第2話 深夜のコンビニ
深夜十一時。
とあるコンビニの駐車場に、三人の男がいた。二十代前半から半ばくらいの若者たちだ。
煙草を吸う者。
飲料を飲んでいる者。
携帯を触っている者。
それぞれ違うことをしているが、笑いながら雑談をしていた。
人も車も少ない時刻。当然、駐車場には彼らが乗ってきた車とコンビニ店員の車だけ。
そこへ。
一人の女が現れた。音もなく。闇の中から出てきた。
長い黒髪を靡かせ、男たちを見つめる。そして、足を前へ踏み出す。靴音が静かな闇夜に響く。
三人の内の一人――飲料を飲んでいた男が、女の存在に気づいた。この時、すでに女は側まで来ていた。
店内の明かりに照らされ、暗闇でも分かる女の顔。そこには面が掛けられていた。能面だ。しかも、小面である。それに、女の右手には鉈が握られていた。
「なに? 俺たちになにか用?」
「なんか刃物持ってるし」
「鉈じゃね、あれ」
残りの二人も女を見て、怪訝そうな表情を浮かべた。そして、口々に喋る。
が、女は反応しない。
喫煙していた男は、煙草をスタンド灰皿へ捨てて女へと近寄る。その行動を誰も止めなかった。
一歩、二歩と歩いたら。
男の耳へ微かに聞こえる程度の声が届いた。
女が、なにか呟いているのだ。
男はそれを聞くため耳を近づけようと身を屈めた。
その時。
女の右手が動いた。
鉈を振り上げ、一気に男へと下ろす。
鋭い刃が男を切る。
「……へ?」
吹き出る赤い液体。
なにが起きたのか、男たちの頭がついていけなかった。
傷口を。
血を。
鉄の匂いを。
切り落とされた肉片を。
先程まで生きていた友が倒れてたのを。
認識して、男たちは悲鳴をあげた。