第二十七話 茜色の決意
ちょっと空いちゃいました。
力は全てを破壊する。けど、私はこの力であなたを・・・あなたの救おうとした世界を助けたい。
「はぁ・・・」
倉橋はどうにもあまり落ち着かないため息を吐いていた。遥はそれに気づいていたが、どうにもかける言葉が思いつかない。
蓮太郎と倉橋の間に今まで何があったのかは分からない。だからこそ、先程のやりとりだけでは遥は彼らの人間関係を知ることは出来なかった。
「倉橋先輩。そんなに落ち込まないでください。蓮太郎先輩の言った通り・・・頑張りましょう!」
そう彼女を励ますのは進哉だった。
彼の性格上は、こういった空気はあまり好かないようだ。原因は倉橋なので、取りあえずはその空気を打破するべく、彼女に声をかける。
それを見ている佐治はライフルを握り締めていた。
佐治と蓮太郎は悪友であり、どんな時も彼らの答えは決まっていたが、今回ばかりは蓮太郎がこんな答えを出すなんて思ってもいなかった。
動揺。それが彼の中で渦巻いていた。
しかし、その動揺も直ぐに収まる。
蓮太郎と交わした言葉。
「「あばよ」」
確かにそう言った。別れの挨拶を。
だが、決して蓮太郎は死に急ぐ奴ではない。そう信じている。だから、自分も自分のするべきことをしなければならない。
そう硬く決意するのであった。
「まぁまぁ・・進哉君も。ねぇ、有紗ちゃん。あまり、蓮太郎君を舐めないでもらえる?」
「!!」
「確かに、あの状況だと生還率は低いし、もう一度再会出来る可能性なんて皆無に等しい。けど、あなたが彼を信じなくてどうするの?少なくとも私は信じてる・・・だから、もうそんな顔をしないで」
天音は警察所で蓮太郎が置いて行かれた時のことを思い出していた。あれだけ絶望的な状況なのに、蓮太郎は生還して来た。
それだけが、彼女が蓮太郎を信用できる要素でもあった。
「・・・・・・」
天音はそっと倉橋の拳を握った。
「この力は、何のためにあるの?」
「!」
「(そうだ・・・この力は・・・何の為に見つけたの?私は・・・私は一体どうしたいの?)」
『俺はもう決めたんだよ。だったらとか、あの時とか、んな言葉に迷わされないって!』
脳内に蓮太郎が言った言葉がフラッシュする。
「(そうだ・・・私には、まだ・・・)」
倉橋は皆に言った。
「すみません・・こんな変な空気にしてしまって・・・」
「いえいえ」
「いいの」
「・・・・・」
彼女は言った。
「私は、もう惑わされません。だから、私は私を信じてくれた真鍋君を信じます」
「(また・・・会える日まで)」
避難民を乗せたヘリは、茜色に染まる空を飛んで行く。
その空は、死んでいった幾人もの人間の血に、微かに似ていた。
次回もよろしくお願いします。
新章突入って感じになります。