第1話 追放
『かつて化け物がいた。化け物は、街を壊し、人を食らい、そうして、人々に恐れられるようになった。化け物は多くの配下を増やし、その勢力は高まっていく。その配下を魔物、と呼ぶ。そんな中で現れた、救世主、人々は勇者と呼んだ。そして、勇者は仲間とともに、化け物から世界を救う。
しかし、化け物という統率者を失ったことで、魔物は暴れだした。いくら勇者でも全ての魔物を討伐することは不可能であった。ゆえに、ダンジョンという封印装置を作り出し、その命をもってして魔物を封印した』
〈sideルーク〉
「ルーク!お前は追放だ!」
ダンジョンの最奥、もうボスも目前というところで僕はそんな一言を告げられた。
⋯⋯時は、その日の朝までさかのぼる。
僕は、冒険者というダンジョンに潜り、魔物の素材を集める、そんな仕事をしている。命の危険があるため人気職というわけでもないが、一部の人々にとっては憧れとなる存在だ。
しかし、憧れがそのまま優良職となるわけではない。冒険者のほとんどは明日の生活さえままならない、今日をかろうじて生きている、そんな生活をしていた。僕、ルーク・ハートも例に漏れず、その一人だ。毎日を切り詰め、ぎりぎりの生活をかろうじて維持している。
これは、ダンジョンの初めにいる魔物では金にならないからだ。ゴブリンやウルフ、スライムから良い素材がとれるはずもないし、冒険者そのものの全体数が多すぎるため、供給過多となっているのが現状だ。
一応お金に関しては当てがある。あまり頼りたくはないのだが、実家だ。僕は貴族ではある。領地もない弱小な貴族だが、没落した貴族で、どうやら隠し財産が残っていたらしい。国の調査の緩さを感じざるを得ないが、そこはありがたかった。
で、なぜ僕が冒険者のような職に就いているのかというと、家から逃げたからである。家での扱いはひどいというほどではないのだが、僕らの間に距離があるというか、どこかよそよそしい態度をとられていた。両親が悪人というわけではない。僕を育てることに手を抜くことはなかった。しかし、一歩離れたところからしか接してくれないように感じていた。家を出た今となってはどう接したらいいのか分からないといった感じだったように思う。
とにかく、僕は今そんな仕事をしていた。
「今日はこのダンジョンを探索する」
そして今日、僕が所属するパーティー『パーフェクト』で、こんな会話があった。朝の宿屋での会話だ。パーティーというのはダンジョン内で協力して魔物を倒すチームのようなものだ。こんなダサい名前のパーティーに所属しているのは、僕にそこまでの才能があるように思われなかったためか、ここにしか入れなかったのだ。
とはいっても、パーティーとしての実力は平均的なレベルで、給料は生きることくらいはできる程度にはある。性格には大いに問題あるが⋯⋯。
そして、先ほどの一言を言ったのはこのパーティーのリーダー、シーザーだ。傲慢な性格で知られている、嫌われ者だ。パーティー内では大剣を振り回しアタッカーをこなしている。
「分かった」
それに答える男、デイビット。一見クールな見た目だが女好きで、依頼人の女性などからの評判は悪い。曰く、視線が怖いらしい。下から睨みつけるような見方をするからそう思われるのも納得だが。パーティー内での役割は、シーザーと同じアタッカーだが、パワー系ではなく少しずつダメージを与えていくといった方法をとる。
「いいよ~」
間延びした声音でそう言う女、マーガレット。ふわふわと周りに愛想を振りまく姿は人気もあるが、ぶりっ子だという人もいて賛否両論な評価を受けている。僕は、作り物っぽい彼女の雰囲気は苦手だ。パーティーでは、ヒーラーを務めている。また、リーダーのシーザーと恋仲らしい。
彼らに加えて僕というのがこのパーティーの構成だ。僕の役割はサポーター。アイテムの運搬や、チームへのバフ、敵へのデバフなどが主な役割だ。とはいっても、強化率はそこまで高くないため居ても居なくても変わらないレベルだろう。アイテムの運搬についてもそれぞれが受け持てばいいだけだ。
つまり、僕は必要とされていないとしてもおかしくないということだった。この時から、追放を予想することはできたのだろう。
「じゃあ決定だな。さて行くとするか」
そう言って踵を返すように宿を後にした。僕の準備の時間は取ってもらえなかった。この時点で追放は決定事項だったのだろう。いつもは三十分程度ではあるが時間をとってもらえていた。
「ちょっと準備をしないと」
僕はシーザーにそう声をかけたが、その声は聞こえていないように振舞われた。ここで僕だけ行かないという手もあったが、彼らが死んでしまおうものなら寝覚めが悪い。すぐさま、あるアイテムをかばんに詰め込んですぐについていった。こんな僕の性格を理解していたんだろうな。
そうして、僕らはいつも通りにダンジョン内を進んでいった。準備は不全でありながら、危なげな様子もなく奥までたどり着くことができた。そうして、ボス部屋までやってくることになった。ボス部屋というのは、ダンジョンの最奥にあるひときわ強い魔物がいる部屋のことで、このボスを倒すことでダンジョン内から外にワープすることができる。このワープをするほうが圧倒的に楽なのでダンジョンのボスは倒す冒険者が多い。それにボスの素材は質が良く、高く売ることもできる。
そうしてそこで、僕は追放されることになるのだった。
宵「よろしゅうお願いします」
イ「一話目です。生暖かい目で見てあげてください」
宵「⋯⋯にしても、名前考えるの難しい」
イ「名前と設定でめちゃくちゃ悩んでたしね」
宵「こういう設定ってありふれてる分言葉にすると難しいもんだな」
イ「にしても、なろうっぽいタイトル」
宵「なろうだからね⋯⋯」
イ「内容はいつも通りだろうけど」
宵「チートで無双が僕に書けるとでも?」