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第43話 作戦

〈sideルーク〉


「……ん?ああ、君はそろそろ起きたほうがいいかもね」


 僕が夢の中で訓練しているとフィーアからそんな声がかかった。


「外の状況も分かるの?」


「……まあ、私くらいになればねー」


 フィーアくらいになれば寝てても現実の様子が分かるのか……。いや、僕の人格だよね?なんでイメージだけで超人が生まれているのか、不思議でならない。


「というか、どうやって起きたらいいの?」


「起きようと思えば起きられるはずだけど……」


「えぇ、なら今までも起きられたのでは」


「そうなると思ったから言ってなかったのだ!」


 フィーアがドヤっと効果音のつきそうな顔でそう宣言する。というか、僕が逃げないようにしていたのか。となると、次から逃げようと思えば逃げられると。


「あ、もちろん、逃げる用途で使ったら、次は罠でも作っておくから」


 そうするつもりなら、初めから教えてくれてもいいんじゃないですかね?というか、作ることができるんですかね。


「まあ、そろそろ行きなよ。あの子も気づいたみたいだし」


 フィールの様子も分かるのか。やっぱり、僕から生まれた存在とは思えない。


「じゃあ、そろそろ起きようかな」


「うん。じゃあ、行ってらっしゃい」


 フィーアに見送られながら、僕はその世界を後にした。


「流石に何でも分かるわけじゃないけどね……」




 そうして、僕は目を覚ました。


「……ずいぶん、いいタイミングに目を覚ましましたね」


 僕が起きた姿を見てフィールがそんな言葉を呟く。まあ、フィーアに起きろと言われたから起きただけなのだけど。


「何があったの?」


「……確証はありませんが、私の体が近づいているみたいです」


「近づいているってことは、誰かがまた力を取り込んでいるってこと?」


 体が近づいているというワードに突っ込みたい気持ちを抑えつつ、僕はそう尋ねる。


「はい。おそらくその通りかと」


 とりあえず、僕は隠れておいたほうがいいだろうか。


「まあ、取り込んでいるのが一つならば今の私なら圧倒できます」


 フィールの実力が規格外すぎて、全く実感なかったが体を集めるほど強くなるんだったな。


「つまり、僕を庇うこともできるってこと?」


「そうです。マスターがいたとしてもそちらに攻撃が向かないようにはできます」


 僕という足手まといを抱えていたとしてもフィールには何の影響もないのか。ダンジョンに潜るときもすべてフィールに任せたほうがよかったのではと思ってしまうが、そうなったらフィールは行かないんだろうな。……というか、フィールが僕をマスターと呼ぶ理由もまだ分かっていないし、僕に従っているのかも分からない。

 今はそんなことを聞いている場合ではない、か。


「そろそろ来ます!」


 フィールの声が聞こえたと同時に目の前に女性の姿が現れる。


「……え?」


「以前あった冒険者の一人ですね」


 そう。数日前に出会ったカップルの冒険者の一人だった。


「すでに意識はなさそうですね」


 なぜこうも、知り合った人間が巻き込まれるのだろうか?

 僕ら呪われてるのではなんてことを思いつつ、冒険者に目を向ける。


『案外本当に呪われてるのかもね』


 そうだったら、目の前の女性冒険者とルーベでの冒険者に申し訳ないんだけど……。

 目の前の冒険者は血走ったような目でこちらを見ていた。しかし、睨むような様子ではなく、ただただ僕らのほうを見ていた。フィール曰く、意識はないらしいので、無意識的にというか本能に従って動いているのだろうか。


『どちらかっていうと、無意識かな。いつもやってるダンジョン探索を無意識にやっているって感じだと思う。魔物と人間の区別もつけずにね』


 つまり、僕らのことを魔物だと思って襲い掛かってくるってことか。結局、今から僕らは彼女と戦わないといけないのか。正直、正気に戻ってくれるのが一番いいんだろうけど。


『それは難しいだろうね。あの子の力を取り込んで、正気を保つのはよほど適性がないと無理だよ』


 適正があればできるのか……。


『ま、まあ、その適正があるのはあの子だけだから』


 そりゃ、その力のもとの持ち主だからね。


『まったく、緊張感ないね、君』


 緊張しても仕方ないでしょ。


『……私のとこに来るようになってから急に性格変わったよね?君』


 自信がついたと言ってほしいけど。


『まあ、驕ってるわけではなさそうだしいいけどさ』


 フィーアはそう言って、軽くため息をつく。

 うん。まあ、フィールとフィーアのいる状況で驕るようなことはできないよ。


「フィール、あの冒険者の動きを止めることができる?」


「できますけど、どうしてですか?」


「少し試したいことがあってね……」


 あまり期待させるわけにもいかないだろうから、僕はそんな濁した言葉を吐いた。


『成功したら、あの子も驚くと思うよー』


 成功させるよ。こんな状況のために練習したんだし。


『使う機会来るの早くない?とは思ったけどね』


 本来使う機会がないほうがいいんだけどね。


『それは、戦闘技術だったりにも言えることだよ。使わないほうがいいことに変わりはない』


 それもそう、か。戦いはないほうがいいよな……。魔物を殺すことが主な仕事の僕らが言えるようなことではないのだけど。


『まあ、それはいいんだよ。今は目の前のことに集中!』


 フィーアが言ったことなんだけど……。


「分かりました、動きを止める直前で合図します」


「ありがとね」


 フィールは少し考えた後で、そう返答をした。今までのフィールだったら、間違いなく即答していたのだからフィールにも意思だったりが生まれてきたんだろうな。


『成長したんだね』


 フィーアがそんなことをつぶやいた。昔のフィールを知っているってことは、フィーアってフィールと出会ったときにもいたのか。


「じゃあ、少し相手をしてきますね」


 フィールはそう言って地を蹴る。今のフィールにとってはそこまで、警戒するような相手ではないんだろうな。なんてことを考えつつ、僕はフィールを目で追いかけるのだった。


宵「フィーアのほうがヒロインしている気がする」

イ「やっぱり口数が多いキャラのほうが目立つよね」

宵「キャラを魅力的に書けるようになりたい……」

イ「その前に表現を磨こうぜ」


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