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法術大戦  作者: 君川優樹
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3話 露出趣味 #フラッシャー


「えっ!? すっごぉ! なんですか今のぉ!?」


 背後に座り込んでいた痴少女……メイジが、慌てたように喚いている。


 四人の司祭を一瞬で制圧したルルスは、振り返って彼女の下へと歩み寄った。


「キャーキャーと騒ぐな。気絶させただけだろ」

「えええっ!? 今のって法術(コード)!? 法術使ったんですか!?」

「見りゃわかるだろうが」


 平然としてそう言い放ったルルスに、メイジは驚嘆の眼差しを向ける。


「もしかして……凄腕っ!? ルルスさん、凄腕のお方!?」


 凄腕どころか、一応世界最高の法術士なんて呼ばれてたんだよなあ。

 ルルスはそう思った。


 敬服しきりな様子のメイジは、その場で跪いて両手を合わせる。


「し、師匠! 私も法術士の端くれとして、師匠と呼ばせてください! 助かりましたーっ!」

「別に、何と呼ぼうと勝手だがな」


 そう言いながら、ルルスはその場にしゃがみ込んだ。


「あー……横アホ毛。聞きたいことがある」

「横アホ毛って私のことです!? ツインテなんですけど! いやメイジって名前なのですが!?」

「今、法暦何年だ?」


 ルルスがそう聞くと、メイジはきょとんとしたように目をパチクリさせて、左右に伸びるピンク髪のツインテールをふわりと揺らした。


「……1240年、ですが?」

「…………」


 顔がグシャリと曇ったルルスに対して、メイジがおずおず尋ねる。


「何か……問題が?」


 大ありだ。

 とルルスは心の中で呟いた。


 記憶では……先ほど林の中で、とつぜんにして目覚めるまで。


 ルルスは、法暦720年の時代に生きていたはずなのだから。


 つまり、ここは……

 500年後の世界……。



 ◆◆◆◆◆◆



「あったあー! 良かったぁー!」


 ピクピクと震えている司祭の懐から、メイジが茶封筒を見つけ出した。

 とつぜん嬌声を上げたメイジに対して、気絶している司祭に細工をしていたルルスが顔をしかめる。


「紐パン、一体どうした」

「普通に名前を呼んでくれるつもりは無いので!?」


 覗き見てみると、封印がされた茶封筒の中に入っていたのは、一枚の紙きれのようだった。


「これがどうかしたのか?」

「法都への入門許可証ですよぉ! はぁ、盗られたらどうしようかと思いましたぁ!」


 メイジが安心したように、許可証を掲げている。

 その内容を見てみると、その下部にこう記されていた。


 『メイジ・シュテナフ』

 『上記の者とその法石に、法都ニルニアの表門通過を許可されたい』

 『法暦1270年参月11日付』


 …………。


 どうやら本当に、500年後の世界みたいだな……。


「なんでこいつらは、こんな物を盗ろうとしてたんだ?」

「こんな物とはなんですたい!」

「どこの方言だよ。妙なキャラを出すな」

「最近は教会の動きが活発化してるらしくてですね、法都の表門って結構厳しいんですよぉ……」


 悪の法術士結社、教会(チャーチ)


 今しがたルルスがぶちのめした司祭たちのような人間を法都に易々と潜り込ませないために、そういった検問が敷かれているのだろう。


「この入門許可証だって、結構苦労して発行してもらったんですから!」

「なるほどね」


 覗いてみると……許可証には確かに、何人かのサインと印章が押されていた。


 補文として、入門の目的は『エルゲニア法術学院の受験』と記されている。


「お前……受験生なのか」

「ですです! こう見えて勉強熱心なんですから!」

「その恰好と露出で……?」

「露出は関係無いでしょ! きちーんと事前試験で選んでもらったんですからね!」


 サインの順番から見るに、この証書は法都とは別の地方都市で行われた事前試験に基づいて申請され、学校側の……オサリヴァン副学院長なる人物が認可し、この入門許可証が発行されたという流れらしい。


 ルルスは司祭たちに細工を施してから、メイジと一緒に彼女が乗って来た馬車を探した。


 すると、少し離れた茂みの中で、馬車が粉砕されているのが見つかる。

 荷台は破壊されて車輪が転がっており、離された馬の蹄の跡だけが残っていた。


「うげぇ……ここまでやりますか……」

「やられたな」


 漁られた形跡のある荷物から必要最小限の物だけを取って、二人は仕方なしに歩き始める。


「しかしだな。あいつらはお前をとっ捕まえて、何がしたかったんだろう」


 静かな林道を歩きながら、ルルスがそう聞いた。


「うーん。わからないですが……最近の噂を聞くに、身ぐるみ剥がされるだけで済んだとは思えないですね……」

「というと?」

「教会が若い法術士を拉致して、洗脳して構成員にしちゃうって噂ですよ!」

「洗脳? そんなことが可能なのか」

「きっとできますよ! なんてったって奴らは極悪非道な法術士集団、教会(チャーチ)なんですから!」


 ひええ、と声を上げながら、メイジが捲し立て始める。


「きっと師匠に助けてもらえていなかったら、私は今ごろ誰も通らぬ林の中で男4人にか弱い乙女一人何も起きないはずはなく若い身体を捌け口にされて散々弄ばれた挙句、どこかに連れ去られて弄ばれて監禁されて弄ばれて洗脳教育を受けて弄ばれていつかは教会の司祭として洗脳完了! って感じになっていたに違いありません!」

「弄ばれすぎだろ」


 そんなことを話しながら歩いていると、流石に足に疲れが溜まって来たルルスがため息をついた。


「疲れた……法都まで、あとどれくらいだ?」

「そんなに遠くないはずですがね」

「というかお前さ、その全裸の相似みたいな恰好は……何なの? そういう性癖なの?」


 林道を並んで歩きながら、ルルスはメイジにそう聞いた。


 袖と襟だけのような通気性700%のジャケットに、水着と紐パンの紐が覗くミニマムスカート。

 メイジの服装は、脇から下を見ればほぼ水着だけと相違ない。

 むしろ水着だけよりも卑猥だ。


「いや別に……紅貴石(ルビー)なんですから、普通の恰好じゃないですか?」

「僕の感覚では、かなり普通じゃないのだが」

「失礼ですが……師匠って、かなーり田舎の方の出身なんです? さっきから妙に服装を気にしてますよね」


 田舎どころか、バリバリの首都出身でガチガチの首都育ちだ、とルルスは思った。


 黄金卿ルルス様を舐めるんじゃない。


「師匠にこんなことを説明するのも、おかしいんですがね?」


 メイジは胸を逸らして、背中に背負ったリュックの肩紐をずらすと、

 その胸の谷間で赤く光る法石……紅貴石を見せつけた。


「紅貴石って、法術の初級者だと常に熱暴走状態で。体温調節が上手くいかないんですよ」

「まあ、そういうことはあるだろうけどさ」


 四大法石の一つ、紅貴石(ルビー)


 彼女の胸元で輝いているのは、火と熱の法則を司る紅蓮の法石。


「だからですね。もう常に体感気温があっちっちで、普通の服なんて着られないわけです。常にお肌を晒して放熱しないといけないんで、紅貴石って大変なんですよ?」

「……もしかして、紅貴石ってそれが普通なのか?」

「まあ別に……おかしい恰好では無いですよね。法術なんて、初級者が大半なんですから」

「…………」


 メイジの全裸寄りの半裸な服装を再び一瞥して、うーむ、とルルスは思った。


 己の法石を通じて、世界の物理法則を操る技術……法術(コード)


 その初級者は、一度歪めてしまった法則が上手く身体と馴染まずに、様々な問題……俗に言う法石障害を発症する場合がある。熱の法則を操る紅貴石ならば体感温度の異常や発汗症であったり、水流や氷結の法則を操る蒼水晶ならば、寒冷症であったり。


 しかしそういった症状も、熟練度や経験と共に改善されていくものなのだが……。


 もしかして……

 この500年の間に、法術って退化してしまったのか……?


 昔に比べて法術の技術レベルが低くなってしまったおかげで、こんな破廉恥極まりない紐パン見せつけ系ファッションが普通になってしまっているとか……?


 ルルスはそんな、一抹の不安を覚えた。


「おっ! 見てくださいよ、師匠!」


 メイジがそんな声を上げる。


「ついに見えてきましたよ! 誉れ高き、結社『工房(アトリエ)』の総本山!」


 林を抜けた先に見えてきたのは、巨大な都市の遠景。


「アダマス法国の首都……法都ニルニア!」


面白かった!

続きが気になる!

頑張って!


と思ってくださいましたら!

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次回更新は、明日7時!!!

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