曖昧な関係④
僕を包む周りの世界がガラスに包まれ、視界を遮る。向こうで笑っている声も、人も、表情も、作り物のように動き、僕を混乱させる。初めは戸惑いを隠せなかったが、時間が経つに連れて、その光景が当たり前となり、脳にインプットされていく。キラキラ輝きながら、フィールドを通す万華鏡のように思えた。
イスに座った瞬間、目に付いた異様な光景。誰にも見られないように、隠しているように、佇んでいる。激しい動機に駆られながら、手を伸ばす。横目で雄介の様子を伺い、音を立てないようにと注意深く開ける。
無数の紙くず、書類が顔を出し、泣き叫ぶ。
助けて…ここから出して、と言っているように……。
ゴクリと唾を飲み込み、呼吸を保とうとするが、無理だ。
上条啓吾。年齢21歳、出身東京都、韓国や日本を往復し、クスリなどを密売しているとの事。コードネーム0089。幼少の頃に親と死に別れている。たった一人の妹がいる。旧姓『宮戸聖』
鴻上瑞樹年齢26歳、出身大阪府、現在東京都に在住。優秀で頭のキレル要注意人物。過去に色々な人間を裏で操り、試作品チップを作り出した第一人者。コードネーム0001。現在名は『琉羅木三園』
堂上年齢15歳。出身不明。行動力と観察力に優れており、三代目組織のリーダーとして組織を纏めている。破壊行動を起こし、テロや殺人を繰り返している。
主に10代が目立つ。僕等があの監獄にいた時から、時間が経過した事を知らしめている。あの頃は見た目30代や40代が多く、10代なんていないに等しかったのに、今ではほぼ10代が割合を占めている。雄介はこれを知ってどうするつもりなのだろうか。
チラリと目線を注がせ、睨み続ける。
氷のように凍り付いた空気が漂い、苛立ちを沸かす。
数えてみると同じ内容の資料が数枚あったので、その中の一枚を掠め取り、ポケットに突っ込んだ。