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幕間 - nowhere 奇遇-
御読み頂き有難う御座います。
「めぐりあい」を「奇遇」と訳すような感性に憧れる今日この頃です。
夜、森の中にて少女が一人佇んでいた。
今し方視界の開けた森の大地に何百年ぶりかの月の光が差し込む。
少女が今日この森を訪れたのは単なる偶然であった。
何の気なしに立ち寄ったに過ぎない。
少女の足元には一人の少年が転がっている。
彼女の半身となった少年だ。
少女と同じ色だった黒い髪は少女と異なる白銀へと変わり、少女と異なっていた黒の瞳は今や少女と同じ美しい紅玉の様な緋色をしている。
少女は月を見上げ、涙を零す。
何故だか分からない。
自分でもよく分からない感情が胸の内で鼓動することなき少女の心臓を打つのだ。
少女が今日この森を訪れたのは紛れもない偶然であった。
どうしてであろうか。
少女はそれが偶然ではなく必然であればよいのに、とただそんな風に思った。