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正体がバレたようです。

この回、地味です。ゴメンなさい。

代わりに次回は派手だと思いますから。

 固まったままの僕に構わず、アマミウズさんは僕の額の『魔始石』をジロジロと観察している。


「ほぉ……おとぎ話のような文献の資料でしか知らなかったが、実在するとはな。うぅむ、感じることは出来んが、この石には一体どれほど魔力が詰まっているのだろうなぁ……なぁ、砕いてもいいかな?クロくん?」


 アマミウズさんは『魔始石』に触れたまま顔を近寄らせて、甘く囁いてきた。

 ぬあー!妙にエロいのが腹立つー!もういいや、喋ろう。バレたんなら仕様がない。


「駄目に決まってるだろ!ああ、もう!僕の耳元でも囁くんじゃあない!」

「……おやおやおや。言葉は通じているとは思ったが、言葉が喋れるとまでは思わなかったよ」


 わざとらしく諸手を上げて、降参のポーズをとるアマミウズさんの顔は驚きで満ちている。

 そりゃあね、いきなり猫が喋ったらそうなるよ。


「はぁ……君の所為で、僕の普通の猫ライフが「ぱー」だよ。こんなにも早くバレるなんて……悔しいなぁ」

「ということは。本当に『王』なんだな?」

「うん、僕の本当の名前はカリィノ。数ヶ月前に生まれたばかりの『王』だよ」


 実際のところ。僕は『王』なんて仰々しい種族(?)ではあるけど、自覚はあまりないんだよねぇ。


「ふはは!やはり私の目に狂いはなかったか。カリィノ、貴方に会えてよかった。ああ……まさかこの目で幻の魔物に会うことが出来るなんて……!」

「感動してもらってるとこ悪いけど、君は僕をどうする気でいるのかな?」

「なぁに、何もしないよ。それに、出来ないだろう?火力が違うのは明白だ。ま、生まれたばかりということだから、簡単な術比べで引っ掛かっていたけども」


 ぐぐぅ……悔しいというか、恥ずかしい。チートを持った僕があんな単純な手口にぃ……


「やれやれ……正体がバレてしまっては、残念だけどモオゴさんとメリエちゃんとは居られないね」

「人間を取り込んで、国家転覆でも狙っていたのか?」

「まさか~」


 僕は欠伸をして(猫の欠伸はダイナミックなのだ)、にやつくアマミウズさんに視線を返す。


「君なら僕をメリエちゃんに大人しく返すでしょ?そしたらモオゴさん一家が利用されて、政治に関わることになるなんてあったら、面倒臭くてたまらないよ」

「ほう、色々と考えているのだな」

「まぁね」


 本音としては「普通の猫を演じてるんだけどな~、バレたらどうしようかな~?(チラッ)」みたいな行動をもっとしたかったんだよ……

 それなのに国に来て、二日目で正体発覚って。どゆことー。


「カリィノの言う通り、何事もなく返却するつもりだったよ。君が『王』であることを言うつもりは毛頭なかったが」

「ふぅん?じゃあ僕、もうどっか行っていいかな?」

「待て待て、慌てるな。聞きたいことが一つある。『タナトス』の事だ」


 あのお馬鹿さんね。ミスダさんか、モオゴさんから聞いたんだろうね。


「あー、ゴメン、それ僕の所為だ。僕が前に倒した奴でさ、恨んで僕を追い掛けてきたんだ」

「そいつがこの街に来ることは?」

「無いね。妙に強いから、まだ大気圏で苦しんでるんじゃないかな」

「タイキケン?」

「ああ……なんでもないよ。気にしないで」


 ……ふふ、見た?僕のさりげない、華麗な、現代知識を知ってますアピール。

 僕は君たちの3、4歩先を歩んでますよーぉって!ふふ、なんて気持ちいいんだろう!


「ふむ、そうか。では『タナトス』は気にしなくていいのだな」

「うん。じゃあ次は僕からも質問。君は史上最強の魔術師らしいけど、純粋な強さだと人の中ではどれくらいなのかな?」

「私か?ふぅむ、そんなこと真面目に考えたことはなかったが……十本の指には入るといえよう」


 えー……そっか。

 それじゃあ本当に僕って無双出来るなぁ。アマミウズさんには負ける気がしないもん。

 火力だけの話だけどね!


「なるほどね、ありがとう。もう一つ良い?」

「どうぞ?」

「僕、旅をしてるんだ。本来なら弱い猫として紛れて、人間と一緒に行動するつもりだったんだけど……バレたからね、今度は単身で何処かに行きたいんだ、どこがいいと思う?」


 要するに「次の旅行先って何処がオススメ?」ということ。


「旅をしてしまうのか……残念だ。ふむ、私ならここから南西にある亜人の国『ドルバム』を推す。情勢は安定していないが、土地は豊かで、陽気な亜人が多いそうだ」

「……いいね、そこにしよ!あ、地図とかないかな?見せて欲しいな」

「えーと、これだ。見せるだけでいいのか?」

「うん」


 体力とか筋力とかは雑魚な僕だけど、内側はチートで、記憶力も飛躍的に上昇してる。

 それこそ『最果ての霊峰』の通った道も全部憶えている、意味ないけど。


 リューノルガ大陸内の国や、代表的な街、大まかな距離なども全部憶えた。


「ありがとう!はぁ~……この国をもっと観光したかったんだけどなぁ」

「クス……済まない。それにしても『タナトス』と対等とは、恐れ入るよ」

「対等なんかじゃないよ。僕にとっては弱い部類に入るな」


 嘘ではない、嘘ではないけど完全な「僕ツエー」アピール。

 ふふん、どや?


「な……え、す、末恐ろしいな。貴方が、人間の敵に回ることは?」

「ない。つまらないし」

「それは、もうなんといえばいいのかな……怖いものなんて無いじゃないか」

「いやぁ、そう言いたいとこだけど。僕より強いのは居るんだよねぇ」

「それも聞いてもいいかな?」

「ええと、テロスなんとかって魔物……なのかな?」

「……テロスオセロス?」

「ああ、そんな名前だったね」

「……どんな、姿だった?」

「えーと、この王宮より大きい龍でね、変身して女性にもなってたねぇ」


 あれ?そういえば精鋭の自宅警備員であるテロスさんの名前でも知られてるんだ。ふーん。


「は……はは……笑いしか出てこんな……神話の存在とは……私の手には余る情報だ……」

「あー、あと僕の出身はなんでも、この世界で一番小さな大陸なんだって」

「ラギス大陸だとっ……も、もういいぞ。やはり、貴方という存在だけで十分だったな」


 蒼ざめた顔で「この情報は墓場まで持っていくか……?」とブツブツ言ってるアマミウズさん。僕は鈍感じゃないからシッカリ聞こえています。


 よーし……そろそろ旅に出ようか。もういいでしょ。

 結局僕はこの国になにをしに来たんだろうなぁ……と、遠い目をしてみる。


「……じゃ、僕行くね」

「ああ……私の事を憶えてくれていたら助かる」

「了~解」


 僕は魔法『空飛猫』を使い、音速(くらいだと思う)で飛んでいく。

 亜人の国『ドルバム』かぁ。三千キロくらいの距離だから、二、三時間くらいで辿り着くかな?

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