第三十七話 最悪の再会
なんか、急いで書いたのでなんか、色々とごちゃごちゃしています。ごめんなさい。
世界が終わった日。私の日常は崩れ去った。そして、新たな日常が始まった。
少しこの建物を調べて、懐中電灯と腕時計を手に入れた。時間的には正午過ぎ。残り一時間半を過ぎていた。今なら十分間に合う時間である。
「さてと・・・そろそろ行きますか・・・」
体力が十分元に戻ると、俺は立ち上がってバットを掴んだ。いつの間にか扉を叩く音も消え失せていた。しかし、そのおかげか代わりに別の音が聞こえてきた。
話し声だ。
まだ距離があってゴニョゴニョ程度しか聞こえない。
「・・・・」
俺は意を決して、その声の方に向かって歩き出した。もしかすれば俺と同じでここに逃げてきた生存者の可能性があると思ったからである。
俺は最後の曲がり角を曲がった。
「・・・佐治・・?」
「・・・連太郎?」
そこには倒れている倉橋、座っている佐治、天音さん、進哉の姿がいた。懐かしいという気持ちとともに様々な感情が押し寄せてきたが、今は感動の再会を祝うべきではない。
「生きてたのか・・・良かった・・・本当に」
「何言ってんだか・・・かすり傷一つねーよ」
そう佐治に言った。
「連太郎君・・・」
「天音さん」
「良かった・・生きててくれて」
ちょっぴり涙目になる天音さんの頭に俺は手を置いた。彼女の方が年上だというのに、連太郎が大人に見えた。
「進哉、よく頑張ったな」
「先輩こそ、元気で何よりです」
俺の後輩は敬礼をして来た。軽くそれに頷き、俺は倒れている倉橋を見た。
「それで、この眠り姫は何故起きないんだ?目立った外傷は見られないが・・・」
そこで、佐治は言った。
「男だ・・・やたら体が厳つい奴がいたんだ。そいつは自分に向かってくる感染者を一体残らず全て倒していたんだ。その中に俺たちも例外なく入っているらしく、奴にとっては兎に角・・・戦う。という欲求のみに従ってるように見えた」
「・・・・そうか、そいつの体に他に異常は見られなかったか?」
「異常?・・・」
すると、天音さんが言った。
「あの男からは尋常ではない殺意を感じたわ。全てを破壊する・・・なんて言ったらいいか分からないけど・・・・・ごめんなさい。あまりにも急な出来事だったから」
「いや、それだけでも結構な情報だ・・・」
異常な殺意。破壊衝動。
俺の脳内に倉橋荘二郎のあの凶暴な姿が過ぎった。あれがウイルスの効果だとするなら、恐らく天音さんが言っている男は感染者なのだろう。
「恐らく、そいつはウイルスに適合したんだろう。代償に精神自体が破壊へと変わってしまった。一度、俺もそんな奴と戦ったことがあるが、どうやら武術や戦闘経験のある者が感染すると異常なまでの破壊衝動に駆られるみたいだ」
「そんなのが・・・弱点は何かないの?」
「すまん、悪いがこれといった弱点は見られなかった」
「そう・・・・」
天音さんが静かに返事をした。
「それにしても・・・」
俺は意識が戻っていない倉橋の額に手を当てた。
「有紗ちゃん、頑張ってたよ」
「・・・・そうか」
よく頑張ったな。
俺は数秒間目を閉じた。
倉橋は俺の為にここまで頑張ってくれた。そして、俺はこいつに話さなければならないことが沢山ある。倉橋だけじゃない、佐治や進哉、天音さんに多くのことを語らなければならない。
その為にも、今こんな所で立ち止まっている訳にはいかないんだ。
「うっし!」
立ち上がり目を開ける。
「行こうか。時間も少ない」
「でも、どうするんですか?」
進哉が若干不安そうに聞いてきた。
「俺が奴を引き付ける。進哉と天音さんは倉橋を連れてショッピングモールへ。佐治、動けるな?」
「ああ、問題ない」
「よし、佐治は三人の護衛だ」
「けど、それじゃぁ連太郎君が・・・」
天音さんが言った。
「悪いけど、言い争っている暇はない。こうして俺は生きるという約束を果たしたんだ。次も守ってみせる・・」
俺はバット持つ。
「信じてくれ」
その言葉に天音さんは決意したような目で俺を見直した。納得はしてくれたようだ。俺たちは勢いよく外に飛び出した。
運良く感染者との遭遇はなく、俺たちはショッピングモールまで走る。あの男が暴れているのか、少し近くで戦闘音が聞こえてきた。
それを聞きながらも俺たちはショッピングモールにたどり着いた。
「よし・・・なんとか「ほう・・・それで、俺を出し抜いたつもりか」・・・・」
見れば後ろから男が歩いてきていた。引き締まった筋肉に迫力のある顔。うん、超怖い・・・。
「あーあ、ったくよ・・あんまり、逃げ回るんじゃねーよ」
っ!
男は首を数回捻ると走り出した。
「行け!」
俺は後ろにいる佐治たちに指示を出してショッピングモールに行かせる。振り返れば奴が直ぐ目の前まで来ていた。
「ごぉ!」
「っ!」
初撃の正拳突きをバットを盾にするが、そのままバットごと後ろ吹き飛ばされた。なんとか着地点を確認して転ばないよう上手く着地する。
「ほぉ・・・貴様、それなりと戦いの心得を持っているようだな」
「うるせぇよ・・・こちとら、ゾンビ映画パターンじゃね?みたいな展開でずっときてたのに、なんでここでバトルアクションなのかイライラしてるんだよ」
あいつの目・・・。
男の目は赤く染まっていた。雰囲気も荘二郎に似ているが、奴にはそれ以上の何かを感じていた。
「お前・・・ウイルスに適合したのか?」
「ウイルス?・・・さぁ、なんだか知らねぇが、この前から調子が良くてよ。気分がいいんだ・・・死人を殺してもスカっとしねぇが・・・お前ら見たいな生きてる奴ら見ているとどうにも殺したくて殺したくてしょうがないんだ」
破壊衝動。
「でよ、俺は片っ端から生きてるつえー奴と戦ってる訳だ」
「お前・・・生存者はこの地獄から逃げる為に助け合わないといけないだろうが!」
「はぁ?んなも知らねーよ。俺は戦えればそれでいい。戦う以上に楽しいことって・・ないだろ?」
男の一撃が俺を襲った。
次回は倉橋の話になります。