表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壊命  作者: 空蝉ゆあん
8/84

PC№2


 赤い光が僕の頬を撫で、優しく起こす。光から逃げるように、布団に顔を押し付ける。時間が経つ事に、意識が現実世界へと入り込み、全てをリセットする。ゆっくりと瞳を開け、ぼんやりとした表情で座り込んでいる。目の前に立ちはだかっている時計に目をやり、時間を確認する。短針は八を示し、長針が十二を示している。


 意識の行き届いてない頭でゆっくり考えながら、今が八時だと言う事が分かった。『ウィーン』と音を出し続ける音を聴いて、ハッと目が覚めた。


 僕はおどけない表情で、パソコンの元へ行き、マウスを動かしてみた。何かの終わりの象徴のような黒い画面があの不思議な画面へと移り変わる。


 僕は目を擦り、視野を確認する。


 ≪一つの鼓動が貴方を狂わせ、昔の貴方へと歩み始める≫


 猛烈な悪寒と共に、激しい頭痛が脈打つ。


 (昔の僕?)


 両手が恐怖で震え、マウスがカタカタと小刻みに音を発する。早くパソコンを終了したいのだが、手が震え、上手く的に収まらない。


 それを読み終わると、画面がシャットアウトし、動くのを止めた。


 『慶介?何してるの?遅刻するわよ!』

 

 机の上の置き去りにしておいた市販の頭痛薬を握り締め、口に放り込んだ。カリッとそれを噛むと、口の中が苦みに支配された。


 近くに飲み物はないかと、探し、コップに入っている水を流し込み、口の中を支配している苦みを喉の奥に追いやった。


 制服のポケットから携帯を取り出し、混乱をかき消すように、疑問を募らせるようにメールを打ち出した。虚ろな瞳で画面を見続けている僕を、気味悪そうに横目で見てくる大人達。送信ボタンを押すと、溜息を吐き、周りの大人達に刃の瞳を剥きだした。

 

 (まただ…)


 片方の手は目頭を押さえ、もう一方の手は拳に力を入れた。僕の背中にピタリとくっつき、憎悪と共に僕の心を惑わす。そいつを跳ねのけようと、意識を集中させ、全身に力を入れる。


 口の中に鉄さびみたいな味が広がってゆく。僕は我に返り、唇をそっと触れた。肌色に赤い液体が染まっていく。


 指についた血を舐めた。


 少し切なくなった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ