プロローグ: 1 出会い
―――四時間目終了の鐘が響いた。先生が号令を済ませると同時に俺こと『時宮 連』のクラスの生徒たちの大半は食堂に向けて走り出していった。俺は家でいつも弁当を作ってきているので走る必要は無く、ゆっくりと体育館裏に向かった。俺はクラスの友達とは交流を持たない。というか持ちたくないのだ。俺からしたら友達は邪魔でしか無い。中学生の時、俺は試しに友達を作ってみようと思い、思い切って話しかけてみたが、コミュ障の俺にとっては知らない人に話しかけるのすら苦痛でしかなかった。高校に入ってからは、もうそんな過ちはしないとちかい、友達という存在を作らないようにした。結果、俺はこうやって一人飯をくっているのである。
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ヘルメシス帝国の第三皇女『アール=エミリス』は技術班の倉庫で悩んでいた。目の前にある異世界転移装置を使うか否かを。
「う~ん。やはり永久凍結をほどこすべきかな」
悩んでいる内容としては明確だった。これはこの世界とは違う世界。つまり異世界に行くことの出来る装置だ。しかし、装置は誰も試したことの無い試作品にしか過ぎないのである。その中に自分が入るなんて危険きわまりないのだ。
「まだ悩んでおられるのですかエミリス様」
エミリスの後ろに立っていた老人秘書『バーナティス・オルペン』が訪ねてきた。
「しかしなぁオルペン。私は怖くないがこの中に入るのには勇気がいるのじゃぞ」
「私に良い考えがございます」
「おお!あるのか?」
顔にいかにもうれしそうな表情を浮かべながらエミリスはふりかえった。
「ええ。エミリス様は異世界に結婚相手を探しに行かれるのですよね」
「ま、まぁな。姉様たちに先を越されては困るしな」
「じゃあ。良い方法があります」
その内容を伝えられたエミリスはまるでなにか重いものから解放されたかのような笑顔を浮かべながら
「おお!オルペン。お主さえとるの。良しこれから技術班に頼みに行くぞ」
そう言いながら足早に倉庫を後にして技術班のいる工場に向かっていった。
――――
昼休み終了の予鈴が鳴り響き、俺は教室に向かっていった。扉を開け教室に戻る・・・はずだった。なぜなら俺が今たっている場所は教室ではなく暗闇の中にいたからなのだ。戻ろうと後ろをふりかえるも、教室のドアが無くなっており、その代わりに金属の壁があった。うろたえながら周りに何があるのか確認してみると、ここが筒状になっているのが分かった。耳を当てると、この鉄の壁の先に誰かがいるのが分かった。『おーい開けてくれ』と言おうと壁をたたこうとしたその時、壁が奥に開かれた。
「え?」
俺は再度たたこうとした反動で前に体制を持って行かれ、そのまま地面に倒れてしまった。俺は自力で起き上がり、目の前の彼女に問う。
「え~とここはどこなんだ?」
こんな状況に立たされているのに逆に冷静な自分に驚いた。俺は銀色の髪の毛に短髪で何故かドレスに身を包んでいる彼女の返答を待つが、全然帰ってこない。
「え~と」
「ふん。まぁいいわ」
随分と唐突に帰ってきた声はすごく透っていた。しかし何が良いのか分からなかった。
「ここはヘルメシス帝国。あなたはこの私、第三皇女アール=エミリスの婿になることが今現在確定しました」
俺は、返す言葉が見つからなかった。まず最初に浮かんできた言葉は何で?だった。でも最初に言うべき言葉は
「おことわりします」
「な、何で?こんな美少女どこ探してもいないわよ」
自分で美少女って言われてもなぁ。
「何で、って俺は学校の教室に向かっていたのにいきなりこんな所に飛ばされて、いきなり結婚しろだなんて了承出来るわけないだろが」
俺の言っている言葉は正論だ。間違ってはいない。
「でも、さっきの装置壊れちゃったし。元の場所に戻すことは99・9パーセント無理な話だし」
え?今なんて言った?元の場所に戻すことはほぼ無理?いや、悲しむやつはいないだろうけど・・・
「てか、何で俺なんだよ」
「知らないわよ。ランダムなんだから」
「実験は成功しましたかエミリス様」
後ろから歩いてくる。老人に俺は目が行った。
「ねぇオルペン。こいつを元の世界に戻すことはで」
「無理ですね」
即答だった。俺は肩を落とし、倉庫の外に出た。刹那。俺は目の前の景色に目が奪われた。東京では絶対に見られないような風景。左を見れば森林が広がり、右を見れば大都市と思われる。その大都市の出入り口らしき場所からは一本道が広がっており、ここだけじゃ無く他にもここと同じような町や都市があるのが見受けられる。この倉庫の立地はおそらく発明した装置や機械が失敗して爆発したりしても二次被害がおきないようにしているのだろう。
「すげぇ」
俺は感嘆な声を漏らした。
「すごいでしょ。ここからが一番周りを見渡せることの出来る場所なのよ。姉様たちはこの場所知らないでしょうけど」
「ああ、すげぇよ」
俺にとってはすごいとしか言いようのない場所だった。
「エミリス様だっけ?」
「エミリスで良いわ」
「やっぱり俺は結婚は断るわ」
「え?何で?」
さっきまでの笑顔とは別にすごく困った顔をしたエミリスは俺に聞いてきた
「いやだって、俺結婚できる年じゃねぇし。第一、俺に惚れる要素なんて無いだろ」
今までこんな風に女子と話したことが無かったのに、以外とスムーズに会話が進むのは不思議だった。
「三ヶ月!」
「は?」
「三ヶ月私と付き合いなさい!」
こんな強引な告白を受けたのは初めてだった。いや、二回目か。どちらもこいつだけど。でも、顔を真っ赤にしてでもこう言うってことは俺に惚れたか、もしくは何か問題があるの二択だ。多分答えは後者の方だろうが。
「何で三ヶ月なんだ?」
「そ、それは」
「それは私が答えましょう」
さっきまで後ろで黙っていたオルペンと呼ばれてたじいさんが言った
「エミリス第三皇女殿下は、三ヶ月後に行われる女王選定戦に参加されるのです。その参加条件として現女王陛下の娘であること。そして、自分で見つけた相手を連れてくることなのです」
じいさんはなぜか誇らしげに答えた。
「で、三か月付き合ったところで、俺がここから帰ると言ったらどうするんだ?」
これでエミリスは折れるだろう。なぜなら俺を呼んだのは女王選定戦に参加するためだ。最初から断っている俺よりも違う奴を選ぶだろう。しかし、エミリスは少し悩んだ後に言った
「その時はその時よ!」
あ、ダメだ。こいつ見切り発車タイプだ。俺はそう思いながら一つの質問をした。
「ところで、何でおれを呼んだんだ?」
「へ?そんなの知らないわよ。ランダムよランダム!さっきも言ったでしょ!」
良かったな同年代で・・・
「?どうしたのよ」
いいや、何でもないと返し、俺は倉庫内に入りながら
「分かった。帰る場所も無し!帰れる方法も無しならとことんやってやろうじゃねえか!」
俺は倉庫いっぱいに響き渡るような大きな声で叫んだ。そこまで響かなかったが
エミリスは数分前に見せていた真剣さからめい一杯な笑顔を俺に見せながら
「ええ。私もそのつもりよ!」
そう言った。俺はその笑顔をこれから一生忘れないだろう。
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