黄金色の空
赤と白との交互。全ての思惑を象徴する色。だからこの色を選び、この色で染めた。黒もいいけど、優等生ぶっているようなイメージがあるから好まない。それに黒だと絡まれやすい厄介な色だ。
『紀宝野洲さんやね?遅くなってすんません』
腰に手を沿え、身を任せる姿が弱々しい。
「いいえ、今来たところですから……」
タバコに火を灯し、僕に気を使いながら吸い始めた。
『やめようと思うんだけど、止めれないんだよな。依存って怖いよな。君も一服どうや?』
愛らしい笑顔を振りまき、タバコを差し出した。この一本でカラになる。いいのだろうかと思いながら、ふけてると『遠慮しなくてええから』と進めてきた。僕は顔色一つ変えず、手に取り、口に咥えた。
ホストのように速い速度で、ライターを近づかせ、瞬く間に火をつける。
『石橋が俺に人を紹介するとはなあ。あいつもだいぶ大人しくなったんやな』
昨日の事のように、思い出にふける姿が年齢層の違いだろうか。
『君やったから紹介したんかもな』
ふと漏れた言葉の意味が飲み込めず、目を見開く事しか出来なかった。疑問の漂い流れる僕を見て、思い出し笑いながら昔話を始めた。聞く耳持たずと思っていたのに、何故か興味が沸き、話に聞き入る。幼少の頃の思い出、初恋の時の様子、そして裏世界に入っていた時の真実。
話を聞けば聞くほど、僕に似ているような気がする。考え方、行動パターン、そしてやろうとしている事、全て……。
『あ、すまん。退屈な話聞かせてもたなぁ』
頭をポリポリと掻きながら、苦笑する。
「いいえ」
首を振り、表情を和らげると、ホッとしたような顔で、再び笑顔を見せた。
『時間、大丈夫?』
「はい」
『では、行くとするか』
コーヒーと紅茶の代金を払い、店を出た。空は黄金色に輝き、未知の世界を示した。何かに憑りつかれたように、大空を眺めていると、肩にソッと手を置いてきた。
『いつもに増して綺麗やったなぁ。君を歓迎してるのかもな』
――歓迎か……。
見た目いい大人なのに、この人の心は少年のように澄んでいる。全てを取り巻くものに対しての感謝や、喜び。ここまで表情に出せる人はいないだろう。
チクッと首の辺りが痛む。
羨ましい気持ちが、彼の背中に注がれ、僕をよりちっぽけな人間に見せようとする。嫌味を言いたいけど、言ったら何かが崩れ出す。僕の感情を安定させるのは僕自身だ。
痛みを堪えながら、涙が流れないように耐えながら足を速めた。