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8.剣聖登場


トーマスに食事に誘われて、久しぶりに宿から出た。


「食べたいものはある?」

「海が見える店がいい。」

「わかった。」


ユーリは、トーマスがいてくれて、どれだけ助けられたことか。彼が案内する店に足を向けた。メニューを見ると、美味しそうな料理が並んでいる。



ピロリーン

*****


イベントクエスト

剣聖との出会い

剣聖を仲間にできるチャンス。

報酬:ラッキー値70


受ける/受けない


*****


剣聖って、彼女の息子。出会えば助けてくれると言っていた。

【受ける】を選択だ。


店に入り、海の見えるテラス席に座る。店の料理は美味しかった。でも、どこか既視感があるような?


お腹いっぱい食べて、最後のお茶が運ばれて来た。


お茶を飲もうとしたら、急に日が陰り、頭の上から低い声が響いた。


「よくそんな臭い茶を飲む気になるな。」


トーマスが細いせいもあるけれど、そこにはトーマス2人分の幅がありそうな大男が立っていた。


「それだよ、その茶。」

「こ、このお茶が何?」

「おい、お前。運んできたそこの女。お前、これ、自分で飲んでみろよ。」


可愛い制服を着たウエイトレスは、顔を青ざめて立っている。

そりゃ怖いよね。こんな大男に睨まれたら。ユーリがそう思って見ていたら、トーマスが顔色をかえて、ユーリの手からカップを奪った。


「え?」


あ、もしかして、この景色。百合子の記憶にある、毒を盛られた店?


大男が一歩踏み出すと、女は背を向けてはしりだした。すかさずトーマスが土魔法で、足を拘束する。


「へぇ、やるじゃないか。」


振り返りざま、女が投げる短刀も風魔法で弾くトーマス。

あっという間に女に近寄る大男が女を拘束し、猿轡を噛ませた。


「死んじまったら、何も聞けないからな。聞かせてもらおうか。誰に頼まれたかをな。」


大男が女を抱えようとしたかと思った時、変な風が吹いた。

慌てて大男が後ずさった瞬間、女が発火した。火は大きく燃え上がると、女だけを燃やし尽くし、残ったのは、灰だけだった。


「ちっ。仕方ねえ。おい、あんたらは何者だ?毒殺される覚えはあるんだろうな?」


百合子の記憶には、こんな大男は出てこない。でも、クエストは剣聖クエスト。この大男がユーリの護衛騎士の兄?

彼は細マッチョだったから、とても兄弟とは……。

もしかして、剣聖は何人もいる?


「いいえ。」


大男に負けずに言い返すトーマスが、かっこいいなぁ。


「白エルフか。初めて見るが、気が強いな。そっちの嬢ちゃんはどうだ?」

「私?」


大男を仲間にするには、どう受け答えるのが正解か?

でも、トーマスと仲良くやれそうにない。ここは、スルーして、仲間を諦める?でも、老婆は仲間になってくれそうな事を言っていたような……。


ユーリが答えに逡巡していると、男の大きな手が彼女の手首を掴んできた。


「おい。これをどうした。」


低い声が、まるで、野獣の唸り声のようだ。怖いから、やはりお友達路線を選ぼう。


「貰ったの。」

「誰から。どこで会った!言え!!」

「い、痛い。」


「ユーリを離せ!」


トーマスが大男の頬を殴り、力が弱まったところで、ユーリの手を助け出してくれた。手首は男の力で、痣になっている。


「ユーリ大丈夫?」

「兄ちゃん、いい根性だ。俺が悪かった。それで、教えてくれ。それはどこで誰から手に入れた?」

トーマスと目を交わして、頷き、答えた。


「この沖の島でおばあさんから貰ったの。」

「その婆さんはどうした。」

「亡くなったわ。」


彼があの老婆の息子とは限らない。これ以上の事は言いたくない。わかっているから、トーマスも口を挟まずにいてくれる。


「……殺したんじゃないだろうな。」

「どうして、私達が!」

「……その島にはどうやって行けばいい?」

「呪われている島と言えば、この辺の人はみんなしってる。」

「そうか。」

「おばあさんは私達が、家のそばに葬ったわ。家は島の中央にあるから。」

「……そのブレスレット。」

「何?」

「お嬢ちゃんに預けといてやる。」


大男は大股に店を出ていき、あっという間に見えなくなった。

どうやらユーリはクエストを失敗したらしい。彼は仲間にならなかった。


「ユーリ、痣になってる。」

「大丈夫。ヒールで治すから。」

「うん。」


トーマスの痣を見る目が凄く痛々しくて、ユーリは慌ててヒールをかけた。


「心配かけてごめんね。」

「あいつ、あのおばあさんが言ってた息子だろ?あんな乱暴者に助けて貰わなくてもいい。僕がユーリを守るから。」

「トーマス。」


こんな甘い展開のゲームだったろうか?いや、もっとアクションロープレって感じだった気が。いや、気のせいか?




二人で店を出た。あの男が追ってくるといけないと、トーマスが急かすので、二人はすぐに港町を出た。




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