魔王が怖いです。
()=主人公の心の声・ちょっとした説明
《》=魔法名
「」=日本語
『』=日本語以外・あだ名
まぁ、大体で大丈夫です。
奇怪な笑い声を上げる大妖怪を倒そうと光線を放ち、洞窟に穴を開けてから更に一ヶ月が過ぎた。
むやみやたらに洞窟を穴だらけにするのは流石にまずい、というよりも異世界から来た新人が好き勝手するのは気が引ける。
そう言う訳で《はかいこうせん》は控えていた。
「……でもね」
この洞窟、広過ぎ!
なんなの?上に傾いている坂道を進んでいたはずなのにいつのまに元の位置に戻っているとか、三分くらい落ち続けられる落とし穴とか!
(なんなんだここ!リスポーン地点が最悪だよ!)
魔法を使って洞窟の構造を調べようとしたけど、広過ぎて中々全体像が見えない。
右の道に入ったら、左の道に出るし。魔法を使ったら、魔法への障害があるのか明らかに違う地形の場所に出たりするし……
「うーん、取り敢えず、こっちで良いはずなんだけど……」
それで良かった憶えはないけども。
僕の目標として、まず、外に出たい。
それで他の猫科の魔物を見るんだ。
カリィノ(僕)の小さくて可愛い四足をとてとてと動かして、洞窟の奥に進む。
魔法で飛んだりワープして移動してもいいんだけど、身体が貧弱なので鍛えないといけない。
うん、地道に歩こう。
というよりもワープなんてして埋まったらと思うと、怖くて出来ないってだけなんだけどね……
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それから何時間か歩いていると、道の中央で堂々と立っている全身真っ黒で角と翼を生やした人型の魔物を見つける。
僕はそいつらを便宜上『悪魔さん』と呼んでいた。
こっそり見つからないように横の道を抜けようとしたら。
……なぜか目が合う、と。
おかしいなぁ……気配と姿を消す魔法《隠居生活》を使ってたんだけど。
……僕のネーミングセンスは独特って、中学生の時に友達に苦笑いで褒められたことあるよ。
『ククク……!やっと見つけたぞ……!我が同胞をよくも傷つけてくれたなぁ……!』
やっぱりクククって笑うんだ。そんなイメージだよね。
『悪魔さん』の言葉は本来なら「ウブデュブデュブブ」などとしか聞こえないけど、これも僕の魔法の《言語濾過》で日本語に翻訳してます。
『そんなこと言ってもなぁ、君の仲間が先に襲ってきたんだよ?』
そして僕の言葉が相手に伝わるようにする魔法は《伝わってマイボイス》という。僕はこの名前も気に入っている。
……二週間くらい前、目の前のとは別の『悪魔さん』に出会い頭に、見た目から闇の魔法みたいなのをぶっぱされた。
だけど僕は魔法を反射する防御魔法《アルベド100%》を常に張っていたから、彼は自分の魔法で自爆した。死んではいなかったけど。
たぶん、その時の事だろう。
『黙れ、この悪魔め……!同胞の魔法を反射するなど、不可能に決まっている!』
あ、僕が悪魔なんだ。
『じゃあ何でもいいから魔法を放ってみなよ』
『……ククク、その誘いには乗らぬ。オリハルコンさえ割ることが出来る我が爪で、微塵切りにしてやろう!!カァァア!!』
と勢いよく襲いかかってきたけど、面白いくらいに『悪魔さん』は吹き飛ぶ。
『グァァァアアア!?』
『あーっはっはっは!効かないよ!出来るものなら僕の対物理防御魔法《侵入禁止区域》を破ってみるんだなぁーッ!』
元気な『悪魔さん』のテンションに悪乗りする。
この《侵入禁止区域》は物理攻撃が一メートル以内に近付いたら大気圧を利用して云々って細かくあるけど説明は割愛。
『ば、馬鹿なぁ……!近付くことも出来ないのかぁ……!?おのれぇ……!』
『ああ、もう、面倒くさいなぁ。《強制土下座》!』
『ぬぅぅう……!?』
すると『悪魔さん』は見事に土下座の姿勢になる。抵抗しているようだがよっぽど怪力じゃない限りは抜け出せないだろう。
この魔法は面白いから説明しよう!
《強制土下座》とは、下への重量を何百倍にする上に、へそあたりに小さな重力場を生み出すことで身体を縮こませ、あたかも土下座しているようにさせる鬼畜魔法だ!
喰らっている方は堪ったものではないだろうけど、見てるぶんには楽しい。
……まぁここまでで分かると思うけど、僕はかなり魔法を使いこなしている。それこそ攻撃の魔法からちょっとした魔法まで。
いやー、ね。チート楽しい。
『……じゃあ僕はこっちに行くから、追ってこないでね。ばいばーい』
『……っ!ぬぅぅ……!そちらに、だけは!行かせて、たまるかぁ……!!』
『うわっ。あのー、無理しなくてもいいんだよ?』
前回、あっちから襲ってきたとはいえ彼の仲間に攻撃してしまったのでなんとなく気が引ける。
言葉が通じると分かるとどうも殺しにくいんだよね。
因みに大妖怪さんは《言語濾過》を使っても、ただ馬鹿みたいに笑ってただけだった。
『きぃ、さぁまぁ……!!余裕のっ、つもりかぁぁぁぁあ!!」
『いや~別に嫌味じゃないんだけどね~』
僕は振り返ることもせずに『悪魔さん』が通せんぼしていた道の方を進む。ほら、こういう場合って敵が居た道が正解だったりするじゃない?
行った道は珍しく真っ直ぐで、長々と続いており、横に抜ける道さえ無くなっていた。
「これ、行き止まりだったら、またこの道を歩かなきゃいけないのかぁ……」
その場合は魔法を使っちゃおう、と自分を甘やかしていると、壁が薄っすらと見えてきた。
だがよく見てみると、それは壁ではなく、扉だった。
魔王の間への扉のような、金や銀で装飾された派手でおどろおどろしい、高さ十メートルはある謎の扉。
「いやこれは……魔王いるでしょ……」
行きたくないけど、石と魔物しかない洞窟でコレを見つけて、僕に戻るという選択肢は無い。
「おじゃましまーす」
無遠慮に風の魔法で扉をこじ開けて中に入る。
燭台の火で照らされた広過ぎる室内の中央に幅広な真紅の毛長のカーペットが奥まで続いていて、その先に玉座があった。
ただし、横に……何十メートルも有るどでかい玉座だが。
何より、その大きな玉座の上でさえはみ出そうになるほど巨大な西洋のドラゴンが横たわっていました。
そのドラゴンがゆっくりと口を開く。開いた口の大きさだけで僕が今まで出会った魔物を全部入れられそうだ。
『……よくぞ来た。小さき王よ』
……あなたの方がどこからどうみても魔王なんですけども。




