雷鳴の中で……
僕は何て弱い人間なのだろう。黒い霧が立ち尽くす中で、輝いているものを守り切る事の出来ない情けない男。すぐ黒く染まり、悪意を吸い込んでしまう心。僕はすぐ汚くなってしまうから……。
お前には輝いていてほしい。
お前に汚水は似合わない。
極上の魂を隠し持ちながら、ただ悲しみの渦に身を任せ、怒りに支配されているお前は、本当のお前なんかじゃない。言葉では言い表せない想いの数々を心の中で唱える。唱えるだけじゃ、伝わらない。言わなきゃ意味がない。
時が止まったかのような感覚と現実の行動の波動が全く噛み合わず、しかめる。心と体の妙なバランスが崩れかけている証拠。
身を取り巻く全ての時間が、徐々にずれている事に気付いている・封印されたはずの≪心のエキス≫が堂上の姉、美佐子さんの心によって解き放たれた。
――破壊リスト
事務所から盗んできた、堂上の作成した『復讐』の内容を見て、鉛のように重たい不安が積もっていく。
――ドスドスドス。
ダメだ、と思う度、ほら、また『音』をたてて積もる。
「宮戸、まだか?」
急かすように、何度も問いかける。宮戸は冷たく、挙動不審な視線で頷く。その姿がより一層マイナスなものを呼び寄せ、車両に置かれていく……。
カーブが多く、殆ど車の通らない所で『破壊行為』をする必要があるのだろうか。直観が交差し、一つの答えを弾き出す。
きっと『此処』で行う事に意味があるのだろう。
深い深い、誰も考えつかない『理由』が……。
冷静さを失った僕は動物へと堕ちていく。それを予期するように、車のスピードが急速に上がっていく。
雷鳴と共に流れ出る酸性雨が機体を濡らし、前に進めないように立ちはだかる。
――闇の信者が現れ、全ての物語を作り出す。
≪ここから先に行ってはいけない≫
予言と思われる言葉が耳を刺激し、酸味を漂わす。道の両端には黄緑色の草花が美しく飾られている。
人が植えた訳じゃないのに、お互い邪魔する事なく綺麗な列を作り、生き延びている。それを対比するかのようなボロ小屋が建てられている。宮戸がブレーキを踏み、機械のテンションを『低』に作り上げていく。エンジンの叫び声が無音の中に入ろとして新しく生まれ変わっていく。