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強い魔法使いです。

 誘拐犯の事件(になる前に防いだけど)の後、僕たちは宿に戻って何事もなく過ごした。


 そして翌日、何故かまた王宮に来ていた。僕は例に洩れずメリエちゃんに抱きかかえられている。

 モオゴさんが朝早くにメリエちゃんを起こし、僕も連れて王宮へと足を運んでいるのだ。


「ねーぇー、お父さん。なんで朝から王宮なんて行かなくちゃいけないの?いい加減教えてよぉー」

「まぁまぁ、あっちに着いたら説明するって」


 とばかり問答して、結局なんで王宮に来ているのかが不明なのだ。

 思考を読む魔法も、実はある。でもそれを使うのは僕的ルールに反するから、使わないでいる。

 まぁ……死に直結するようなことがあればなりふり構ってられないけどね。


 あ、昨日開けっぱなしだった誘拐犯が入った穴は塞がっていた。


「商人のモオゴです。こっちは娘のメリエ。娘が抱えているのが、ペットのクロです」

「……はい、確認致しました。案内人に従って下さい」


 へー、ペットって概念は有るんだね。

 案内人の後ろを歩いて、付いていく。足音が柔らかく響く。

 王宮の中は大理石のような素材が柱や壁、天井にまでも使われている。

 乳白色の王宮内は、天国と言われても不思議ではなさそう。と、天国経験者は語る。いや、天国だったのかな、あそこ。


「では、こちらの部屋でお待ち下さい。アマミウズ様はすぐにおいでなさいます」

「これはこれはどうも」

「ねぇ、お父さん……アマミウズって、あのアマミウズ様!?」

「そうさ!最年少で王宮直属の魔術師となり、史上最強の魔法使いと言われている王宮魔術師様だ」


 へぇー、まるでチート転生物の主人公みたいだね。僕も転生してチートだった。よって僕も主人公。


「実は……今回の商品は彼女直々にお願いされたものでな、コネが出来たんだ」

「へぇー!凄い!……うん?それでなんで会う必要があるの?」


 そうだよねぇ。職業が商人のモオゴさんがわざわざそんなお偉い方を呼ぶ理由がわからないなぁ。


「それはな……クロを調べてもらおうかと思ってな」

「へ、クロを?」

(なん……ですと……)


 僕、だって?

 いやいやいやいや、確かにね、『タナトス』を撃退したのはやり過ぎたかなぁと思ったけど、

 逆に言えばそれだけだよ?

 こーんなに可愛い猫を掴まえて、何を血迷ったことを。


「お待たせしました、モオゴさん」


 ノックもせずに堂々と扉を開けて入ってきたのは、ハスキーボイスの美女。地面に着きそうな黒い長髪で、スタイルは抜群。

 白をベースとして、金と緑が美しく刺繍されているローブを着ている。まさに王宮魔術師って感じだね。


 そして何よりも、今まで見た人間の中でもズバ抜けて魔力が高い。わざと隠しているようだけど、よく見れば解る。


(凄いなぁ……『タナトス』よりも純粋な魔力量は多そうだ)

「おお!お待ちしておりました!こちらが娘のメリエで、それで、抱えているのが例の……」

「ふーむ、なるほど……お借りしても?メリエさん?」

(イイ声でメリエちゃんの耳元で囁くんじゃあない……)

「ひぇ!?は、はい!どうぞ!」


 うわーい躊躇なく渡された。


 なんかメリエちゃん目がポーッとしとるやん!女性に恋しちゃっとるやん!

 アマミウズめぇ……ファンが取られてしまって悔しいような気分です。


 それで、アマミウズとやらが僕を手にした瞬間に魔法の干渉を始めていた。

 どうやら僕の魔力量や身体能力を測っているようだが、すでに、完璧に、隠蔽済みである。はっはっは!残念だったな!出直してきな、小娘ぇ!

 ……おっと、僕は可愛い猫だった。やめておこう。しかもまだ子猫だし。


 と、外面で文字通り猫をかぶりながら、内心で調子に乗っていると、アマミウズの魔法の干渉が終わる。


「……ふぅ」

「ど、どうでしたか?アマミウズ様?」

「ええ……魔力も、身体能力も低い、何の害もない魔物です」


 その言葉にモオゴさんは安堵したようにほっと息をつく。


 ふふん、どんなもんだい。身体能力に関しては素だけど。


 しかし、続きがあった。


「気持ち悪い程に、という言葉が付きますが」

(ほぉあ!?)

「そ……それは、どういう?」

「……この私を欺けている可能性があるということです。つまり、まやかしの力量を見せられたかもしれない」

「な、なんと……」


 こ、これはあれか。完璧に弱く見せたことが逆にヒントになってしまったのか。

 でも、バレなきゃいいのさ。僕は何の特徴もない、新種の弱い魔物なんだよ。


「この子をお預かりします。時間が掛かるかもしれないので、今日はこの辺でお引き取りを」

「え、クロ……どうなるの?」

「……私が一日調べ尽くして、やはり害が無いと分かればお返しします……安心下さい」

「ひゃ……は、はい……!」


 また耳元で囁かれて、メリエちゃん嬉しそうですね……アマミウズお姉様とか言い出したらどうしようか。



 #######



 僕が持ち運ばれたのは、おそらくアマミウズの自室。

 綺麗だけど、広くて地味な室内は女らしさが皆無である。


「……そろそろ正体を明かしてもいいんじゃないかな?ここには私しか居ないよ?」

「…………にゃーん」

「ふふ、そう簡単には尻尾を掴ませてはくれない、か。ふはは!」


 ふはは、て。

 危ない、やはりカマかけでしたか。あまりに自然に聞いてきたから引っかかる所だった。


「さてと。今、私は非常に上機嫌なんだ。代わり映えの無い日常、魔法は人間の身では極めたといっても過言ではない状況……退屈してたんだ。そこに、君が現れた」


 アマミウズの言葉の節々には僕の情報を調べる魔法が組み込まれているが、悉く、バレないように偽の情報を伝える。

 それでいて、猫のフリを続けてるんだからカリィノ(僕)は凄いなぁ!


「私が認知出来ないほどの魔法で、私の魔法を弾いている。それだけはわかるのさ。無害かもしれないなんて……欠片も思っていないから安心したまえ」


 なんですと。

 つまり僕のボロが出るのが先か、アマミウズの魔力が尽きるのが先か競うということかな?

 まぁ、僕の魔力は無限に近いから、何ヶ月続けようとも構わないんだけどね。


「……ふふ、本当に何の反応も無いな。史上最強だと持て囃されているこの私が、様々な方向から仕掛けているというのに。君は素晴らしい。それに、可愛いらしい」


 おっ、わかってるねぇ。アマミウズさん、そうなんだよ、カリィノ(僕)は可愛いのさ!

 アマミウズさんが優しい手付きで僕の頭を撫でる。おぅふ、中々のテクニシャン……


「それと。内側だけに意識を向けていると、簡単に足元を掬われますよ?」


 ん?なんのこ、と……


 僕の情報の防御は完璧だった。けれど、僕が身体に掛けた幻惑の魔法が解かれてしまっていた。


(し、しまった……忘れてた!)


 僕の額にある『魔始石』を興味深そうに見つめながら、アマミウズさんは呟いた。


「予想の……遥か上ですね。まさか、幻とされる魔物……『王』とは」


 ……やっちゃった。

職業の勉強。


魔術師=魔法使い


終わり。

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