そして現在に至るのです。
展開早いですけど、今月(この話の時点で8月21日)中には終わる予定ですから。
ギルド長を名乗るジャッキルに付いて行った先の個室の中で、僕たちはふかふかな長椅子に座って向かい合っている。
ゴゴは男らしく腕を組んで座り、僕はゴゴの脚の間に座っていた。
ジャッキルはうざったいくらい長い髪をかきあげ、鼻息を漏らしてからゴゴを睨む
「さて。色々と聞きたい事がある。まず一つ目……テメェは、何者だ?」
「ゴゴだ」
「……答える気はない、か。そんじゃあ次。その猫はなんだ?」
((敬愛し畏敬する大好きラブラブプリチーなペットのカリィノだって言って))
「ペットのカリィノだ」
「……そうか」
あれ、なんか足りないんだけど。ナチュラルに命令を無視したよねこのゴーレム。もう意識が自立しているのね……
「んじゃ、これでラスト。テメェは俺たちの敵か?味方か?」
((喧嘩を売るなら買うとだけ))
「もし貴様が敵対するなら、潰す」
「……はー、扱いにくい奴だ。ちっと腕が立つくらいだったらねじ伏せてんだけどなぁ……」
僕が見る限り、このジャッキルという男は人間の中ではなかなか強い方であることがわかる。
ゴゴが本気なら、このギルドなど一分もせずに壊滅できるだろうね。僕は一瞬だろうけど。
うーむ、しかしどうも最近は僕のチートぶりが発揮出来てないような……
「ていうかよぉ、こんな室内なんだから兜くらい脱いだらどうだ?」
((うーん……好きにしていいよ))
「……遠慮しておく。あまり人に顔は見られたくないものでな」
「あっそ」
ジャッキルは降参といった風に万歳して大きな溜息を吐き、首を曲げてポキリと鳴らし、片目を閉じてゴゴを見る。
「……はいはい、特例でテメェは二階級特進で中級者だ。はぁ、隙がなさ過ぎだ。ったく、嫌になるなぁ、おい」
「済まん、感謝する」
「もう出ていいぞ。どうせテメェは俺ごときじゃ拘束出来んしな」
元気出して、ジャッキルさん。
かなり痩せてるからもっとお肉を食べた方が良いよ。
というかさっきから随分と自虐しているけど、ジャッキルさんは人間のうちでは強いよ?アマミウズさんよりちょい弱くらい、かな。
ゴゴには当然負けるだろうけど、強い魔力を内に秘めているね。
「あ?なに見てんだ、おい。猫」
「……みゃあお」
でも、ガラが悪いなぁ……
#######
それからというもの。
ゴゴを記憶喪失者ということにして、口調以外は親切なレブロさんにこの世界での常識やマナー、様々な知識などを与えてもらった。
服に関してだけど、口調は以外は親切なエードさんに動きやすい服を用意してもらった。もちろんゴゴが。
……ゴゴは連戦連勝、無敗無双、八面六臂の活躍ぶりだ。一番凄かったのは、東洋の龍っぽいのを開きにした時かな。
冒険者登録して、たったの数日間でゴゴは『黒鉄騎』という字で呼ばれるようになり、ランクも上級者になって、有名人に成り果てていた。
僕は『黒鉄騎』の寵愛を一身に受ける、ゴゴの愛猫というポジションである。みんな任務に行く前に僕が居ればひと撫でしてから出発してる。
凄いだろう!はっはっはっは………虚しい。
それで、今に至るという訳。
魔物の群れを一人で片付けたゴゴは【獄王】にこびりついた血を蒸発させ、《異次元ポケット》に仕舞って戻ってきた。
((主、終わりました))
((ご苦労様。子どもの成長っぷりを見るのも楽しいけどねぇ……))
((主はこれからも滅多な事がない限り、攻撃魔法を使わないで下さいね?地形が変わります))
一回だけ、洞窟の奥に潜んでいた討伐レベル240のリッチーが現れた時があった。
僕がソイツとゴゴの相性は悪いと感じて《はかいこうせん》をぶっ放したら、洞窟が洞窟じゃなくなってしまったのだ。昔より威力上がってたなぁ。
討伐レベルについてだけど、ゴブリンキングで90くらいらしい。ふーん。
魔物の群れとの勝利に喜ぶギルド仲間に囲まれていると、滅多に姿を見せないニート野郎のジャッキルが現れた。
「よぉ、お疲れさん。ゴゴ、この後ヒマか?」
「ずっと暇だ」
「……テメェは時々、清々しいよな……ま、それは良かったぜ。実は、王様から直々にテメェに召喚状が来ている」
ギルド長の言葉にざわめきだすギルド仲間たち。その中の一人、レブロさんが腕を組んだまま解説をしだす。
「……王様ってーと『狼破王』の事だなぁ?首都『ザクロアシア』からわざわざお手紙が来たってのかぁ?」
「ああ、そうだ。『黒鉄騎』様の噂は王様の耳にも入ってるっつーことだよ」
実はゴゴが記憶喪失だということを話しているのはレブロさんだけで、こうして皆が知ってるような事をさりげなくゴゴの前で言ってくれるのだ。レブロさんマジ内面天使。
それにしても王様か……順調にテンプレイベントを踏みつつあるとすれば、それこそ騎士にでも登用されるのかな?
「………………」
((……ん?ゴゴ、ジャッキルさんが難しい顔をしてるから、どうしたのか聞いてみて))
「どうした、ジャッキル」
「いや、その。俺は『狼破王』の所に行くのは、反対でなぁ」
「……何故だ」
「『狼破王』が『狼破王』と呼ばれる所以があんだよ。絶滅寸前の獣人の人狼種であるのは知ってるだろうがなぁ……なんでも、強者を呼び寄せて破壊するのが娯楽なんだってよ」
「それが、王なのか」
「事務処理から民衆の人気取りまで、仕事は完璧だから誰も口を出せないらしい。それと、いかな強者でも悉く死んでるっつー事だ」
ギルド長の言葉に、先程とは毛色の違うざわめきが起こる。ゴゴを心配するざわめきだ。
すると、黙って聞いていたエードが「ひっひっひ!」と笑いだし、視線が集中する。
「あんたらぁ……馬鹿だな~?ゴゴがぁ、たかが人狼に殺られるように見えんのかぁ?コイツがぁ?ひゃっひゃっひゃ!『雲喰龍』を開きにするやつがぁ?ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!滑稽な心配だなぁ!」
「……はん、確かにな。で、どうするゴゴ?行くか?行かないか?」
((……主))
((うん、楽しそうだから行こうか。僕ずっとヒマだし))
というかそろそろ観光したい!『ザクロアシア』かぁ……どんな街なんだろうなぁ……ふふ、楽しみだな。
という事で、『狼破王』とやらの元へ行く事になりました。