表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壊命  作者: 綾 瑜庵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/84

永遠に続く言葉


 君に託す為に産まれてきた数々の言葉。僕の心の中から君の中へと流れ込んだ時、僕は君の前から姿を消す。


 ……その日まで、君の事を刻み込み、君に託す――


 プルルルル。


 電源の中へとは入り込む、無住の人物。今から何が起こるのか、理解出来ずに、ただ身を任せ、僕の元へと近づいてくる。耳の奥に付けられている声が、焦りなどの(わだかま)りを吐き捨て、僕の脆い精神状態を支えてくれている。


 僕に乗り移った『憎しみ』の代償がズキズキと(うず)き、赤黒くなっていく。何故、こんな気持ちになるのか分からない。変な執着に囚われ、奴の心に応えるだけ。


 七時の合図と共に消灯されていく舞台。


 キリキリ舞う死神に囁かれながら、一か所に集まり、(つど)う人間ども。


 泣けばいい。

 苦しめばいい。

 何倍も、何十倍も、苦痛の蜜を味わうがいい。

 誰にも止められないと言うのなら、俺が止めてやる。


 理性を崩し、怒りに身を任せる僕は、自分が何者で、何をしようとしているのかさえも分からなくなっている。


 『あんたから、ノコノコと出向いてくれるなんて有難い。で、話って?』

 「啓吾(けいご)さん、しおりの居場所知っているんでしょう?」

 

 悲しそうな表情の僕を凝視しながら、突き放すように言った。


 『何で、俺が……』

 「……知っているんですね?」


 もう一押ししながら、啓吾(けいご)の表情の変化を(とら)え、確信に変わっていく。

 

 「お願いがあるんです」

 『……俺は、あいつと組んでいるんだ。今更裏切れねぇよ』

 「そいつの為だと言ったら?」

 『え?』

 「宮戸(みやと)がそれを望んでいたら?」

 『裏切りを?』

 「はい……」


 何の為に、そんな事をするのだろうか、と啓吾(けいご)は不思議で仕方なかった。自分の欲望の為に、人体実験をしてきた宮戸(みやと)が何故、そんな事を望むのか……僕は知っている。


 この汚い世界の呪縛から逃げ去りたい。本当の意味での自由になりたい。

 宮戸(みやと)は心の底で、それを望んでいる。


 ◇◇◇◇◇


 全ての内容など、話さない方がいい。僕が話してしまったら、宮戸(みやと)の心は崩れてしまうから……。


 啓吾(けいご)と別れ、あいつらの集う場所へと行き、最後の時を過ごす。ここの奴らもそう。憎しみに()がれて、自分自身を失っている。それから逃れられる事はない。一人、一人が変わらない限り。絶対に……。


 『野洲やす。久しぶりだな。最近顔出さないから、心配してたんだ』


 KTの言葉の寂しさが、心臓の呼吸口(こきゅうぐち)を締め付け、この居場所から離さないようにする。


 『な、呑まねぇ?』


 KTの誘いを断る。


 「顔出しに来ただけだから、今日は帰るよ」


 ――パタン。


 静かな音を奏でながら、寂しい声が漏れた。言葉に出来ない言葉。


 永遠に続く言葉が……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ