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第47話 記憶っぽいダンジョン

〈sideルーク〉


 そうして、僕らは次の街にたどり着いていた。街の名前はリンク。僕とフィールの技と名前が一緒になっているが、特につながりはない。……そもそも、僕がそう呼んでるだけなんだけど。


「……なんだか、人が少ないですね」


「今までと比べるとね」


 ダンジョンがあるから、という面でなんとか街と呼べるくらいにはなっているが、今までいたレグルやルーカ、フォーム、ルーベの街と比べれば活気はないと言っていいだろう。


「理由はあるんですか?」


「……僕も聞きかじった話なんだけどね」


 この街のダンジョンは、一言で言ってしまえば生産性がない。今までのダンジョンの魔物は動物的な生き物が相手だったわけだが、このダンジョンの魔物は無機物、しかも本のみという使い道に困るような魔物だった。すでに文字も書かれているので使いまわすこともできないと言っても過言じゃない。その文字も現在に至るまで解読は進んでいないし。


「……本、ですか?」


「そう。何に使えるかわからない本が手に入るだけのダンジョン。一部の学者だったり、物好きがいるくらいの街になってるんだよね」


「……明らかに私の記憶に関わりそうな魔物のいるダンジョンなんですけど」


「……えっと、話しながら僕も思いました」


「まあ、近い順にダンジョンをまわっている以上仕方ないところはあると思いますけど」


 そう言ってため息をつくフィール。フィールはこの時代の知識はないから仕方ないが、僕が全く思い浮かんでいなかったのはフィールのかけらを集めるうえでよくなかった。


「とにかく、さっそくダンジョンに行くんですか?」


「……まあ、そうだね」


「今回は今迄みたいに誰かに取り込まれていないと楽なんですけどね」


 なんで、僕とフィールが来るタイミングでちょうど取り込まれているんだろうか。何かの意志を感じるほどである。




「本当に何事もなく見つけましたね」


 あれから、すぐにダンジョンに入って、数十分。僕らはフィールの一部を見つけることができた。


「……魔物もすべて本ですけど、そもそも本棚しかないんですね」


「それは僕も知らなかったよ……」


 単純に僕らが下調べを全くしていなかったから知らないだけなんだろうけど……。フィールが規格外な能力を持っているからって、流石に油断しすぎだな。反省反省。


「……なんだか、くだらないことを考えている気がします」


 ジトっとした目を向けフィールがつぶやく。いや、反省しているのは本当だよ。……あまり、実感はしていなかったけど。


「……そういえば、あの魔物に書かれてる文字はフィールには読めないの?」


「露骨に話題を逸らしましたね。……まあ、読めるか、読めないかで言えば、読めますけど」


「……なんとなくそんな気はしたけど」


 もともとダンジョンがフィールのかけらから力をとっている以上、その元であるフィールに読めてもおかしくないんだろうけど。


「……特に意味のない文字の羅列ですが」


「……そんなことある?」


 本一冊分の文字の羅列。何とも言えないような、答えである。


「すべて並び替えれば、何かの文章は浮かび上がるかもしれませんよ?過去、未来の本すべて含めて、ですけど」


「それこそ、不可能でしょ」


「もともと私という一つのものをバラバラにしたんです。それを元に戻すにはすべて集めるしかないと思います」


 そのフィールのかけらもバラバラになっているんだから、元に戻すのは、なおさら不可能なんだろうね……。


「その中に入っているのが、フィールの記憶だったらいいんだけどね」


「どちらにせよ、これ含めて後二つですね」


「想像していたよりも早く集まったんだけどね」


 数年はかかる旅だと思っていたんだけど、一年もまだかかっていない。


「すべて、フィールのおかげだよ」


「……?マスターの十分活躍していたと思いますよ」


「確かに僕も強くなったけど、やっぱりフィールのほうが上だからね」


 僕も十分に強くなれた。フィール以外には負けるような相手がいるとは思えない。……だからと言って、フィールがいる以上驕るようなことはできないんだけど。


「私と比べることが間違っているんだと思いますけど。それでも、今のマスターは出会った時の私くらいの力ならありますよ」


「まあ、少し背中は見えてきた、かな」


 まだ、追いつけたとは思えないが、フィールが最初に言っていた、自分に追いつけるという言葉も割と信じられている。フィールも確実に強くなってきているし、僕が今のレベルのフィールに追いつけるような気は今も持てないんだけど……。


「……なんだか最後の会話みたいになってますけど」


「確かにそうだね」


 なんだか、締めくくりみたいな会話をしていたな、僕たち。


「まあ、そろそろ、取り込みましょうか」


「なんだか、あっさりと取り込めるね……」


 先ほども言ったように今まで、戦闘してからようやく、フィールのかけらを手に入れられていたから、あっさりとかけらを手に入れられるという状況に少し驚いている自分がいる。


「今までが異常だっただけですけどね」


 本当にそうなんだろうな。今までのタイミングが悪すぎた。


「じゃあ、取り込みますね」


 そう言ってフィールは、謎の球体を軽く握る。見た目はただの光の玉なんだよな……。なんであんな形になるんだろう。僕はそんなことを思いながらフィールが取り込む姿を見ているのだった。


宵「前話書いてから一か月くらいたってます」

イ「さぼり魔」

宵「更新もさぼってるしね」

イ「一回地に伏せようか」

宵「寝てい?」

イ「は?だめだろ?」

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