永遠に続く言葉
君に託す為に産まれてきた数々の言葉。僕の心の中から君の中へと流れ込んだ時、僕は君の前から姿を消す。
……その日まで、君の事を刻み込み、君に託す――
プルルルル。
電源の中へとは入り込む、無住の人物。今から何が起こるのか、理解出来ずに、ただ身を任せ、僕の元へと近づいてくる。耳の奥に付けられている声が、焦りなどの蟠りを吐き捨て、僕の脆い精神状態を支えてくれている。
僕に乗り移った『憎しみ』の代償がズキズキと疼き、赤黒くなっていく。何故、こんな気持ちになるのか分からない。変な執着に囚われ、奴の心に応えるだけ。
七時の合図と共に消灯されていく舞台。
キリキリ舞う死神に囁かれながら、一か所に集まり、集う人間ども。
泣けばいい。
苦しめばいい。
何倍も、何十倍も、苦痛の蜜を味わうがいい。
誰にも止められないと言うのなら、俺が止めてやる。
理性を崩し、怒りに身を任せる僕は、自分が何者で、何をしようとしているのかさえも分からなくなっている。
『あんたから、ノコノコと出向いてくれるなんて有難い。で、話って?』
「啓吾さん、しおりの居場所知っているんでしょう?」
悲しそうな表情の僕を凝視しながら、突き放すように言った。
『何で、俺が……』
「……知っているんですね?」
もう一押ししながら、啓吾の表情の変化を捉え、確信に変わっていく。
「お願いがあるんです」
『……俺は、あいつと組んでいるんだ。今更裏切れねぇよ』
「そいつの為だと言ったら?」
『え?』
「宮戸がそれを望んでいたら?」
『裏切りを?』
「はい……」
何の為に、そんな事をするのだろうか、と啓吾は不思議で仕方なかった。自分の欲望の為に、人体実験をしてきた宮戸が何故、そんな事を望むのか……僕は知っている。
この汚い世界の呪縛から逃げ去りたい。本当の意味での自由になりたい。
宮戸は心の底で、それを望んでいる。
◇◇◇◇◇
全ての内容など、話さない方がいい。僕が話してしまったら、宮戸の心は崩れてしまうから……。
啓吾と別れ、あいつらの集う場所へと行き、最後の時を過ごす。ここの奴らもそう。憎しみに焦がれて、自分自身を失っている。それから逃れられる事はない。一人、一人が変わらない限り。絶対に……。
『野洲。久しぶりだな。最近顔出さないから、心配してたんだ』
KTの言葉の寂しさが、心臓の呼吸口を締め付け、この居場所から離さないようにする。
『な、呑まねぇ?』
KTの誘いを断る。
「顔出しに来ただけだから、今日は帰るよ」
――パタン。
静かな音を奏でながら、寂しい声が漏れた。言葉に出来ない言葉。
永遠に続く言葉が……。




