表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壊命  作者: 綾 瑜庵
33/84

嘘と信頼②



 『彼女を失った堂上(やつ)は哀しみにくれた。数日間は悲しみの方が多かったが、徐々に悲しみは薄れ、怒りが込み上がってきたんだ。あいつは言った。『潰す』って。怖かったよ……。鬼みたいな顔で、男を睨みつけてた。何年かかっても、どんな手を使ってでも構わない、って』


 芋虫みたいなものが、脳を食い荒らす。身に覚えのある感情が加速していき、殻を作り守ってきたものを破壊していく。


 『そして堂上は奴らを破壊する為に『組織』を立ち上げた』

 「組織?」

 『そう。大人達の欲望を、叩き潰す為の破壊組織をな。堂上は頭も切れるし、どんな事でも自分のモノにしちまうから、困る事などなかった。……でも、たった一つだけ堂上でも分からない事があった』

 「それは何?」


 煙をうまそうに吸うKTの姿が、狼のように、この世のものとは思えない程、醜く見え、恐怖を与える。


 どんなものでも、自分のものにする人間。そんな人間でさえ、理解出来ない事とは一体何だろうか。妙に興味が沸き、少年のような輝きが瞳を制する。


 『男達が…いや、正確には三園(みその)が作り上げたチップの仕組みがどうしても分からず、三園(みその)に近づいた。時間が経つに連れ堂上に惚れていった。大の大人が十五のガキに本気になるとは、誰も予想してなかったがな。ま、惚れるの分かる気がするよ。あいつ、いい男だから』

 

 ふと寂しそうな表情を零す、KTの気持ちが移ってきたように感じた。キリキリと激しく痛み、孤独を増す。KTと自分の立場を塗り替えて、考えてみる。愛しい女が男に溺れていくのなんて見たくない。しかし、その感情とは反対に、幸せになってほしいという願いが募る。


 『堂上(あいつ)はその瞬間を見逃さなかった。三園(みその)を煽るように、チップの事を聞きだし、彼女を仲間へと引きずり込んだ』


 大きなため息を吐き、何かを吹き飛ばすように無造作に頭を掻いた。


 あいつは化け物。

 何を考えているのか理解出来ない化け物。

 周りの人間の命を吸うドラキュラ。


 KTから聞こえる声。喋っていないのに、聞こえる偽物(うそ)。いや、もしかしたらこの声が本心かもしれない。


 曇った瞳、颯爽(さっそう)過ぎていく時間の中で移り変わっていく心。一つ一つの行動が矛盾に思え、チクチクと針で打つ。

 

 「堂上が作り出した組織と、男が作った組織は別物?」

 

 溝に叩きつけられ、沈んでいた意識が、僕の言葉によって舞い戻ってきた。


 『ああ。そうだよ』


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ