第三話 崩れゆく日常
ありがとうございます。
校内は惨劇の嵐だった。
自我が崩壊し、我を忘れた生徒や教師は次々と近くにいる生徒達に食らいつく。そして、食われた生徒もまた奴らの仲間になってしまう。
仲が良かった者も一度捕まってしまえば、簡単にそいつを裏切る。皆、自分のことで精一杯だった。
自分の命の為に友人を裏切る。決して褒められた行動ではないが、これも人間の本性なんだと俺は感じた。
だが、仲間というのはこういう状況において裏切るものではない。この世界では逃げるだけではいかないのだ。
無論、逃げるのは基本だが、どうしても無理な時。逃げる道がない時、大人しく食われるのか?冗談じゃない。
共に戦う友がいるなら、そいつは偽りではなく、親友。というのではないと、俺は思う。
「ちっ、数が多過ぎる。どうする?蓮太郎」
「どうするも何も、この状況から三分の一は感染したとみていいだろう」
「えっと、全校生は全員で六百名。つまり、およそ二百名が感染してるってことか」
「それに皆パニックを起こして冷静な判断が出来ないでいる。だから、俺達以外誰も信用するな。人間なんて、自分に都合がいい人間しか優先しない。生き残った生徒の中で、俺達を優先するアホな奴なんていないだろ」
自分で言って泣けてきた。
「おらっ!」
感染している男子生徒を正面からドロップキックで押し倒し、相手にせずにそのまま走り続ける。
「救いになるのは、動きが鈍いことぐらいか」
「だな。数は多いとなるとめんどうだが、数体なら武器があれば倒せる。そうだ、まずは武器調達しないか?」
「武器か・・・」
さっき椅子で戦ったことを思いだしたが、椅子はダメだ。リーチはあるが重いし、使いづらい。それにあの大きさだがから、こんな所で十分に振るうことも出来んだろう。
何かないかな・・・。
「おっ・・・・」
俺は壁にもたれている男子生徒の死体の手に金属バットがあるのが見える。
そぉと近づき、バットを持った。すると、男子生徒が俺の首元狙って噛みついて来た。一瞬終わったと思ったが、運よく佐治が俺の襟を掴んで後ろに引っ張る。
そのまま跳ね退き、バットを構えて勢いよく上段の構えから奴に向かって振り下ろした。
「ぐっ・・・つつ・・・」
「どうした?蓮太郎?噛まれたのか?」
「いや・・・こいつらの動きを止めるなら、映画なら頭を潰さないとだめらしいけど、意外と頭蓋骨って硬いんだな・・・」
「そりゃ、お前の大事なエロいこと考える場所だ。強固守らないと」
「えっ、それバカにされてんの?俺?」
「大したことじゃない。常識だ」
「んなアホなこと言ってないで、さっさと行くぞ」
バットを肩に担ぎ、階段を上がる。理由は簡単。下の階から奴らが数を揃えてやって来たからである。
上を目指すしかあるまいか・・・。
三階に到着。
「さぁて・・・ここは奴らの数は少ないが、ここまで上がって来るのは時間の問題だ。どうする?」
「三階か・・・・・三階には確か・・美術室、音楽室、図書室ぐらいしか。だが、兎に角ここから出て行った方がよさそうだ。ぐずぐずしてたら夜になる。こんな無防備な状態の場所で一夜を過ごしたくないからな・・」
と、奥で叫び声がして来た。
「いやっいやぁぁぁぁぁぁ!」
「アアアアァ・ガァァ」
奴らは容赦なく生徒に食らいつき、その死体を貪る。
きっと心の弱い者などはパニックに陥って体が動かなくなり、奴らの餌食になるのだろう。
順応性。
これがこの世界のルールでもあるのだ。
「ちっ、東階段はもうダメだ。俺達が上って来た西階段からも来てるな・・・」
佐治が階段の下から聞こえるうめき声を聞きながらそう言う。
「仕方ない、取り合えず美術室にでも立て籠もるか」
そう言って、俺達は美術室に滑り込んだ。
ヒロインさんはもうちょっとしたら出てきます。