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暁に星を見るもの  作者: 春夏冬秋茄子
プロローグ 転生により運命の輪は廻り出す
1/90

はじまり

 ――『ワールドクロニクル』

 ゲーム業界を席巻したフルダイブ型のオンラインゲーム内の始まりの街、中世の街並みに悠然と建つ白亜の神殿の前に戦士然とした一人の黒髪の少年が立っていた。

 どこか遠くを見ているようなその目は生気を感じられない程虚ろである。

 彼はこのゲームにおいて古参という訳でもなくかといって新参とも言えない程度の中堅どころのプレイヤーであった。名前も本名から取ってクロノという何とも平凡なものである。


 ベシッ!

 顔に突風に煽られた新聞が張り付く。

 別にこんなところまでリアルじゃなくていいのに……


 ――『最強のパーティボス実装!?』

  全ての力を持って立ち向かえ! 次回アップデートの乞うご期待☆


 乞うご期待☆じゃねーよ!!

 クロノは地面に新聞を叩きつける。



 ――え?そういうのはちょっと……。


 ほんの数時間前に彼が一世一代の告白をした女性から頂いた有難い御言葉である。

 そんな彼女の目には若干の困惑……いや正直に言おう。ドン引きだった。


 『永久の指輪リング・オブ・エターナル』――このアイテムはこれを贈った相手のステータスの一割を自分のステータスに上乗せするという課金アイテムだ。しかしこのアイテムの真の利用法はそれではない。これは告白用に作られたアイテムなのである。説明文にはこのアイテムを持つものは神の祝福を受け、永遠に一つとなる、などと書かれていた。ちなみに同性でも受け渡し可である。ネタアイテムのくせに性能がいいためそういう意図とは関係なくつけているプレイヤーもいたが戦略結婚やプライドを捨てたホモなどと揶揄されていた。


 まあそれはともかくとしてこのアイテムを手に意気揚々と告白を行い、勘違い野郎のレッテルを靴に着いたガムの如くべったりと張り付けられ今この状況に至るというわけである。

 最早彼女と同じギルドでのうのうと過ごしていくなど出来ない。

 こうなれば全てを一からやり直そう、そう思ってこの『転生神殿』を訪れたのである。


 クロノがこれから行おうとしているのは『ランダム転生』と呼ばれるものだ。

 『ワールドクロニクル』ではレベルアップ時に自分でステータスを割り振り、それに種族補正・職業補正が付くシステムになっている。『転生』ではレベルを初期値に戻す代わりに『転生ボーナス』の付いたステータスポイントを振り直すことが出来る。種族・職業の選び直しも可能だ。


 しかしこれから行おうとしている『ランダム転生』は通常の『転生』とは大きく異なる。ステータスの割り振り・種族・職業に至るまで全てがランダムで設定される。その代わり通常の『転生』よりも『転生ボーナス』が格段に高く、種族・職業も転生時よりワンランク高いものとなるのである。一部の廃プレイヤーは強いアバターを作るためこれを利用してステータスを上げ、望むステータス値になるまで転生を繰り返すという作業をしているが一般的にはほとんど利用されない。なぜなら転生は最高レベルまでレベルを上げなければならないし、通常の転生と違い、職業ツリー無視なので正直だるくてそんなことは廃プレイヤーぐらいしかしない。最もそれはゲーム初期の話でレベル上限が千となった最近はそんな奇特なプレイヤーも見られず産廃システムとなっている。


 だが彼にとって一から全てをやり直すには丁度いいと考えた。

 どんな糞アバターが出来たとしてもどうせゲームだ。それはそれでも構わないと思った。


 そして彼は歩き出す。その選択が彼のこれからを大きく変えるとは知らずに……。


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