夢と無垢
僕の夢は警察官。それでそれで、悪い奴らをやっつけるんだ。
え?何で警察官になりたいのかって?
それはね、それはね……。
あの怖い『おじさん』達から僕を守ってくれる警察がカッコイイから。今はさ、忙しくてここに来れないけど、いつか必ず助けに来てくれるよ。
――待ってるもん。僕!
幼い頃の戯言。
警察官をヒーローと同じような目で見ていた。ピンチの時、いつでも駆けつけて来てくれて、悪い奴らから守ってくれる者と信じてやまなかった。あの時、目指していた憧れが、僕等を苦しめる魔物へと成り下がっている。
全てが現実で、今までが偽り。目を向けたくなくても、向けてしまう。……これが現実。
胃液が逆流してくるほどの苛立ち。他人の発する言葉の一つ一つが無神経に傷つける。その痛みから逃げようと牙を剥き、敵と見なした者に飛び掛かる。自分が悪いのに、反撃すると顔を顰めいい子ぶる。
――僕、何もしてないよぉ?○○君が、僕の悪口言ったのぉ……。
母のスカートの裾にへばりつき、いい子で優しい、母親が喜ぶ子供を演じて見せる。裾の間から注がれる見下した目。勝ち誇り、勝利を確信した表情。
本当の自分を見せる事も出来ない癖に。演技するしか出来ない癖に。
◇◆◇◆◇
明日の九時。
先ほど、奴らから連絡があった。僕が紙の上の組織となり、初めて目にする破壊。破壊と言っても何をするのだろうか?テロ?全てを奪い叩きつけるのだろうか。
雄介からの忠告。
奴らに関わるな。
資料が足りない事に気付き、一通のメモがあった。
――分かっているさ。
僕の知らない所で何が起ころうとしているのか、実際起こっているのか気になるじゃないか。あの男達の事も知りたいし、何もしなければ後悔してしまう。そんなのは嫌だ。例え死んでしまったとしても、僕は堂上とKT達の後を追う。誰にも見せはしない。例え雄介だろうが、見せてはいけない。雄介に抱いている信頼よりも、堂上達の方が大きい。危ない奴らだが、奴らの持っている何かが、僕を惹きつける。
破壊組織を作り出した人物。そして……、細胞実験に携わった人間を、裏の顔を持った人間を徹底的に潰す為だけに生きてきた男。その事自体に強く惹かれた。KTの話す『堂上』も興味を沸かす人物だが、破壊行為はそれ以上に興味深い。
心臓から手に微かな振動が伝わる。
手を伸ばしボタンを押す。
(これを押せば……)
―― す べ て が は じ ま る ――
ゴクリと唾を飲み込み、震える手を抑えながら耳に当てる。
後一時間で、明日になる。
『『ゲームスタート』』




