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ゴーレム作りです。

最初から派手目です。

 ーーある日、冒険者が集うギルドへ国から直々に緊急の任務が下った。


 亜人の国『ドルバム』の奥地にある、『邪獣超森林』と呼ばれる危険な森林地帯から魔物が大量発生し、街へと向かっていたのだ。


 そして現在、中枢の街へ進軍していた魔物の群れを『アルコ平原』にて冒険者たちが食い止めている。


 その中で一際目立つ、異様な者が居た。


 黒く輝く鎧を身に纏う者。


 その鎧の者が赤黒い刀身の大剣で魔物へ切り込むと、その一撃で硬い甲殻を持った魔物でさえチーズのように切り裂かれる。

 返す刃では傍観していた魔物たちの首が、次々と、ポロポロと落ちていった。


「………………」


 鎧の者に怖れをなす有象無象の魔物たち。無作為に襲い掛かるが、それも例外なく、アッサリと叩き斬られている。

 まさに無双。

 黒き鎧の者の前には、五秒立つことが出来た魔物は未だ居ない。


「凄ぇ……大人数が推奨される任務が、ほぼあいつ一人で片付いてんじゃねーか」

「あれが最近噂の『黒鉄騎』か。鬼神のような強さだな」

「はぁぁ……『黒鉄騎』様、素敵です、あの腕に抱かれたい!」

「私、それ言ったことあるけど『私が抱くのは一人だけだ』って返されちゃった、一途で、強いなんて……やっぱり抱いて!」


 ……そうだろう、そうだろう。

『黒鉄騎』はカッコイイだろう。もっと、もっと褒め称えてもいいんだぞぉ!あっはっは!


「バーカ。あいつの「抱く」ってのは「抱き上げる」ってことだ。なぁ?カリィノー?」

「……にゃーん」


 泥臭い戦場には似合わない、可愛いカリィノ(僕)がつまらそうに返事をする。


 ハッキリ言おう。

 僕も無双したい。


((主が戦闘した場合、この程度の魔物は一瞬で灰になるでしょうから大した感慨も無いかと))

((いーから。ゴゴは目の前の魔物に集中してて))

((御意))


 魔物を屠りながら僕に念話(テレパシー)で話し掛けてきた『黒鉄騎』を脳内であしらう。


 どうしてこうなっているかと言うと、僕が亜人の国『ドルバム』に来た一ヶ月ほど前まで遡ることになる。


 あ、こっから僕の回想です。



 #######



 空を飛んで亜人の国までやって来た僕は、行動方針を決めることにした。

 人が少ない崖の割れ目に身を潜ませて、そこを活動拠点にしている。

 涼しく、湿度も低い良い寝床だ。


「やっぱり異世界に来たからには、冒険者になってみたいよねぇ」


 亜人の国の都市は切り立った崖を利用して広がっていて、人間の時の僕だったら広さを把握することは難しかっただろう。

 わかりやすく言えば、グランドキャニオンが全部都市として機能してるって言えば、凄さがわかるかな?


「冒険者……なんと甘美な響きだろうか。それじゃあ、人間に化けてみますか!」


 それで冒険者ギルドに行って……(妄想中)……ふっふっふ。


 そうと決まれば早速!

 イメージしてー。

 魔力を込めてー。

 はぁ!!!


 ………。


「……あれ?」


 いつもならどんな滅茶苦茶な魔法でも、大半はすぐに出来るというのに。


「ん、んー……人間に化けるのは高度な技術なんだろうね。テロスさんが出来たんだし、僕が出来ないわけないさ!はっはっは!」


 その台詞は実に見事なフラグだった。


 一時間後。


 愕然とした、依然猫の姿のままの僕がいた。

 人間に変身することは、叶わなかったのである。


「馬鹿な……!これじゃあ人間の友達ができた後、何かを切っ掛けに猫の姿に戻って「ゴメン、これが僕の本当の姿なんだ……」みたいなことが出来ないじゃないか……!」


 それか、度々現れて助けてくれる謎の強力な猫の魔物……その正体は身近にいた僕だったー!

 みたいな。


「くそう……テンプレが出来ないなんて!僕はなんのために異世界に来たんだぁ!」


 にゃおおおんッと意味もなく叫んでみる。誰も反応をしてくれない。淋しい。


「……淋しい?」


 そうだ。異世界無双ものでまだ試していないのがあったね!


「ゴーレム!ゴーレム作成だよ!むちゃんこ強いゴーレムを作って、そいつで無双させるんだ!」


 そう思い立ったは良いんだけど、出来るかなぁ。

 小説によってゴーレムの種類というか作り方はまちまちだけど……


「まぁ、色々試してみようかな。魔力なんて掃いて捨てるほどほどあるしね!」


『ドルバム』の土地も石や土が豊富だし、いくら使ってもかまわないよね。



 一体目。微妙な候補。

 土や石に直接魔力を込め、人型にしてみる場合。

 結果。

 固い。

 喋らない。

 命令しなきゃ動かない。

 人のような動きをしない。


 ボツ。


 二体目。有力候補。

 魔核なるものを創り出し、それを中心にして土や石を固め人型にした場合。

 結果。

 自立できる。

 喋らない。

 土や石は脆いまま。

 人のような動きをしない。


 ボツ。


 三体目。やや有力候補。

 人の関節を持った人形を作って(この為だけに何回か街に行った)から、ゴーレムになるように魔力を込める。

 結果。

 命令しなきゃ喋らない。

 動きも命令しなきゃならない。

 材質は軟らかいので簡単に壊れる。


 ボツ。



「はぁ~~~……駄目だ」


 異世界に来て、ゴーレム作りが一番苦労している気がする。次に苦労したのは生まれた後に立つこと。


「ぬー、上手くいかないなぁ……そうだねぇ、次は全部併せてみようかな?」


 というわけで。

 三つの特徴を併せたのを作ってみた。

 ボディとなる土や石を人の動きをとる人形の形にして、それに魔力を込める。

 そして地球でいうAIの役割を担った魔核を埋める。


 結果。

 その試作機一号は、成功した。


 試作機だったのでカタコトでしか喋らず、動きも鈍かったがゴーレムとしての強さや、人間らしさはほぼ完璧だ。


「よし、よし!いけるぞぉ、じゃあ次は本気で作るとしようか……!」


 強固な骨、強靭な筋肉、鷹並みの視力をもつ目玉、違和感のない声を出す喉、本物のような見た目の皮膚……などなどを徹底し、更にはパーツ全てに限界まで魔力を込めた最高の肉体(ボディ)


 魔核はボディより時間が掛かった。

 ありったけの魔力を注ぎ込んで創ったのは勿論のこと、脳であり心臓の役割を持つ魔核には言語や魔法、自立し成長する人格をプログラムしていった。

 僕のイメージだけで行われたから、むしろ大変だったなぁ。


 ああ、人格に関してだけど。僕の前世の友人をほぼトレースさせてもらった。

 居合の道場の跡取りで、剣道と薙刀がどちらも四段の奴だった。さっさと次の段を受けたいとか言ってたねぇ。

 動きを何回も見せて貰ったけど、そりゃあもう素晴らしかった。速くて綺麗だった。

 剣じゃなくて刀と薙刀だけど、とにかく棒状のものを振る動きは悪くない。


 そうして出来上がったのが。

 浅黒い皮膚。

 漆黒の短髪。

 黄金の瞳。

 身長175cm。

 無駄な部分がない美しい肉体。


 の、女の子。


 ………………うん。


 あの、弁明していい?


 身体作りに拘った結果、不眠不休で一週間掛かった訳でね。

 肉体は疲れない、でも精神の方が擦り切れて仕方なかったんだよ。

 冗談抜きにして、精神がボロボロになるまで苦労したんだ。


 それで……出来るのが男?


 自慢じゃないけど前世の僕は異性愛者です。ノーマルです。

 僕はホモじゃないんだよ!

 癒しが欲しいんだよ!

 お喋りがしたかったんだよ!

 だから、女の子でさ、いいよね……?


「という経緯なんだ」


 僕はそう言い訳がましく、見事な正座をしている女型ゴーレムへ告げた。


「なるほど。主は私をつくって下さるために、そんな苦労と葛藤があったのですね。理解には及びませんが」


 ああ、そうそう。僕の友人もこんな感じだったよ。

 上げてから落とすような女性だったなぁ……としみじみ思いました。


次回は鎧と武器の作成。

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