴょんぴょんと木の枝の隙間を縫いながら飛び回ったりと、遊びまわっていたときのこと。


「おい!フィール!少し来い!」


「うわっ!」


 突然かけられた声に驚いて、木の上から落下する私。はいそこ!間抜けとか言わない!


 くるっと回転して着地する。私がいつもこんな感じで、わんぱくだからか声をかけてきた人も全く驚いた様子はなかった。抜けている?こんな完璧美少女な私が?


「え?なになに?」


 先ほどの失敗はなかったことにして、私は声をかけられたほうに体を向ける。


「はぁ……。お前にお偉いさんから話があるんだとよ」


「お?とうとう私の時代が来ちゃったか。私に目をつけるとはお目が高いねぇ」


「……なんでお前はこうも調子がいいのか」


 その言葉を私は無視して、村のほうに駆け抜ける。


「おい!急に走り出すな!」


「知ったことじゃねぇぜ!」


「……はぁ。村長の家に行け。行儀よくするんだぞ」


 なんだか、呆れられているような気もするが気のせいなんだろうな。


 さあ、私よ。風になるのだ。駆け抜けていけ。すべてを置き去りにするくらいに。


 そんなこんなで、たどり着いた村。相変わらずさびれてんな~。


「……フィールが早く帰ってきた。こりゃ、豪雨に備えないといかんか」


「いえいえ、豪雨で済むとは限りません。槍でも降るかもしれません」


 おいこら。てめぇら何言ってんだ。私は災厄という存在であるとでもいうのか。


「……まあ?私は心が広い美少女なので許してあげますがね」


「美少女っていう必要はないような……」


 お?寛大な私の心でも許してはならない発言が聞こえてきた気がするぞ?


 じろりと、声の聞こえてきた方向をにらみつけると、一人の少年が物陰に隠れてしまった。全く、レディに失礼しちゃうわね。


「と、こんな下らんやり取りしてる場合じゃないんだった」


 これ以上、私の逆鱗に触れようとする愚か者はいないようで、この言葉に反論するものはいなかった。ふ、やはり平和こそ一番よの。


 私の存在が平穏を脅かす?そんなことないよ~。私、悪いフィールじゃないよ~。ぷるぷる。スライム並みの美しい私の肌が揺れる。……さすがにこれは痛いか。たとえがあまりにも悪すぎる。肌が揺れるってなんだ。


 そんな、わけわからない脳内コントを繰り広げるうちに村長の家にたどり着いていた。


「よーし、これより淑女モードに入ります!」


 できないと思った?ふっ、完璧美少女フィールちゃんに不可能はないのだ~。


 そうして、完璧淑女のフィールちゃんと化した私は、村長の家の扉をノックする。数コンマ秒経ってから、返事があった。


「失礼します」


 我ながら敬語が似合わないなぁ。そんなことを思いながら、私は自称村長の自宅に侵入する。私は認めてない。ずっと家にこもっている人間が村で一番偉いなんて。


「君がフィール様ですか?」


 入ると、なんかとんでもないイケメンがいた。顔面偏差値は私には及ばないがな!というか、私に様付けするな!むず痒いわ!


「はい。そうです」


 それっぽい返事をしつつ、家の中を見渡す。


 家の中にはいつもより威厳のない村長……いや、いつも威厳はないからいつも通りだわ。そして、例のイケメンと、全身鎧に身を包んだおそらく種族人間の方々。人間以外に何があるんだろうね?私も思ったわ。


 ともかく、見知らぬ顔がたくさんあった。どの顔も村長よりも偉いんだろうなぁ。なんてことを思いつつ、相手の出方をうかがう。いや、頭下げよ。


 そして、私は頭を下げようとしたとき……。


 ざっ!と音がして、イケメンとその他もろもろが私の前にひざまずいた。


 ふっ、やはり私の時代が来たようだ。村長より偉い人間を侍らすということは私はめちゃくちゃ偉いということだろう?


「え、えっと、どうされました?」


 しかし、ここで調子づいては世間知らずのガキのレッテルが張られてしまう。自他ともに認める、完璧天才美少女たる私が、そんなレッテルを張られるわけにはいかない。


 つまり、私は謙虚な村娘を演じる。それが、完璧完全天才美少女たる私にふさわしい対応であるということだ。


「単刀直入に言いますと、フィール様は神より勇者に選ばれました」


 そうかそうか。くるしゅうない。完璧完全天才美少女勇者になるということであろう。あがめよ、奉れ。


 ……いやいや。勇者に選ばれたんですよ私。今までの自称によって身に着けた称号ではなく、神様から直々に与えられた称号ですよ。つまり、私は神様に選ばれちゃったってことですねぇ!


 うん。ごめん。自分でも何言ってんのかわからねぇわ。理解が追い付かないとはまさにこのことよ。


 まあ、とにかく、そういうわけで私は勇者になったらしい。……なんで?


宵「初めて、横向きで下書き書きました」

イ「改行後に一行開けないと読みにくいことが発覚したんだよね」

宵「書いてて思ったんだけどさ」

イ「うん」

宵「この子の脳内元気すぎて読みやすくなってるのが性格か、書き方かわかんない」

イ「知らんて」

宵「あと、このキャラめっちゃ動く。なんか自動的にしゃべってくれてる」

イ「だから知らんて言ってるやん」

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