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第28話 規格化

〈sideルーク〉


 「ダンジョンってどこも景色一緒なのかな」


 翌日、僕らはすぐにダンジョンに向かい、探索をしていた。


「成り立ちはほとんど一緒だからだと思います」


 フィール曰く、ダンジョンはフィールの体を封印するために作られたものらしい。前回のダンジョンの奥に、フィールの胴体があった以上、この話は真実だと考えても問題はないだろう。フィールにもそれ相応の力を持っているし。


「規格はそろえたほうが余計なことを考えなくて済みますからね」


 確かに、今も工業用の規格などはそろえようとしている動きはある。利権とかの問題でなかなか進まない話ではあるのだけど⋯⋯。

 ともかく、規格化できるとなると、物を作るという側面では有利だ。ダンジョンが単純な物づくりの範疇に含めてしまっていいのかは分からないが、それでも、基本となる形があるほうが作成には有利だろう。


「夢がないね⋯⋯」


 しかしまあ、夢のない話だ。ダンジョンが規格化されて作られているものだというのは。


「夢を見られるようなものなんて大概、誰かに作られたものですよ」


 フィールはそう吐き捨てる。


「現実を突きつけるね⋯⋯」


「マスターも夢見ていることがあるんですか?」


 フィールにそう尋ねられ少しドキッとする。夢を見ていること、何かあっただろうか。そう言われてみれば、全く未来に対する目標だとか、目先の欲だとか、そういったものを抱いた記憶がなかった。自主性が全くないと言ったらいいだろうか。


「⋯⋯特にないけど」


 だから僕は、そんな言葉を返すことしかできなかった。


「⋯⋯見つかるといいですね」


 フィールは僕の内心を見透かすように、そんな言葉を告げた。


「さっきまで、夢なんて作られたものって言ってた人が良く言うね」


 その言葉に、僕は皮肉を混じらせるように返す。


「夢は持っておいたほうがいいことには変わりないですよ。理由を聞かれても困りますが」


 夢は持っておいたほうがいい、か⋯⋯。そう言われて、簡単に夢を見つけることができるはずもなく、ただただ、僕は考え込むことしかできない。


「今すぐに見つけることはないですよ。多分、気づくときには気づけると思うので」


 まあ、ないものは今探してもない、か。僕はそう結論付けて、ダンジョン探索に意識を戻すのだった。



「やっぱり、前回のダンジョンと大差ないね」


 あれから少しして、その日のダンジョン探索は切り上げた。一応、前回には起きなかったアクシデントが起こる可能性を考慮して、ゆっくりと探索していたが、本当に前回のものと大差がないような気がする。


「まあ、基本的には同じものですからね。私の体のどこが使われているかで少し変わるのかもしれませんが」


 フィールの体が封印された装置、それがダンジョン。フィールの体の一部から魔物や魔道具らしきものが生成されているらしい。⋯⋯つまり、フィールのその一部がどれだけの力を秘めているかで、魔物の強さなどは変わるということだろう。


「それに、前回のダンジョン攻略と比べて難易度は低いですね」


「⋯⋯そう?」


 僕は体感、同じくらいかなと思っていたが⋯⋯。


「はい。明らかに魔物の数が少ないです」


「なるほど」


 確かに僕は基本フィールに戦闘を任せている面が強い。最近になってようやく、フィールの姿と相手の姿が目で追えるようになったところだ。

 だから、僕は魔物の数の減少に気づいていなかったのだろう。


「⋯⋯理由の推測はあるの?」


 僕は少し考えて、何も理由が思いつかずにフィールに尋ねる。


「そうですね⋯⋯。以前、私の体を回収した後のダンジョンについて話したのは覚えていますか?」


「龍脈につながって維持することができるって話?」


「そうです。思いつく理由としてはそれが起こったという可能性くらいです」


 フィールの体を探すとなったときに出た話だ。フィールの体を軸にできなくなった後は、新たなエネルギー源を求めて、最終的に龍脈につながるという話だった。龍脈からくみ上げられるエネルギーは若干フィールの体よりも少なくなるため、魔物の数が少し減る程度の変化が予想されるとのことだった。

 つまり、現在それが起こっていると考えられるということだろう。


「確実なこととは言えませんが、私が可能性として挙げられるのはそれくらいです」


「ということは、別の場所にフィールの体があるっていこと?」


 フィールの体の一部とダンジョンのつながりが解けているならば、すでにフィールの体の一部はどこか別の場所にあると考えるのが自然だ。そう思ったのだが。


「いえ、おそらくダンジョンの中にあることは間違いないかと」


「それなら、このままダンジョン探索でいいかな?」


「はい」


 しかし、フィールの体との接続は切れているか⋯⋯。一体何がきっかけになったのだろうか。流石に、地震などの非人為的な出来事で簡単に接続が切れてしまうとは思えないのだけど。


「とりあえず、そろそろ明日のダンジョン探索の準備でもしておこうか」


 これ以上に考えても、何があったのかは分からないし、対処法が思いつくほどの情報もなさそうなので一旦、明日に攻略しきるつもりで、準備を始めたほうがいいだろう。

 そう考えて僕は、必要なものなどの整理を始めるのだった。フィールは収納の中に大体入っているから、準備は必要ないのだけど⋯⋯。


イ「規格化ってほんとに夢ないね」

宵「量産型ダンジョンです」

イ「利点はわかるけども」

宵「インチとかライトニングとかいらないでしょうよ」

イ「唐突にiPhone批判するじゃん」

宵「タイプCになるのはありがたいよね」

イ「刺されるよ?」


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