息切れ
ハァハァハァ。
息が途切れる中でひどく冷静な表情を見せる。そいつは、もう女と言うよりも、どちらかと言えば男に近い。表情、動作を観察していると、その違いがはっきりと分かってしまう程だ。こんな奴を『女』と思っていた自分が恥ずかしい。
眉間にシワを寄せ、熟年の刑事が見せるような表情を僕に見せる。
『ね。これ見て?』
肩をツンと叩き、僕の脳に『確認書』を叩きつける。両面に喰いついている様子を見ると、何かの情報が入手出来たのだろうか。
『上手くいったわ。ハッキング出来た』
「何これ?迷路?」
『……多分、機械の構図だわ』
「何故、こんなものを?」
女の横顔を見ながら、問いかける。
『貴方も気になるでしょう?……それに、これを調べれば、あの老人の言う『行事』の内容も明らかになるわ』
パチンと音を立て、画面を畳む。
スウと苦味の混じった緑色の液体を口に含み、食道へと導いていく。
『あたしの腕、たいしたもんでしょう?』
自信満々な表情を見ると、どうしても認めたくなくなる。本当は『まだまだ』と批判の声を浴びせてやりたい所だが、心とは裏腹に褒めの言葉を口にしてしまった。
――腕はいいにしろ、その性格がアダがつく。
『あ、あたしの名前、教えてなかったよね。あたしの名前は中江。よろしく』
差し出した手を見つめながら硬直する身体。僕、一人でやりきりたいという願いが固く結び、解けないようにと余計絡まり、ややこしい形へと進化する。
こいつと手を組むんじゃない。
それだけは覚えとけ。
縺れ離れようとしない『それ』が僕の声に耳を貸し、僕の意思と共に潜り込んでくる。




