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haunted world   作者: ぞえ
溝島ショッピングモール編
27/42

第二十六話 俺の生きる世界




 自分の命をより大事なものを見つけろ。それが出来た時、本当の意味でお前の生きるセカイが見つかるだろう。


















 俺はゆったりと倉橋の前に来た。


「倉橋・・・」

「ど、どうかしたの?真鍋君?」

「俺はあの時お前を見捨てようとした。けど、証明とか言っててきとうに理由をつけてお前を助けた。言うのなら、俺は理由が欲しかった。誰かを守るのに・・・だから、今度は今度は違う」


 そうだ。

 俺には理由があった。

 最初から最後まであったのだ。


「俺が俺である為だとか、んなもん関係ない。俺はもう誰も死んでほしくない。だから、戦う」


 そう言って、俺はヘリと反対側に歩いて行く。


「俺が残ります。墜落するというリスクまで抱える必要はない」


 誰も何も反抗しない。

 ここで反抗してしまえば俺の覚悟を無駄にしてしまうだけだ。

 佐治や進哉もそれぐらいのことは理解していた。太田さんも、天音さんも。


「すまない・・・君は色々と礼がしたいのに」

「大丈夫ですよ」


 太田さんがヘリに乗る。


「はぁ・・・ホントは俺が残るべきなんだけど」

「何言ってるんですか?赤城さんはこれからも活躍しないと」


 赤城さんがヘリに乗る。


「あの・・・さっきはありがとうございました」

「遥さん・・だっけ?倉橋のこと、色々と頼むな」

「はい!」


 遥が乗る。


「先輩・・・」

「言うな。お前には言いたいことがあるが、今はその時じゃない」

「・・・・・・」

「必ず生きて再会する。だから、死ぬな」

「はい!」


 進哉が乗った。


「これも持っておけ」


 そう言って佐治は俺にショットガンを手渡そうとしたが、俺は拒否した。


「俺にはベレッタと・・・こいつがあるからな」


 そう言って少し凹んでいるバットを見せた。


「おっと、それは変なことを言ったな・・・蓮太郎。お前には言いたいことが多過ぎて、こんな時に何て言えばいいのか分からない」

「何を言う?佐治となんて、散々語ったと思うがな・・・だけど、こういう時は決まってるだろ?」

 

 佐治はヘリに向かい、お互い背中合わせになる。

 二人の声が重なった。


「「あばよ」」


 天音さんが来た。


「結局、私は任務を放りだして、生きることを優先させてしまった・・・」

「天音さんには色々と勉強になることを教えてもらいました。大丈夫ですよ、俺は死にません」


 ギュッ

 

「えっ、あれ・・・あの?」

「君は・・・凄いね。惚れちゃいそう」

「へ?」


 天音さんは離れる。


「じゃぁね。さよなら・・・なんて私は言わないよ。だから、こういう時は・・・」

「また」

「うん、べりーぐっと。勝手に死なないでよ」

「はい、また会いましょう」


 ニコリと笑って天音さんがヘリに乗った。

 さて・・・最後はこいつか。


「倉橋・・・・」

「私も残る」

「却下だ」

「どうして!」

「死ぬかもしれない状況に・・・お前を連れていく訳にはいかない」

「そんなの関係ない!」

「関係ない?自分の身勝手な行動が他人を巻き込まない保証なんてどこにある?頼むから、皆と一緒に避難所に戻ってくれ」

「・・・・・・・・」


 倉橋はその場から動こうとしない。 

 彼女の気持ちも確かに分かる。

 彼女は俺に一度命を助けられた。更に、彼女の心をここまで立ち直ることもした。その恩はものすごいものだ。

 それを返さずに、自分だけ生き残るなんて出来ないのだろう。

 真面目というかなんというか・・・。


「怖く・・・ないの?真鍋君は、怖くないの?私は怖い・・・幾ら強くても、一瞬の判断が命に繋がる。だから、怖い」


 そう自分の肩を抱いて彼女は震えた声で言った。


「・・・バカか」


 ベシッ!


「いたぁ・・・・何を」

「誰が死ぬのが怖くない人間がいる?俺だって怖い!死ぬ程怖い!こんなこと、嫌で嫌で仕方がない」

「だ、だったら!」

「でもよ!」


 俺は言った。


「そうするしかないんだ・・・それが俺が望んだ答えだ。だから、怖いけど俺が望んだなら、死んでも後悔しない。けど、お前が付いて来て死んでしまったら・・きっと後悔する。死ぬ程俺は後悔する・・・」


 一歩ずつ俺は離れていく。


「皆が生きていけるセカイ。それが俺の世界だ」


 トンッと、倉橋の背中を押した。倉橋は一度だけ、こちらを振り向いて、


「ありがとう・・・」


 そう言って、ヘリに乗った。


 




 それが、俺達が踏み出した不器用な一歩だった。















次回もお願いします。

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