表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/28

冒険者登録です。

 慌てるなかれ、僕。


 ここで冷静に対処すれば「てめぇ、新人のクセに!」と殴りかかってくれるに違いない。

 邪険にしてもいいが、他の人間の心証が悪くなるのは避けたい。


((ゴゴ、何の用ですかと冷静に聞くんだ))

「……失礼ですが、何の用でしょうか」

「いやぁなに!どぉやら、冒険者登録のカウンターを間違えてたみたいだったからなぁ?俺が先輩として!色々と、教えてやるよ?」


 ニタァと悪人面の大男が笑う。

 いいねぇ、それであれだろ?「授業料を頂こうかぁ!」とか言っちゃうんでしょ。

 周りも気付きはじめたようで、気の毒そうに視線を送ってくる。


((主。いかがなさいますか))

((まぁ、断わって。登録の場所はもう分かってるし、そっちに行こう))

「……結構だ。失礼する」

「おいおいおい!待てよ、装備だけは一人前みたいだが、冒険者になるっつーのが……どぉいうことか、知らねぇ訳じゃあないよなぁ?ああ?」


 ふむ、これは「後輩になるに当たっての礼儀を教えてやるよ!」という流れかな?

 ゴゴの前に回り込んだ大男は嫌みたらしい笑顔を近付かせて言う。


「死と隣り合わせの任務を、時には強制的にさせられんだぜぇ?生半可な野郎だと、おっ死んじまうぜぇ?んん?」


 ……うん、ゴゴを舐めてるんだろうな。カウンターを間違える程なのに、装備は立派だから嫉妬してるんだろう。


「失礼」

「おっと!怒ったかぁ?新人さぁん?ほらほら、頭に血が上っちゃったかなー?」

「……冒険者登録を頼む」


 挑発してくる大男を無視して、ゴゴは受付にて冒険者登録を終える。

 書類を書き終えて、ゴゴが振り返ると、まだそこには大男が立っていた。暇か。


「あ~あ、やっちまったなぁ?冒険者になっちまったな~?」

「……だからなんだ」

「公式に、俺は先輩。お前は後輩になったというわけだ?分かるかぁ?」


 おっ、おっ、来たか、ついに来たか!?

 まだ返答するな、とゴゴに指示して大男の言葉を待つ。


「ははは!どうやら気付いたようだな!そうだ、俺がお前の報酬を頂くことも出来るのさ!」


 ゴゴには、まだ待てと指示。もう一言、決定的に理不尽なことを言った時、やっちまえばいい……!


「いつ死んでもおかしくないような危険な緊急任務が下った時ぃ……お前は前線に出れない!何故なら俺が代わりに出るからだぁ!覚悟しておけ、お前が新人の内は干からびるほど報酬を奪ってやるからなぁ?はっはっはっはっはー!」


 そう言い残した大男は、哄笑しながらギルドを後にした。

 ……え、あれ?うん?

 僕が困惑していると、周りで見ていた者の一人がゴゴに歩み寄る。手の中の小さなナイフを弄んでいる。


「ひっひ、お前さん。レブロに目を付けられるとは運がねぇなぁ……ひっひ!」

「……貴様は?」

「俺っちか?俺っちはエードだ。よ、ろ、し、く、な?新人」


 こいつはー……さっきの大男、レブロっていうのかな?に、威を借りてるような男なのかもしれない。

 それで、コイツはレブロを盾にして小銭を稼ごうとしてるんだな!?


「他の奴らからは『裁縫屋』と呼ばれている。なんでも縫い合わせてやるぜ?ひっひ!」

「……感謝する」

「ひっひっひ!そうそう、感謝しな!殊勝な心掛けだなぁ?ひっひっはー!」


 高笑いを残して、『裁縫屋』エードとやらもギルドを出ていった。

 ……あれー?

 よく分からない状況にゴゴに指示出来ないでいると、冒険者登録の受付の熊耳おばさんが話し掛けてきた。


「あなた、凄いわね。あの二人に初日から絡まれて、驚かないなんて。怖かったでしょ?」

「……ええ」


 いや、やっぱりそうだ。

 最初は優しく接して、後からどんどん過激になっていく奴らなんだ!


「あの二人はねぇ、見た目は恐いけど、新人がいると放っておけないらしくてね……もっと優しく話し掛ければいいのにねぇ?」


 …………はい?


 え、嘘やん……そういうの、ちゃうやん……え?あれー?

 動揺していると、近くに居た、席に座っている普人族のお兄さんも笑って言う。


「俺も最初はビビったけど、レブロさんは新人の頃は良くしてくれてな……確かに報酬が奪われたことがあったんだが、後日、倍近い額のメシを奢ってくれたんだよ」


 続けて、お兄さんの横に座っていた猫耳のお姉さんも嬉しそうに言う。


「私が実力ない時もさー、レブロさん、無理矢理任務に着いてきて、前線で戦ってくれたんだよね~。今でも、あの時教わった戦いのノウハウを使ってるし」


 今度は、妙齢の犬耳の女性が食い気味に会話に参加して言う。


「エードはあんなだけど、裁縫の腕は確かで凄いわよね。私なんてこの前、服を作って貰っちゃった」

「へ?エードさんに!?ズルいですよ、先輩!」

「はぁ……あの二人が新人に構っているのを見ると、どうも新人に戻りたいなぁって思う時があるよなあ……」

「「わかる~!」」


 う、うわぁあ!やめろぉ!僕ぁそんな、実は良い人なんですっていうエピソードが聞きたいんじゃあない!

 こ、こんなんじゃあ完全に……!


((完全に。思考だけは血の気の多い主の方が悪者でしたね))

((言わないで、というより、思っても伝えないで……))


 うう……レブロさん、エードさん。勝手に悪い先輩扱いしてゴメンなさい……

 なんで僕はこうも、微妙にテンプレから外れてしまうだろうね……


 そのまま帰るのはどうもスッキリしない。

 ゴゴに指示して、当初の目的の任務を受けることにした。


 内容はゴブリン退治。


 ゴブリンキングと呼ばれる強力な魔物が統治する、ゴブリンの巣が発見されたので駆除を依頼されたということ。

 新人の内はゴブリンを五匹倒せば任務は完了となり、報酬を受け取ることが出来るけど……


((ゴゴ……それじゃあ、ゴブリンの巣を滅ぼしにでも行こうか))

((御意))


 さぁ、憂さ晴らしの時間だ。


冒険者ランクの勉強。


下級(新人)→亜下級→中級→上級→最上級→天級


となっている。


・任務の難易度毎に数字が設定されており、その数字を満たすと次のランクへ上がることが出来る。

・下級なら十の2乗、亜下級なら十の3乗、中級なら十の4乗……となっていく。

・一気に二段階以上上がることは不可能である。


(補足)ゴブリンの巣を破壊し、ゴブリンキングを倒した場合は約12,000ポイントの実績。


ちなみにレブロは上級、エードは中級である。


終わり。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ