表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『短編』 過去そして現在


 暑くなってきた高校二年の7月。昨日、学校の帰りに親友から相談をされた。

 親友は気が弱く大人しい性格な為か『いじめ』にあっている。

 暴力的ないじめでないのが救いだが、俺はこの現状を何とかしたいと思っている。

 「もう限界なんだ、助けて欲しい」と。


 彼の親しい友人は少なく、同じクラスだと俺しかいない。

 中学の頃からの付き合いだし、何より俺の一番の友達だから……

 一年の時は別のクラスだったから気がつけていなかった、彼は一年間ずっと耐えていたのだろう。

 一年間もの長い時間、誰にも言えずただ我慢し耐えていた彼の心はかなり疲弊している様だ。二年になり同じクラスになり彼の現状を理解した。

 俺はこの件について全力で力になろうと決めた

 「俺に何が出来るか解らないが、必ず助ける」と彼と約束をした。


 小学生の時、今と似たような事があった。あの頃は何もできなくて友達は転校してしまった……後になってから凄く後悔した、何か行動していれば変わっていたかもしれないと。

 あれから何年も経って少しは成長している、今度こそ友達を救う、同じ後悔をしない様に。

 だけど、自分に何が出来るのか……どうすれば救ってあげれるのだろうか……

 イジメているのは隣のクラスの男子グループだ。昼休みや放課後、あとは体育の時間に『いじめ』ているみたいだった。

 どうやって彼を救うか……教師に言う?たぶんダメだろう、学校はいじめを認めないと思う。

 どうすれば……夏休みまで後少ししかない、長期休暇前までに決着をつけたい。なるべく時間をかけずに素早く解決させたい。何をしたらいい?何が出来る?

 多分一人では無理だろうな……一人で無理なら人数を増やせばいい、信頼できる友達に頼んでみるか。

 

 早速電話して協力して欲しいと伝える。そして、どうやって解決させるかも話し合い方向性も決めた。後は明日から実行するだけだ。親友にも電話し決まった内容を伝えた。

 明日からは、昼休みは俺と友達と彼で一緒に過ごしてもらう。放課後は俺と一緒に帰ってもらう、友達は部活があるので放課後は二人でって事になった。

 体育の時間も友達のグループと出来るだけ一緒にする。常に誰かと一緒にいる様にして、手を出せない状況を作るのだ。いじめをさせない様にしつつ、親友に友達を増やしてもらう。俺たちが出した答えがこれだ。

 ――あれから一週間が過ぎた。 

 行動を共にする様になってから今の所『いじめ』は確認されていない。最初は三人で始まったけど、今は他のクラスメイト達も参加してくれたりしている。親友にも友達が増えてきていて良い感じだと思う。

 この一週間で親友の環境は大きく変化した。もうすぐ夏休みになる、昼休みには夏休みに遊ぶ予定など話している。

 そして放課後、親友と二人での帰り道。

 「最近は『いじめ』の方は平気か?」

 そう尋ねる、すると親友は笑顔で答えてくれる。

 「うん、あれから一度もされてないよ!本当にありがとう!ボク一人じゃどうにもできなくて、辛くて……勇気を出して相談してよかった」

 「俺も一人じゃ救ってやれなかったから、みんなが協力してくれて助かった。友達も増えたみたいだし、前より明るくなったみたいで良かった」

 まだ安心は出来ないけど、このまま続けていけば相手も諦めるだろう。過去では救えなかった、だけど今度は救えそうで嬉しい気持ちになる。


 ――夏休みも終わり新学期が始まった。

 休みの間、友達と一緒に遊んだり、勉強したりと楽しい時間を共有できたみたいだ。もちろん俺も。

 学校が始まっても、親友の環境は良いまま続いている。うちの学校は2年から3年になる時もクラス替えが無いので卒業まではこのクラスメイト達と一緒だ。親友は高校生活の1年を辛い思いで過ごしてきた、だから卒業までこのまま楽しい時間を仲の良い友達と過ごせる。


 

 時は流れて、明日は卒業式だ。あれから何事もなく『いじめ』は終わった様だ。

 今は放課後で教室には数人のクラスメイトと話をしている。そろそろ下校時間だ、みんな帰る準備をし挨拶して教室を出ていく。しばらくすると、親友と二人だけになった。

 「あの時助けてくれてありがとう。君に相談してなかったら、ボクは今ここにいなかったかもしれない。みんなには感謝してる、けど一番感謝しているのは君なんだ。ありがとう」

 そう言って頭を下げる。

 「俺さ、小学生の頃に友達を救えなかったんだよ。何もできなかった、何もしなかったんだ。それで凄く後悔したんだ、だから今度は必ず助けるって救ってみせるって決めたんだ。……そして俺も救われたと思う。だから、俺からもありがとう」

 そして俺も頭をさげる。頭を上げると二人で笑顔になる。

 「さぁ帰ろうぜ!」

 「うん!」

 そして教室を後にした。きっと彼とは今後何年経っても親友でいれると、そう思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ