第12話 冒険者ギルド
更新忘れてました⋯⋯。次ももうすぐ
〈sideルーク〉
街の中に入るとルーベの街と比べてがやがやしているというか、にぎやかしい印象を受けた。とは言っても、発展度に違いはほとんどないと言ってもいいだろう。単純に王都に近いという理由で人が多いのだろう。
さて、これからどうしようか。真っ先に冒険者ギルドまで行ってみるのが妥当だろうか。現状無一文でお金を稼がなければ何もできない。
そう考えた僕は入口のそばに置いてあるマップののった看板を見て、冒険者ギルドの場所を確認してその方向に足を向ける。
お金のあてとしては⋯⋯情けのないことだが、フィールが道中に倒した魔物を売却しようと思う。フィールの狩った魔物は言わずもがな強い。僕が十人いて何とか一人残って倒せるかってところ。一般的に見てみても一人で狩れるような魔物ではない。
そんな魔物たちがフィールが食料として狩ってきて空間収納に入れている。驚くべきことだが、空間収納については僕も習得できた。とは言っても、収納できる量は少ないし、大きさの制限もある。試しにフィールはどのくらい収納できるのかと聞いてみたが、大きさの制限はあるらしいけど、収納量は無限らしい。曰く、四つ目のベクトル方向を作り出すのだとか。この世界の物質はそのベクトル成分はゼロだからその方向に無限にものを重ねることができるのだとか。意味はあまり分からなかった。
フィールには魔物を売っていいかの確認は取っている。まあ、即答でどうぞと言われたけど。
それからしばらく歩いて、冒険者ギルドが見えてきた。冒険者ギルドは主に依頼の仲介をしてくれる組織だが、魔物素材の売買も仲介している。僕らはこの街に来るのは初なので、どこで売ったらいいのかも分からない。そのため、今回は仲介してもらうほうがいいだろうという判断だ。⋯⋯今回はと言ったが、フィールの体を探すのが目的のため、様々な街をまわる必要がある。そうなると、今後もギルドでの売買には世話になるだろうな。
ギルドの扉を開けて、中に入る。一瞬、僕らに視線が集まるがすぐにまた依頼を見たり、酒を飲んだり⋯⋯。どうやらここには酒場が併設されているらしい。軽くつまみになる料理も見受けられる。
「いらっしゃいませ。何の御用でしょうか」
僕が受付まで近づくと、受付嬢がそう声をかけてくる。ギルドの看板だけあってかなりの美女だが、フィールには及ばない。いや、フィールが僕の見たことのないくらいの美少女ってだけだけど。
「魔物の売却をお願いします」
僕は受付嬢にそう告げる。
「はい、分かりました。あちらのカウンターでお願いします」
受付嬢はそう言って、僕から見て右側にあるカウンターを指す。そのカウンターには人の姿は見えない、が今の受付嬢が何な合図をしたのか奥のほうから一人の筋骨隆々な男がこちらにやってくる。
僕たちは、案内されたカウンターに移動する。それからしばらくして、こちらに向かってきていた男がたどり着く。
「おっし!何を売りてぇんだ?」
⋯⋯あなた、接客向いてないよ。初対面でため口で声をかけてくる男に僕はそう内心でつぶやく。
「魔物の素材ですが⋯⋯どこに置けばいいですかね」
ギルドでは魔物の買い取り以外もしているのだろうか。聞いたこともないが⋯⋯。
「⋯⋯単純に魔石だけを売る人がいるんじゃないですかね?」
フィールが僕に小声でそう告げる。⋯⋯心を読むこともできるのだろうか。
「できませんよ」
⋯⋯できてるよね?
ともかく、確かにフィールの言うように魔石だけを売るって人もいるかもしれない。この冒険者ギルドに来るのは初のため、僕が魔物を狩る冒険者だとは知らないのだろう。一部の貴族などは資産として魔石を持たせて街へ出すとかがあるかもしれない。魔石だけだとカウンター上だけで取引できるから、こう確認をとっているのだろう。
「そうだな、倉庫のほうに出してもらってもいいか?今割と解体のほうが立て込んでいてな」
男はそう言って、カウンターの向こう側から、こちらのほうにやってくる。解体が立て込むというのはダンジョンのある街ではよくあることだ。以前僕がいた街でもそうだった。ダンジョンがない街ではそんなことはないらしい。他の街から来た冒険者からの伝聞だけど。
カウンターから出てきた男に僕たちはついていく。今いるカウンターのさらに右側にある扉に案内され、僕たちはその中に入る。中には石造りで簡素な見た目の部屋が広がっていた。ギルドのエントランスと直接つながっているのかぁ、と思いつつさらに奥のほうに行く男に僕たちはついていく。ちなみに、僕がいたルーベでは一度出入り口から出てから倉庫に行かなければならなかった。
「よし、じゃあこの辺りに出してくれ」
端のほうにたどり着いて、男は僕たちにそう声をかける。あたりには、何体かの魔物の亡骸が転がっており、数人の作業員らしき人が解体している。
「はい、分かりました。フィールお願いできる?」
僕はそう答えて、フィールに声をかける。フィールには僕が言ったら、あらかじめ指定しておいた魔物を出すように言ってある。⋯⋯そうでもないと、僕みたいなのの狩れない魔物が出てきてしまう。そうなってフィールの規格外さが露見して、貴族などが抱え込みをもくろんだ場合、僕にはそれを防ぐ手立てがない。だから、程よく弱い魔物⋯⋯僕にとっては強敵だけど、を出すように言っておいた。ちなみに、空間収納についてはマジックバックという見た目よりも容量の大きい鞄を持っているとしてごまかすつもりだ。確かにマジックバックはレアなものではあるが全く見つからないわけではなく、持っている人も多少はいる。
「はい。わかりました」
予定通りにフィールは鞄から出すふりをしながら魔物の素材を取り出していく。
そして、魔物の素材をある程度出したところでフィールは取り出すのをやめる。
「⋯⋯お嬢ちゃん、かなりの怪力だな」
男はフィールを見ながらそう呟く。そうだよね⋯⋯。割と魔物って重いもん。それを一切体勢を崩さず出していく様子は、フィールが怪力だという印象を思わせる。
フィールは一応女の子なのだが、こう言われても特に気にする性格でもなく、反論はしない。
「まあ、そこは置いておいてっと」
男はざっと、僕らの出した魔物を見渡す。
「大体一時間くらいで査定は終わると思うからまた来てくれや」
男はそう言って、僕たちの出した魔物の査定を始める。それを横目に僕たちは倉庫を後にするのだった。
⋯⋯あの人査定する側なのに受付の奥にいたんだろ?
イ「まーた、遅くなってるよ」
宵「⋯⋯レポート、プログラム、怖い」
イ「まだやってない分もあるでしょうに」
宵「あの量出すのが悪い」
イ「さぼるのが悪いでしょ⋯⋯」