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haunted world   作者: ぞえ
脱出編
36/42

第三十五話 ウォーク イン ザ シティ

ありがとうございます。



「ってねぇな・・・・あああっ!」


 男の拳は感染者顔を潰し、男の脚は感染者の波をなぎ倒す。


「ちっ・・・大したことねぇな。鈍い人形じゃねーか。あーあ、折角なんでも出来る世界になったつーのに・・・つまんねぇなぁ・・・」


 男は亡者たちの上で、そう呟いた。




 連太郎は知らない。この男が、この脱出計画において最大の難敵になるということを。





















 ラジオから聞こえた声をまとめると、午後二時に溝島ショッピングモール屋上に救援のヘリが来るというものだった。

 正直に言えば信じがたい話だが、もしそれが本当ならここから脱出出来る唯一のチャンスなのかもしれない。

 歩いて嵐山避難所へ行くより遥かに安全な手段である。

 ていうか、さっきショッピングモールいったんですけど・・・と、俺は若干落胆していた。


「よし、そこまで行くぞ。ガキ、そこまで俺の護衛だ!」

「はっ、なんで俺が!」

「おい、あんたらも行くんだろ?」


 そう言って青野母娘に聞いた。青野さんは黙ってうなづく。いや、うなづくしかなかった。


「ふん、なら問題ないだろ?」

「ぐっ・・・」


 確かに。こいつなら襲われそうになったところを無視すればいいのだが、どうやら青野さんたちを人質にするらしい。

 そうなってしまえば確かに俺は身動きは取れない・・・大人しく護衛するしかないか。


「なぁ、これでも来ないのか?」

「ああ・・・儂らはここに留まる・・・どうか、皆さんを守ってくれ・・」

「ええ、おじいさんの言うとおり。連太郎・・君と言いましたね。どうか、皆さんを守ってあげてください」


 ・・・・。


「分かりました・・・それじゃ・・・」


 老夫婦はニコリと笑って俺たちを送り出してくれた。

 やはり悲しい。けど、いつまでたっても後ろを振り向いているわけにはいかない。だから俺は前に進むんだ。





 外はかなり静かだった。感染者は少なく、こちらが大きな音を立たせない限りは安全であった。相変わらずの強烈な匂いと荒れ果てた街に気分はあまり優れない。だが、そうも言ってはいられない。


「さてと・・溝島ショッピングモールはこっちだな」


 田島がショッピングモールの方に指を指して言った。

 俺はコクリとうなづく。


「アア・・・アァァ・・」


 前から一体感染者がやってきた。

 それをゆっくり横に逸れる。

 うん、これならなんとかやれそうだ。そう思いつつ歩き出した瞬間、少し息を飲んだ。前から七体、いやそれ以上の感染者たちがこちらに向かって歩き出してきたのだ。

 耳を澄ませば、後の方から銃撃音が聞こえる。それに吸い寄せられているのか、感染者たちはこちらに向かってきていた。


「・・・・・」


 俺はみんなを引き連れて、横の道に逸れた。だが、その隣の道もかなりの感染者が多くいた。

 こちらには向かってこないが、行く手が消えてしまったのだ。


「どうします?」


 青野さんがそう問いかけた。

 

「・・・って、言われてもなぁ・・・けど、これしかないよな」

「??」


 俺は立ち上がって言った。

 

「三人はこの塀を登ってこの家の影に隠れて下さい。俺が奴らを引き付けるので、その間に・・・・」

「そんな!」

「青野さん、時間がありません。俺も感染者を引きつけた後に直ぐに合流します!」


 俺はそう言って会話を一方的に打ち切るとバットで地面を叩きながら音を出して、走り出した。その音に吊られて周辺の感染者が一斉の俺の方に向かってくるが、どいつもこいつも遅い。


「はっ、大したことない!」


 俺はそのまま中央道を走る。見れば建物から更に何体か感染者がこちらに向かって歩き出していた。

 ちっ、数が多くなってきている。何処かに隠れないと。

 俺はそう思いつつ、近くにあった建設会社の建物に入り込んだ。中は暗いが、感染者の匂いや音がしない。直ぐにドアを閉めて鍵をかけて。近くにあった物でドアを抑える。


「はぁ・・はぁ・・・・よし、これで・・・」


 肩で息をしながら、俺はその場にへたれ込んだ。






次回もよろしくお願いします。

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