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法術大戦  作者: 君川優樹
9/12

8話 不合格 #イグザミネイション


『第一問 記述』

『法術とは何か、魔法との差異を明らかにしながら簡単に記述しなさい』


 サラサラ、とルルスのペンが走る。


 法術とは、世界の物理法則を操る術。

 物理法則を無視する魔法とは根本的に異なる。

 物理法則の外側で展開するのが魔法、物理法則の内側で展開するのが法術である。

 故に、何もない所から火炎を生み出すなど、物理法則の中で起き得ないことは法術では実現できない。

 法術が可能なのは、あくまでも火炎の燃焼を促進させたり、風の速度や方向を変えることである。何の法則に干渉できるかは、生まれながらの法石に依存する。


 はい次。


『第二問 穴埋め』

『以下の文章は、四大法石とその特徴について記述したものである。空欄を埋めなさい』


 法石は血液型と対応関係にある。

 A型の法石は( 1 蒼水晶 )で、( 2 水 )に関連する法則を操る。

 B型の法石は( 3 翠宝玉 )で、( 4 風 )に関連する法則を操る。

 O型の法石は( 5 紅貴石 )で、( 6 火 )に関連する法則を操る。

 AB型は( 7 金剛塊)で、( 8 金属系 )( 9 樹木系 )( 10 岩石系 )の三種類に分かれる。


 法国で最も多い法石は( 11 紅貴石 )で、人口の約4割を占める。

 2番目に多いのは( 12 蒼水晶 )と( 13 翠宝玉 )の法石で、約3割ずつを占める。

 ( 14 金剛塊 )の人間は最も少なく、全体の1割に満たない。

 特に( 16 金剛塊の金属系 )は、交配の関係からほぼ出現しない。


 次。


『第三問 選択問題』

『各法石の交配関係から予測される、子供が生まれ持つ可能性のある法石を選択肢から選びなさい』


1.母:蒼水晶 × 父:蒼水晶 = 子:( 1 蒼水晶又は紅貴石 )

2.母:蒼水晶 × 父:翠宝玉 = 子:( 2 すべての法石 )

3.母:翠宝玉 × 父:紅貴石 = 子:( 3 翠宝玉又は紅貴石 )

4.母:金剛塊 × 父:翠宝玉 = 子:( 4 蒼水晶又は翠宝玉又は金剛塊 )

5.母:紅貴石 × 父:紅貴石 = 子:( 5 紅貴石 )

 

  次。


『第四問歴史』

『法術大戦の英雄、黄金卿ルルスについて説明しなさい』


 良い問題じゃないかあー!!


 ルルスは喜び勇んで自分のことを書き連ね始めた。


 黄金卿ルルスとは、元『工房(アトリエ)』の頭領。歴史上最高の法術士。

 本名はルルス・ライムンド・リュイドス。

 『金剛塊』の術者で、あらゆる金属を意のままに操る……いや操ったとされる。

 特に黄金の操作に秀でたことから、黄金卿とも呼ばれた。

 生まれは……

 幼少期は………

 経歴は……

 頭領となった後は……

 法術大戦の過程では……

 法都における、太陽皇との頂上決戦においては……


 ふう。自分のこととはいえ、ちょっと書きすぎたかな。

 次だ。


『第五問 記述』

『教会とは何か、その起源と組織の性質について説明しなさい』


『第六問 選択』

『工房への所属を公式に表明している組織を選びなさい。また、組織の長が原石評議会の評議員を兼任している組織にはチェックを入れなさい』


『第七問 穴埋め』


『第八問 術式』


『第九問 計算』『第十問』『第十一問』『第十二問』……。


 …………。


「そこまで。用紙を裏向きにして、それ以上解答しないでください」


 時間だ。

 用紙を裏返してペンを置くと、ルルスはその場で大きく伸びをした。


「んぐわぁー……っ」


 はあ、疲れた。

 予想以上に問題があって焦ったけど、おそらく全部答えられたな。


 500年の間に、自分の知識との齟齬が発生していたら話は別だが……そこまで多くもないだろう。一部現代の知識が無いとわからない所もあったが、その辺が選択問題になっていて助かった。何となくの推測で解けたんじゃないか?


 ルルスがそんな風に考えていると、職員が解答用紙を回収しに来る。

 どうぞ持って行って、採点でビックリするがいい。

 500年のブランクがあるとはいえ、自分は歴史上最高と謳われた法術士。

 この黄金卿ルルス様を舐めるんじゃあない。


 そんな風に余裕をこいていると、回収されるときにチラリと、自分の解答用紙の表側が見える。

 名前の記入欄を見て、ルルスは固まった。


 名前:黄金卿ルルス・ライムンド・リュイドス


 あっ。


「あっ! ちょっと待って!」


 ルルスが呼び止めると、職員が怪訝な表情をして振り返る。


「どうしました?」

「いや……ちょっと! 一か所だけ! 一か所だけ書き直していいですか!?」

「いや、駄目ですよ」

「そこをなんとか! 名前だけなんです! 名前だけ、ちょっと……!」

「いかなる理由であっても、試験終了後の修正は受け付けられません」

「そんなあ」


 無情にも持ち去られていく解答用紙を眺めながら、ルルスは力なく手を伸ばす。


 …………本名書いちゃった。

 ……しかも、二つ名付きで。


 ……………………。


 適当に、偽名使えば良かったぁああああっ!!!

 ゼロ点かぁああああああっ!?



みんな解けたかな!


次回!『第9話 低能 #ロー・インテリジェンス』よろしくですー!

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